白い蝶

駅ビルのATMの扉が開き
『涼しい。』
一瞬気がゆるんだとき、目の端になにかが舞いました。

『蝶だ！』

小さな空間に紛れ込んだのは白蝶。
ATMの機械から壁際へ、はかなげに飛んでいました。

『逃げられないんだ。』

手早く用をたし、壁に止まっていた蝶を、そっと手の平で包みます。
もう、逃げ出す力もなくしたかのように
あっけなく捕獲。

駅ビルをでて
『たしかこの先に小学校があったよね』
花壇を求めて歩きます。


結局、グレーの、ぬくもりのない新校舎に建て替えられた学校に
花壇はなく
やや先の民家の奥に
花の気配があったので
そこで離すことにしました。


やはり頼りなく
ひらひらと飛び立った白蝶は
どこまで行くことができたでしょう。
水や花が
あったでしょうか。

『都会なんて、ろくでもないな…』


それでもこの地に、いくばくかの虫たちが住んでいます。
いくらかでも、野性の生き物たちと
一緒に生きてゆける街になればと願うばかりです。

写真より先に捕まえる手が出てしまったので、今日は写真なしです。

　　飛び立つところを、撮れればよかったねえ　らぶ