わがやどのやえやまぶきはひとへだにちりのこらなむはるのかたみに
誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに
かみがきのみむろのやまのさかきばはかみのみまえにしげりあひにけり
よのなかはゆめかうつつかうつつともゆめともしらずありてなければ
わがきみはちよにやちよにさざれ石の厳となりてこけのむすまで
つつめども隠れぬものは夏虫の身よりあまれる思ひなりけり
いにしへの野中の清水ぬるけれどもとの心を知る人ぞ汲む
琴の音に峰の松風通ふなりいづれのをより調べ初めけむ
我見ても久しくなりぬ住の江の岸の姫松いく世経ぬらむ
思ひやる越の白山知らねどもひと夜も夢に越えぬ日ぞなき 紀貫之