タカツテツヤ blog 『My Back Pages』

シンガーソングライター高津哲也(ex.RUNT STAR)のブログです。

Keep On Trippin’ / セルフライナーノーツ

2024-05-22 | information


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14年半ぶりだった前作『hallelujah』から、今回は7ヶ月という初期ビートルズばりの短いスパンでのリリースということになりました。タカツがやって来るヤァヤァヤァ!今回もセルフライナーノーツと合わせてお楽しみください。

1: Breezin’
アコースティックギターをつま弾きながら出来たメロディを発展させた曲。70年代のファンクをイメージし、90年代のヒップホップのようなトラックにしようとアレンジを進めた。ドラム、ピアノを入れてテンポを変えながらベースラインを詰めていくうちに、そよ風(breeze)というより熱風のようになっていった。これはアルバムの一曲目にしようと決めていた。ただ、仕上がる直前までなかなかしっくりくる形にならず、今回の中で一番時間がかかった。途中、今回はパスしようかと思ったくらいだけど何とか形になった。僕にラップができたら、ラップを入れたかったな。どなたかラップを入れてリミックスしてくれる方いないかな。

2: Life Goes On
曲ができた段階ではもっとスローテンポだったけど、間奏の展開をマービン•ゲイの『What’s Going On』をイメージしたので、ベースラインもジェームス•ジェマーソンのフレーズを元に作り、テンポをあげてアレンジを進めたら良い感じになっていった。こうなったら思い切り『What’s〜』にしようと、坂さんにウーリッツァーを弾いてもらい、仮で入れたストリングスをアレンジしてもらった。今どき『What’s Going On』な新曲なんてないだろうなあ…と思いながら、とても楽しみながら仕上げることができた。6分を超える僕にしては長尺の曲になった。

3: 愛の言葉
かなり以前、確かソロになった頃に作った曲。それまでに作ったなかでも特に気に入ってたことを、今回レコーディングをしながら思い出した。冒頭ふたつのコード、B△7とB♭7♯9 を繰り返しているうちに出てきたメロディを元に、途切れることなく最後までひと筆書きのようにできたのだった。愛という単語が隠れているメロディだと感じ、歌詞を書いた。きっとピアノが映える曲だろうと思っていたけど、坂さんのピアノとストリングスが、想像どおり美しく華を添えてくれた。ビューティフル。

4: メモリーレーン
どのアルバムにもバラードをひとつ入れようと思っていて、今回はこれ。僕のオールタイムベスト10に入るエルビス・コステロ & バート・バカラックの名作『Painted From Memory』をイメージした。YouTubeにもあげたデモの段階では、リズム隊にアコースティックギターとピアノを中心に、アイズレー・ブラザーズ版の『Don’t Let Me Be Lonely Tonjght』という感じもあったが、坂さんに鍵盤とストリングスを依頼したところ、流麗でソウルフルな素晴らしいオーケストレーションが戻ってきてしびれた。ミックスにも気合いが入った。これまでに書いた『Creepin’』『If You Really Love Me』『Fall』などに並ぶ自分クラシックと思える曲になった。

5: 春の夜
コロナが広まって観客入りライブが難しくなってきた頃、2020年4月の中野オルタネイティブカフェでのライブは、急遽、観客なしの配信ライブという形になった。初めての緊急事態宣言が出る数日前で、世の中が何とも言えない空気に包まれていた。そのライブで新曲として初披露した曲。前日に書いたと思う。メロディに呼ばれて、心のどこかの静謐な場所を描きたかった。ここまでがレコードで言うとA面。

6: lt’s Alright
ここからB面。大好物である60年代末から70年代のソウル・ミュージック、モータウン、フォートップスなどをイメージした曲。タイトルの『lt’s Alright』というのは、インプレッションズの名曲から。大切なのはlt’s Alrightと口に出すことだと、聴くたびに思い出させてくれる永遠の名曲にあやかった。往年のコーラスグループのように、メインボーカルの後ろでコーラスのリフレインが続いているというのを、前からやってみたかったのだ。マイケル・フランクスをイメージしたという坂さんの上品かつグルーヴィーなエレピがとてもワンダフル。

7: トゥッティ•トゥルーリー
3コードのロックンロールをやりたくて作った曲。ややこしいことは無しにして、ただただノリの良い曲をやりたかった。タイトルは♪トゥッ、トゥル…というスキャットから連想したリトル•リチャードのもじり。曲名はあとからつけたのだ。3コードの曲というのは作るのが難しいんだけど、良い感じになった。3コードの魔力。今回の中で最後に仕上げにかかったこともあり、これで最後だという開放感もあった。初期のエルビス•コステロ、ニック•ロウ、グラハム•パーカーなどパブ•ロックのイメージ。バンド編成のライブでトバしたい!

8: 君がいた夏
このタイトルはいつか曲名にしたいと思っていた。メロディがひと通り出来たときしっくりくる感じがして歌詞を書いていった。実はかつてLD&K Recordsで一緒だった平野航くんがやっていたユニットSunny Side Superstar のアルバムに『君がいた夏』という曲があり、曲もさることながら、当時からいい曲名だなあと思っていたのだった。今回検索してみたら、ミスター・チルドレンなどにも同名曲があることを知った。でも平野くんの曲以外はどれも聴いたことはないのだ。同名の映画があることは何となく知っていたけど、これも観たことはない。ともかく、メロディと歌詞がマッチした佳曲になったと思う。

9: 冬のダイヤモンド
アコギを弾いてたら、はじめの4つのコードとメロディが出てきた。なかなか曲にはしにくいモチーフかなと思ったけど、繰り返してるうちに先に繋がり、するすると曲になっていった。はじめは静かな曲のイメージだったが、コーラスを多めに入れたら華やかさが増し、印象的な良い仕上がりになったと思う。僭越ながら高津版の『Bluebird』(ポール•マッカートニー&ウイングス)といった趣きかな。

10: 旅をつづけよう
ラストはアコギの弾き語りを、ピアノ、ウッドベース、ドラムで囲み、スタジオで一発録りというテイストで仕上げた。シンプルにメロディと歌詞を主役にしようと思った。「旅をつづけよう 少しずつ気持ちが変わっても」という部分が、今回のアルバムで歌いたかったフレーズかも知れない。恐らく一生歌えるだろうという曲になった。

アルバムタイトル『Keep On Trippin’』は、カーティス•メイフィールドの『Back To The World』に入ってる同名曲からいただいたもの。このアルバムはカーティスの数ある名盤のなかでも特に好きな作品で、1973年作なので僕と同い年でもある。

今回、実は別の仮タイトルでレコーディングを進めていたが、制作終盤になって『Back To The World』を聴いてるとき、『Keep On Trippin’』って『旅をつづけよう』ということじゃないか!と繋がり、アルバムタイトルにすることにした。カーティスのは別れを歌ったラブソングで、意味は違いそうだけど、それでいいのだ。

それと「Trip」には「つまずく」という意味もあり、つまりこのアルバムは「旅をつづけよう」「つまずきつづけよう」と二重の意味にもなって、実に良いじゃないかと思った。いくつになっても何をしても、毎日つまずきだらけだ。それでも旅をつづけようと。

以上、『Keep On Trippin’』の覚え書きでした。聴いてくれた方の42分間が良い時間になるように、そしてお気に入りのアルバムになることを願っています。

去年1月にスタートした前作からのレコーディングが、これでひと段落。日々悶絶しつつ楽しみなら作ることができました。

前作同様、というかRUNT STAR時代からずっと鍵盤を弾いて付き合ってくれている坂和也さんに心から感謝しています。僕ん中では、坂さんは日本のジュールズ•ホランド!近いうちにまたライブでも!

前回のライナーノーツで書いたようにレコーディングしたい曲がまだかなりあるので、どんどんリリースしていこうと思っています。Keep On Trippin’ !!

高津哲也
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