佇む猫 (2) Dr.ロミと助手のアオの物語

気位の高いロシアンブルー(Dr.ロミ)と、野良出身で粗野な茶白(助手のアオ)の日常。主に擬人化日記。

治療師か詐欺師か(1)犬の目

2019年08月21日 | 手記・のり丸
変な夢を見た。
 
留守番を頼まれて実家にいた。
私は何もせずに家の中で怠惰に過ごしている。
なぜか応接間が気になっているが、ドアを開けて中を確認することすら面倒だった。
 
実家に滞在して3日経過した頃、私はやっと応接間のドアを開けた。
応接間には庭に面したガラス戸がある。
そのガラス戸の向こうで何かがチラチラと動いている。
私はガラス戸に近づいて庭を覗いた。
 
すると茶色の犬がしっぽを振りながら私に近寄ってきた。
「クマ!」
とっくの昔に死んだはずの犬である。
「犬がいるなんて聞いてないよ…」
 
庭の物置の上にドックフードの袋が置いてあり、袋には紙が貼ってあった。
[朝夕、2回餌を与えてください]
紙にはそう書いてあった。
私の背中にサーっと冷たい汗が流れた。
「クマごめん、本当にごめん」
私は慌てて器にドックフードを入れて、犬に与えた。
 
しかし犬はドックフードに口をつけず、ジッと私をみつめていた。
 
その目は無機質で、感情のようなものは全く伝わってこない。
犬の目にがっしり捉えられたまま、私は身動きができなくなった。
 
(この犬…もしかしてクマじゃなくて、川田さんの家のゴンでは?)
ふと気づいた。
すると犬の目が黒色から緑色に変わっていった。
目が2つの緑色の光になっても、私は捉えられたままだった。
 
目覚めた後、しばらく私は天井を見つめて呆けていた。
(あの犬の目はいったい何なんだ…)
 
 
 【イメージ】
 
 
 
私の両親は教育者だった。
母の方は私が小学3年の時に仕事を辞めて、その後は専業主婦になった。
父と母は若く(学生結婚のようなもの)、はじめての子育てに戸惑っていた。
 
小学2年の時、父が私に言った。
「おい。おまえは近所で『嘘つき』だと言われているそうじゃないか?」
「嘘はついていない」
と、私が力を込めて答えると、父は激怒した。
 
「嘘を言ったじゃないか。前世で戦争に行ったとかヒロト君に言っただろう。おまえはインチキ霊能者か!」
ちょっとあなた、あなた声が大きいですよ、と言いながら母が飛んできた。
「ご近所に聞こえたらどんな噂を立てられるか…しーっ、しーっ(声を小さく)」
 
母が介入してきたことによって、父の声はますます大きくなった。
「どこの部隊や?戦争でどこの島に行ったんや?台湾か?ガダルカナルか?当時の自分の名前は?」
「前世の記憶の中に言語などの『左脳記憶』は残らないんだよ。使いまわしはできないんだ」
私がそう答えると、父は興味をかきたてられたように「ほう、そうか」と言いながら、スーハースーハーと何度か深呼吸をした。
一発殴りたいのを理性で押さえているようだった。
 
「…お父さんが言いたいのはな、証拠がないことを人に言うな、ということだ。だいたい証拠がないものを誰が信じるんだ?」
父は悲しそうな目をしていた。
 
「あなた、のり丸は『オウムかインコ』のような記憶力なのよ。言葉の意味は理解していないの。耳で記憶した言葉を意味もわからずに使っているのよ、怒ったらだめよ」
と母が言うと、父は眉間にしわを寄せた。
 
「そういうことじゃあないんだ、おまえはすぐ『トンチンカン』な方向に話をもっていくな。
すでに、のり丸は嘘つきなんだよ。
突拍子もない嘘はつく、勉強は怠ける、楽な方へ楽な方へと流れていく。
このままだと将来どんな人間になるんだ、今のうちに性根を叩きなおさないといけない。
鉄は熱いうちに打て、だよ…」
 
 
 
 
【今日のロミ】