佇む猫 (2) Dr.ロミと助手のアオの物語

気位の高いロシアンブルー(Dr.ロミ)と、野良出身で粗野な茶白(助手のアオ)の日常。主に擬人化日記。

(回想)土手の輝きと発情期の切なさと

2018年08月14日 | 猫・擬人化日記
窓からは土手が見え、川の向こうは海へと続いとる。
川の水面が太陽の光でギラギラと乱反射しとる日もあれば、雷と豪雨の中で濁流がゴウゴウと唸っとる日もある。

【3階に住んでいるが、低い位置に建っているから視界はこんな感じ】


4畳半の猫部屋から、隣の6畳間まで行動範囲が広がったウチは、よく窓の外を眺めるようになった。

【網戸脱走防止フェンスを付けられとる】


「おーい、お嬢ちゃーんっ、声はすれど姿見えずかー?」
中年の猫の声がした。

「おーい、アンタぁ誰ーっ!どこにおるのーっ?」
ウチは窓の外に向かって叫んだ。

「おーい、ワシかぁ?ワシゃー土手下の道路におる野良じゃが、ちぃと下まで降りてこんかのーっ!」


【ワイルドなダーリン】


ウチは網戸脱走防止フェンスにガッシとしがみついた。

「やめれーーっ!!!」
のり丸はサッと顔色を変え、突進してきた。

「フェンスをのぼるなっ」
フェンスの強度がイマイチらしいのじゃ。
のり丸はビリビリとした怒りの声でウチを制した。

そんなことはお構いなしに、ウチは顔中を口にして叫んだ。
「行く!行く!ダーリンの所に行くーっ!!!」



「発情期が終わる」のを待ってから、ウチは避妊手術を受けることになった。
人口排卵はせず、のり丸はウチの発情期が終わるのを待ち続けた。
(まあ、ウチの場合、いろんなリスクがあったからの…)


ところで、これは「SLEEPRECORDER」というソフトの一画面。いびきや寝言がチェックできる、すぐれものじゃ。

【のり丸のスマホ画面】

のり丸は毎晩のように、このソフトを起動させていたのじゃが、ある日を境に「いびきをかいています」が連続するようになった。
録音を再生すると…なんと、そのいびきは「全部ウチのわめき声」じゃった。

深夜から朝までずっとこれが続けば、人間にとってひどく耐え難いものじゃろ。



【ウィリアム・テル序曲「スイス軍隊の行進」をテーマ曲にして、大暴れした後…】


【…疲れた】


【寝顔に苦悶が…】


ウチだって苦しかった。

2週間後、ウチの発情期はいったん終わった。


「今のうちだ」と言わんばかりに、のり丸は再び居住区に近い動物病院、獣医師の情報を調べ始たのじゃが…。
動物病院のHPや、ネットの口コミで「腕の良い獣医」がわかるものじゃろうか?

国際団体「isfm」や「AAFP」から認定を受けている「猫に配慮した動物病院」であっても、先生が猫派であっても、先生の愛想が良くても、スタッフのブログに好感が持てても、のり丸はこう考えてしまうようなのじゃ。

「犬派でも馬派でもなんでもいいから、手術の症例数が多く、定評のある獣医師」
「経験豊富、冷静に適切な判断ができる人格、手先が器用で高い技術を持つ獣医師」

詰まるところ、のり丸の本音はどうしてもそこに行きつくらしい。


「先生が猫が好きで、猫に配慮している」ということは、確かに捨てがたい情報じゃ。

しかし、麻酔、手術…と考え始めると、のり丸は、自身のネガティブな性格上、いろんな悪い事態が起こることも想定してしまうのじゃ。
「おや、ここに動物病院がある」というだけで、簡単に手術の予約を取る訳にはいかんらしい。


「あ~、いつも動物病院を利用している人から情報を聞くしかない…どう考えてもあの人しか思いつかん…」

…あの人?

エントランスで偶然一度だけ会ったことのある…あの人かの?

「……やっぱ、もう一度『猫ババア』に会うしかない」
と、のり丸がまたつぶやいた。


さて、『猫ババア』の話は次回の。


じゃあ、またの。