当ブログ(8:30 11:00 12:00 13:30 15:30を)をしばらくお休みします。
下記の記事はプレジデントオンライン様のホームページよりお借りして紹介します。(コピー)です。
老年医学の専門家である和田秀樹氏は「40歳こそ老化の始まり。この年代から“足りないものを足す健康法”へのシフトが重要だ」と説く。このたび上梓したセブン‐イレブン限定書籍『40歳から一気に老化する人、しない人』より、その一部を特別公開する──。
※本稿は、和田秀樹『40歳から一気に老化する人、しない人』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
70代こそ肉を食べよう
20代、30代の人がスキーで転倒して足を骨折し、病院のベッドで1カ月寝たきりの生活をしたとしても、退院すればまもなく普通に歩くことができるようになります。
しかし70代ではそうはいきません。寝たきりの生活が続くと筋力が低下し、骨折が治ったあとも、「立つ」「歩く」といった日常生活に必要な動作に支障をきたすようになり、介護が必要になるリスクが高くなってしまいます。
こうした「ロコモ(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)」が目立ってくるのも、70代からの特徴です。
70代こそ意識して体を動かす必要があるのですが、前頭葉が萎縮
いしゅく
し、動脈硬化もかなり進行していますから、なかなか動こうとしない人が増えてきます。これは男性に顕著な傾向です。男性ホルモンが減り、行動意欲が失われているからです。
写真=iStock.com/Group4 Studio
※写真はイメージです
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したがって、歳をとればとるほど、毎日の食事を通じて男性ホルモンの材料になる肉やコレステロールを摂取する必要があります。コレステロールは主要な男性ホルモンである「テストステロン」の材料であり、コレステロールが気になるからとこれを減らすのは、ホルモン医学の立場で言えば、まったくの逆効果でしかありません。
女性ホルモン補充で骨粗鬆症予防を
女性の場合、男性ホルモンが増加するので、むしろ元気になる人が多いのですが、その一方で女性ホルモンが減るため、それにともなう問題がないわけではありません。女性ホルモンが減ることの弊害としては、肌つやが悪くなることのほか、骨粗鬆症
こつそしょうしょう
の原因にもなることがわかっています。
骨粗鬆症を防ぐには適度な運動をし、戸外を散歩するなどして日光によく当たること、あるいはビタミンDが多く含まれている食品をとるなど、ごく常識的なことをする心がけが必要です。
日に当たらない生活があまり長く続くとうつになりやすいのは、広く知られているとおりです。日光浴は、うつ病や不眠症を予防し、骨粗鬆症の予防にもなる70代女性にとっての格好の健康法なのです。
また性ホルモンは性別を問わず、ホルモン補充療法で補うことが可能です。
副作用のリスクを心配する方も少なくないでしょうが、更年期に特有の不定愁訴に対しては、苦痛を手っ取り早く取り除き、副作用も比較的少ない療法です。QOL(生活の質)を重視するのであれば、ホルモン補充は効果的な療法だと私は思います。
認知症リスクが大きくなってくる70代
70代になると、いよいよ認知症が他人事ではなくなってきます。
認知症の有病率は、70代前半までは世代人口の5%。70代後半に入ると8~10%弱の人が認知症になります。
日本では認知症患者の6割以上がアルツハイマー病を原因疾患とする「アルツハイマー型認知症」だとされています。アルツハイマー病は、神経細胞の中にアミロイドβと呼ばれるたんぱく質が蓄積されることによって引き起こされると考えられています。
脳にアミロイドβがたまりやすいかどうかは、遺伝的要因に左右される面がかなり大きく、親がアルツハイマー型認知症の有病者であった場合は、子どももなりやすいといわれています。
「頭」を使って認知症リスクを低減する
実は、2021年に、ついにこのアミロイドβを脳内から除去する作用のある薬がアメリカで認可されました。たしかに朗報ですが、年間650万円もかかることもあり、日本で認可されるのか、あるいはどういう患者さんに保険が利くようになるのかはまだ不透明です。将来には期待できますが、いますぐとはいかないのが実情です。
それでも、昔からいわれる「頭を使っている人はボケにくい」というのは一面の真理です。
脳の萎縮が同じくらい進んでいる2人の認知症患者を比較すると、何もしていない片方の人はかなりボケてしまっているのに、日頃から頭を使う環境にいたもう片方の人はそうでもなく、知能テストをするも明らかに後者のほうが点数が高かった、というケースがままあります。
頭をしっかり使って、認知症のリスクを低減させていきましょう。
「脳トレ」より「人との会話」
近年、「脳トレ(脳力トレーニング)」と呼ばれるトレーニングメソッドが、脳に刺激を与え、ボケ防止に役立つということでブームになっています。
ただ「脳トレ」は残念ながら、認知症予防という観点からはほとんど無意味だということが、最近行われた海外の研究で明らかになっています。
『ネイチャー』や『JAMA』(アメリカの医学会雑誌)のような超一流の医学誌に、この効果にまつわる大規模調査の結果が発表されています。
そのうちの1つ、アラバマ大学のカーリーン・ボール氏による2832人の高齢者に対する研究では、たとえば言語を記憶する、問題解決能力を上げる、問題処理の能力を上げるというようなトレーニングをさせた場合、練習した課題のテストの点だけは上がるのですが、ほかの認知機能がさっぱり上がらないことがわかっています。
つまり、与えられた課題のトレーニングにはなっても、脳全体のトレーニングにはまったくなっていないことが確認されたというのです。
では、いったいどうやって「頭を使う」といいのか。私の経験上、もっとも効果が高いと感じられるのは、人との会話です。
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです
他人とのおしゃべりでは、自分の話したいことに対して相手から反応が返ってきますし、強制的に頭を働かせなくてはいけない局面が増えます。もちろん、仕事や家事も複数の知的作業をともなうので、「頭を使う」ことにつながります。「生涯現役」というスタンスも、有力な脳のトレーニング法といえるでしょう。
認知症の進行は生活環境で大きく変わる
介護保険がまだ導入されておらず、今日の主要な抗認知症薬であるアリセプトも未認可だった1990年代に、私は勤務先である浴風会病院とは別に、茨城県鹿嶋市の病院で月2回、認知症の診察を担当していたことがあります。
鹿嶋市に足を運ぶようになってしばらくして気づいたのが、浴風会病院にやってくる東京都杉並区の認知症患者たちに比べて鹿嶋市の認知症患者の進行がかなり遅く、症状が目立たない、ということでした。
それがなぜなのか、最初はとても不思議でした。しかし、杉並区と鹿嶋市の高齢者が置かれている生活環境を見比べているうちに、おおよその見当がついてきました。
当時はまだ介護保険が始まる前でしたから、杉並区の高齢者たちは、認知症になるとその多くが家に閉じ込められたのに対し、鹿嶋市では、比較的気ままに近所を歩き回らせていることが多かったのです。
それでも、出歩いた認知症高齢者が家に帰れなくなっていると、すぐに近所の誰かが見つけて連れて帰ってくれるので、あまり困った事態になることはありません。
オール・オア・ナッシングで考えない
農業や漁業の従事者に関していえば、認知症が発症しても、それまでと変わりなく仕事を続けている人も少なくありませんでした。
認知症が発見されると、一般的には周囲が先回りして外出や仕事などいろいろなことをやめさせてしまうことが多いのですが、“オール・オア・ナッシング”で考える必要はありません。
「この仕事、この家事は、もうできなくなったからやめる」
「この家事は、できるからしばらくは続けよう」
そういう判断があっていいはずなのです。
70代からは「比べない」
70代ともなると、世代全体の10%が認知症になります。残りの9割は依然として頭がはっきりしており、健康な人とそうでない人の差が、それまでになくはっきりと分かれてきます。
外見の面でも、同級会などで集まれば、みな同い年のはずなのに一見して「え?」と驚くくらいの個人差が容姿の老け具合に出てきます。社会的にも、現役バリバリで社長を務めている人がいるかと思えば、定年退職した人の多くは「無職」という肩書をつけられてしまう現実があります。
だからこそ、なにかと「あいつに比べて自分は……」という引け目を感じやすくなり、人によってはそれが重荷になってくることもあります。
老いを受け入れるとは個人差を受け入れること
同世代の人よりもちょっとだけ早く老いを受け入れざるをえなくなった70代の人にとっては、「老いを受け入れる」ことは「個人差を受け入れる」とほぼイコールの行為でもあります。
この世に同じ人は一人も存在せず、誰もがみんなとちょっとずつ変わっているのですから、自分を他人と比べているかぎりは苦しさから抜け出せません。他人にはできて、自分にはできないことについて思いを巡らせて悶々
もんもん
とするよりは、「いまの自分に何ができるのか」ということを前向きに考えたほうが、ずっと健康的に生きられます。
人と比較するより、自分の生き方を模索するほうが賢明だと、私としては信じています。
- 和田 秀樹(わだ・ひでき)
- 国際医療福祉大学大学院教授
- アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。
下記の記事は日経グッディ様のホームページよりお借りして紹介します。(コピー)です。
腸の中で発酵する食物繊維や抗酸化物質などを丸ごととることができる、全粒穀物。さまざまな病気のリスクを減らすことがわかってきたが、なかでもメタボや血圧、がんといった年齢とともに気になる病気のリスクを下げる働きに注目したい。今回は、大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授に、日本人を対象に確認された大麦ごはんを用いたメタボ改善研究についてや、大腸がんとの関わりなど、全粒穀物を食べると体の中でどのようなことが起こるのかについて聞いていこう。
日本人はもともと雑穀をたくさん食べてきた。健康のことを考えたら、日々の主食に大麦などを取り入れたほうがよさそうだ。(c)Rarintorn Wata-123RF
主食を大麦にすると満腹感が高まり、内臓肥満が改善する
前回は、全粒穀物を継続的にとる食生活によって糖尿病、心血管疾患、がんや脳卒中による死亡リスクが低下すること、数ある食品のなかでも全粒穀物は糖尿病発症予防に高い有効性を発揮することなどの世界の最新研究報告についてお伝えした。
テレワークが中心になり、運動不足によって体重が増え、健康診断の数値が悪化してきたり、糖尿病や高血圧、脂質異常症といったメタボリック・シンドロームが気になる人も多いかもしれない。ぜひ、すぐに取り組める食生活対策として全粒穀物の摂取を始めよう。
「日本人はもともと全粒穀物を多くとる食生活を送っていました」と、大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授は言う。
1960年ごろまで、日本では大麦を代表とする雑穀がよく食べられていたが、食感の良い白米やパン食の普及とともに、主食は精製穀物に切り替わった。それにより食物繊維摂取量はしだいに減少。そして、1970年代から欧米型の食生活が主流となると、脂質過多(特に、動脈硬化のリスクを高める飽和脂肪酸の摂取量の増加)が起こり、並行して食物繊維摂取量はどんどん減少。その結果、大腸がんなどの病気のリスクが上昇してきた。
だからこそ、体をリセットする食事の根幹として、日々の主食を全粒穀物にスイッチすることが健康維持には有効といえる。
食物繊維は便秘解消のためにとるもの、という認識だけではもったいない。では、数ある全粒穀物の中で、私たちは何を選べばいいのだろうか。青江教授が勧めるものの一つが、全粒穀物の中でも多彩な機能性を持つ水溶性食物繊維β‐グルカンを豊富に含む「大麦」だ(*1)。大麦は、そのメタボ改善効果が日本人を対象にした研究で確認されているという。青江教授は、白米を大麦ごはんに置き換えることによって、日本人の内臓脂肪肥満が軽減できるかを検証する研究を行った。1日2食の3割大麦配合ご飯(β-グルカン1日あたり2.8g)を12週間とることで、腹囲と内臓脂肪面積が有意に減少した(下グラフ)。
大麦のβ‐グルカンで内臓脂肪肥満が改善した
BMI25以上の成人男女50人を対象に、白米パックライス1日2食または30%もち性大麦配合パックライス1日2食(β-グルカン1日あたり2.8g)を12週間摂取する試験を行った。その結果、もち性大麦摂取群では腹囲、内臓脂肪面積が有意に減少した。(データ:ルミナコイド研究;18,1825-33,2014)
大麦の内臓脂肪肥満の改善効果について、青江教授は「大麦の水溶性食物繊維は、ねばねばとした粘性があるため、食べると胃の中でふくらみ、長くとどまります。また、満腹感を高める消化管ホルモンの分泌にも影響して食べ過ぎを抑え、食事のエネルギー摂取量を低減させることができます」と説明する。
青江教授は、朝食で大麦ごはんを摂取すると、白米ごはんを摂取した場合と比較して、満腹感が高まり、昼食時のエネルギー摂取量が有意に減少することを別の研究でも確認済みだ(*2)。また、朝食あるいは昼食に大麦を含む食事をとることで、次の食事の血糖値の上昇を抑えることや、血中コレステロールの低下作用も確認している。
つまり、大麦はダイエット、血糖値抑制、コレステロール抑制の効果が実証されているのだ。
*1 麦ご飯用の大麦は、外皮が除かれているため厳密には全粒穀物ではないが、食物繊維量は全粒大麦とほぼ同じであることから同等に扱える。
*2 Plant Foods Hum Nutr. 2014; 69(4): 325–330.
もち麦、オートミール、全粒粉パン。いずれもメタボを改善
大麦というと、従来の押し麦のようなポソポソした食感をイメージするかもしれないが、すっかり人気も定着している「もち性大麦(もち麦)」は、冷めても硬くなりにくく、もちもちした食感が特徴で、食べやすい。
これまでの研究をもとに、青江教授は「もち麦を白米に3割混ぜたものを1日2食でβ-グルカンを約3gとることができます。内臓脂肪低減効果や、コレステロール正常化効果は、このような十分実現可能な量で得られるのです」と話す。
これらの研究を受け、日本では、大麦由来β-グルカンについて以下の3つが「機能性表示食品」に表示されている。
● 整腸作用
● 血中コレステロール正常化作用
● 食後血糖値上昇抑制作用
また、世界でも、β-グルカンを豊富に含む大麦やオーツ麦で、以下のような健康強調表示が認められている。
β-グルカンは世界でもその健康機能が認められている
(データ:日本食生活学会誌26,1,3-6,2015)
[画像のクリックで拡大表示]
もちろん、全粒穀物はもち麦だけにあらず。いろいろな種類の全粒穀物がスーパーマーケットに並んでいる。
「大麦と同様に、β‐グルカンを豊富に含むのが、オーツ麦(オートミール)。オートミールでも大麦と共通した効果が得られると理解してください」(青江教授)
では、全粒小麦や小麦ブラン(オールブラン)はどうなのだろうか。これらには、不溶性食物繊維の1つであるアラビノキシランが含まれている。このアラビノキシランは、不溶性食物繊維でありながら腸内で発酵する働きがあることがわかってきたことは、前回もお伝えした通りだ。大麦やオートミールだけでなく、小麦を含めて全粒穀物全般にメタボ改善効果があるととらえて、食べやすいものからトライするといいだろう。なお、アラビノキシランは、全粒小麦粉や、小麦ブランには豊富で、そのほか大麦やオーツ麦、また量は少ないものの玄米や発芽玄米にも含まれている。
さて最後に、メタボ改善などの効果をしっかり得るために、どんな点に気をつければいいのかを聞いてみよう。青江教授は2つのコツがあるとアドバイスする。
1. 毎日とり、長く続ける
主食を全粒穀物に置き換えて、毎日、長い期間継続すること。「腸内環境を変えるには、コンスタントに腸内細菌のエサとなる食物繊維を送り届けることが大切です。1日1回が習慣化しやすいのならまずはそこから始める。朝食でとるのを達成できたら、夕食にも取り入れてみる、というふうに回数を増やしていきましょう。1日2回の全粒穀物で、ヒト試験においても効果が得られています」(青江教授)。
2. 多様な食材からとる
1種類だけに偏らず、いろいろな種類の全粒穀物をとろう。「大麦のβ-グルカンは、大腸の真ん中あたりまでで発酵する一方、全粒粉や小麦ブランに含まれるアラビノキシランは、食物繊維が絡まり合っているため、長い大腸を通過するうちに発酵を受けやすい状態に変わり、大腸の奥のほうで発酵します。腸の入り口から奥まで、まんべんなく発酵が起こるように、多種類の全粒穀物をとりましょう」(青江教授)。
血圧低下、大腸がんリスクを下げる働きも
全粒穀物の健康効果は多岐に及ぶ。最新研究から高血圧の改善や大腸がんリスク低下も期待できることが見えてきた。
高血圧は、心筋梗塞や脳卒中など突然死リスクを高くするが、その代表的な対策である減塩を継続するのは難しく、セルフケアではなかなか改善しにくいのが問題とされている。全粒穀物には、この高血圧のリスクを下げる可能性も見いだされてきている。
高血圧を発症していない19~68歳の日本人男女944人を3年間追跡した研究からは、これを裏付ける結果が得られた。この研究では、対象者に食事アンケートを行い、全粒穀物の摂取量を評価したが、全粒穀物を「ときどき、またはいつも摂取する」グループは、「全く摂取しない」グループよりも高血圧の発症リスクが有意に低かった(*3)。
この結果に対して青江教授は、「まだメカニズムは確認されていませんが、食物繊維をとることによって腸内の発酵が促されて産生される短鎖脂肪酸が、血圧調節を邪魔する腎臓の毒素を減らすのでは、と推測しています」と語る。
さらに、全粒穀物の摂取量は日本人女性の死亡率1位、男性の死亡率3位である「大腸がん」リスクと関連が強いこともわかってきた。
2019年に発表されたアメリカの研究(*4)において、全粒穀物の摂取量が少ない人では大腸がんリスクが高まる、と報告されたのだ(下グラフ)。この研究は、食事とがんリスクとの関連を評価したもので、数あるがんの中でも、食事の影響が最も大きいのは大腸がん(結腸・直腸がん)だった。そして、大腸がんのリスクの中で最も関連が深いのが「低全粒穀物」、つまり全粒穀物の摂取量が少ないことだとしている。
*3 Nutrients. 2020 Mar 26;12(4):902.
*4 JNCI Cancer Spectrum (2019) 3(2): pkz034
全粒穀物摂取が少ないと大腸がんリスクが高くなる
米国で成人の約8万人のがん症例をもとに食事とがんリスクの関連について評価した研究。グラフの横軸は症例数で、数字が大きいほど影響が大きいことを示す。全粒穀物の摂取が少ない、乳製品の摂取が少ない、加工肉の摂取が多い、野菜の摂取が少ない、果物の摂取が少ない、赤身肉(未加工)の摂取が多い、甘味飲料の摂取が多いの7つの食事要因で見たところ、大腸がんは最も食事因子との関連が強く、食事内容では、全粒穀物の摂取量が少ないとがん発症割合が高くなり、特に大腸がん(結腸と直腸)において大きい影響を示していた。次いで多かった食事因子は、乳製品の摂取量が少ないこと、加工肉の摂取量が多いことだった。(データ:JNCI Cancer Spectrum (2019) 3(2): pkz034)
[画像のクリックで拡大表示]
青江教授は、大腸がんリスクと全粒穀物の関連についてこう話す。
「腸内細菌叢(さいきんそう)の乱れは、腸内細菌の種類の減少(多様性の低下)や有用菌の減少をもたらし、炎症性腸疾患や肥満症、動脈硬化、糖尿病、がんなどの病気リスクを高めることが報告されています。いっぽう、全粒穀物をとると、豊富に含まれる発酵性食物繊維をとることができ、腸内の発酵によって短鎖脂肪酸が産生されます。この短鎖脂肪酸が、腸内を有用菌のすみやすい環境に整えたり、腸粘膜バリアを保護したり、炎症を抑えるといった働きをすることに関わるのではないでしょうか」(青江教授)
メタボ改善にも大腸がんリスク予防にも関わる短鎖脂肪酸を増やすには、全粒穀物をしっかりとることで腸内細菌叢を改善することが重要だ。
メタボ改善や大腸がん予防を念頭に、ぜひ毎日とりたい全粒穀物。
青江誠一郎(あおえ せいいちろう)さん
大妻女子大学家政学部食物学科 教授
葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。雪印乳業技術研究所を経て2003年に大妻女子大学家政学部助教授、2007年より現職。穀類、藻類の食物繊維がメタボリックシンドロームや消化管機能に及ぼす影響を研究する。
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最近転びやすくなった、階段を降りるとき心もとなく感じることがある……。いずれも足の力が衰えているサインです。年齢とともに落ちていく「歩く力」を守るために必要なこととは?(構成=浦上泰栄 イラスト=本田佳世)
アキレス腱は足の健康の要
年齢を重ねても自分の足で歩き続ける力を保つには、足の柔軟性と筋力、この両方を維持することが必要です。
足の柔軟性で重要なのがアキレス腱。アキレス腱が柔らかければすねの骨が前側に倒れやすくなり、歩行もスムーズになります。
若い頃、ヒールの高い靴をよく履いていた人はアキレス腱が硬かったり、短くなっていたりすることが多く、すねが10度以上前に倒れない人は要注意。「壁ドンアキレス腱伸ばし」を毎日行いましょう。いまは問題がない人も、将来のために日課にしてください。
安定した歩行のために、足裏の筋肉が果たす役割も見逃せません。
人は歩くとき、足の裏で地面をギュッとつかんで踏んばっています。このため、足裏の筋力が衰えると、転倒リスクが大幅に高まってしまうのです。また、足裏の筋肉が落ちると足のアーチが崩れやすくなり、その結果、さまざまな足の変形や病気を招くことに。足裏の筋力強化には「足首サッサ」と、「タオルギャザー」が有効です。
長く歩き続けるために不可欠なのが、下半身の筋力です。なかでも、太ももを後方に振るときに使われる「大殿筋」と、アキレス腱につながっていて、つま先を伸ばすときに使う「ヒラメ筋」の筋力は、できるだけアップさせたいもの。
「スクワット+ヒールレイズ」は、二つの筋を同時に鍛えることができます。基本の「壁ドンアキレス腱伸ばし」と、ほかのエクササイズを組み合わせて、毎日行いましょう。1ヵ月も続ければ、歩幅が大きくなり、歩くスピードが速くなるのを実感できるでしょう。
最後に、歩く力を高める特効薬は、やはり歩くこと。
足の変形を改善し足裏のアーチを整える効果があります。ストレッチや筋トレと並行しながら、ウォーキングにもぜひ取り組んでください。
以前は、健康維持のためには1日1万歩歩くのが望ましいといわれていましたが、現在は1日8000歩くらいが理想的というデータも。数字にはこだわらず、気持ちよく動ける範囲で歩き続けてほしいと思います。
〈アキレス腱の柔軟性を高める〉
壁ドン アキレス腱伸ばし
足の若さを保つ万能ストレッチ。アキレス腱が伸びると血流がアップするので、冷えやむくみに悩む人にもおすすめです
すべての写真を見る
壁に向かって立ち、両手を壁につける。両手のひじがちょうど伸ばせる程度の距離を保って
左足を一歩後ろに下げる。つま先はまっすぐ前に向け、かかとが床から浮かないようにする
少しずつ壁に体重をかけながら、右ひざをゆっくり曲げる。左足のアキレス腱が伸びていることを意識しながら、30~60秒キープ。反対側も同様に※左右とも3回ずつ行う
〈土踏まずのアーチを整える〉
足首サッサ
足裏のアーチを支える筋肉にアプローチする筋トレ。
床の拭き掃除をするイメージで行いましょう
椅子に浅く腰掛け、両足はしっかり床につける
足が床から浮かないよう注意しながら、つま先を少し外側に向ける
小指とかかとは床につけたままで、親指側を少し浮かせる
小指で床を拭くようなイメージで、足首を内側に回す ※左右10回ずつ、3セット行う
〈裏側の筋力を高める〉
タオルギャザー
座ったままでできる足裏のトレーニング。
つま先を握りこむ力がない人は、転倒防止のためにもぜひ実践を
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椅子に浅く腰掛け、床にタオルを広げる。右足の親指の腹の下がタオルの端にかかるように
かかとを床につけたまま、足の指でタオルをつかむ。指の付け根から曲げるのがポイント
そのまま5本の指を使ってタオルを引き上げる。かかとが浮かないように注意して
5本の指を勢いよくパッと開いてタオルを離す。5回行ったら反対側も同様に〈長く歩いても疲れない脚力を養う〉
スクワット+ ヒールレイズ
大殿筋とヒラメ筋を同時に鍛えるトレーニング。
正しい姿勢を保てるよう、壁や椅子に手をつきながら、無理のない回数で行って
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足を腰の幅に開き、壁に手をつく(またはしっかりした椅子の背をつかむ)
足の裏を床につけたまま、3秒かけてしゃがんでお尻をまっすぐ下に落とす(ひざが90度に曲がるくらいまで)
3秒かけて元の姿勢に戻し、さらにそのままかかとを上げて1~2秒キープ
かかとをおろす ※10回行う
菊池守
下北沢病院院長
大阪大学医学部卒業。米国ジョージタウン大学創傷治癒センターに留学し、足病医学に出合う。帰国後、佐賀大学医学部附属病院を経て、現職。
最近転びやすくなった、階段を降りるとき心もとなく感じることがある……。いずれも足の力が衰えているサインです。年齢とともに落ちていく「歩く力」を守るために必要なこととは?(構成=浦上泰栄 イラスト=本田佳世)
アキレス腱は足の健康の要
年齢を重ねても自分の足で歩き続ける力を保つには、足の柔軟性と筋力、この両方を維持することが必要です。
足の柔軟性で重要なのがアキレス腱。アキレス腱が柔らかければすねの骨が前側に倒れやすくなり、歩行もスムーズになります。
若い頃、ヒールの高い靴をよく履いていた人はアキレス腱が硬かったり、短くなっていたりすることが多く、すねが10度以上前に倒れない人は要注意。「壁ドンアキレス腱伸ばし」を毎日行いましょう。いまは問題がない人も、将来のために日課にしてください。
安定した歩行のために、足裏の筋肉が果たす役割も見逃せません。
人は歩くとき、足の裏で地面をギュッとつかんで踏んばっています。このため、足裏の筋力が衰えると、転倒リスクが大幅に高まってしまうのです。また、足裏の筋肉が落ちると足のアーチが崩れやすくなり、その結果、さまざまな足の変形や病気を招くことに。足裏の筋力強化には「足首サッサ」と、「タオルギャザー」が有効です。
長く歩き続けるために不可欠なのが、下半身の筋力です。なかでも、太ももを後方に振るときに使われる「大殿筋」と、アキレス腱につながっていて、つま先を伸ばすときに使う「ヒラメ筋」の筋力は、できるだけアップさせたいもの。
「スクワット+ヒールレイズ」は、二つの筋を同時に鍛えることができます。基本の「壁ドンアキレス腱伸ばし」と、ほかのエクササイズを組み合わせて、毎日行いましょう。1ヵ月も続ければ、歩幅が大きくなり、歩くスピードが速くなるのを実感できるでしょう。
最後に、歩く力を高める特効薬は、やはり歩くこと。
足の変形を改善し足裏のアーチを整える効果があります。ストレッチや筋トレと並行しながら、ウォーキングにもぜひ取り組んでください。
以前は、健康維持のためには1日1万歩歩くのが望ましいといわれていましたが、現在は1日8000歩くらいが理想的というデータも。数字にはこだわらず、気持ちよく動ける範囲で歩き続けてほしいと思います。
〈アキレス腱の柔軟性を高める〉
壁ドン アキレス腱伸ばし
足の若さを保つ万能ストレッチ。アキレス腱が伸びると血流がアップするので、冷えやむくみに悩む人にもおすすめです
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左足を一歩後ろに下げる。つま先はまっすぐ前に向け、かかとが床から浮かないようにする
少しずつ壁に体重をかけながら、右ひざをゆっくり曲げる。左足のアキレス腱が伸びていることを意識しながら、30~60秒キープ。反対側も同様に※左右とも3回ずつ行う
〈土踏まずのアーチを整える〉
足首サッサ
足裏のアーチを支える筋肉にアプローチする筋トレ。
床の拭き掃除をするイメージで行いましょう
椅子に浅く腰掛け、両足はしっかり床につける
足が床から浮かないよう注意しながら、つま先を少し外側に向ける
小指とかかとは床につけたままで、親指側を少し浮かせる
小指で床を拭くようなイメージで、足首を内側に回す ※左右10回ずつ、3セット行う
〈裏側の筋力を高める〉
タオルギャザー
座ったままでできる足裏のトレーニング。
つま先を握りこむ力がない人は、転倒防止のためにもぜひ実践を
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椅子に浅く腰掛け、床にタオルを広げる。右足の親指の腹の下がタオルの端にかかるように
かかとを床につけたまま、足の指でタオルをつかむ。指の付け根から曲げるのがポイント
そのまま5本の指を使ってタオルを引き上げる。かかとが浮かないように注意して
5本の指を勢いよくパッと開いてタオルを離す。5回行ったら反対側も同様に〈長く歩いても疲れない脚力を養う〉
スクワット+ ヒールレイズ
大殿筋とヒラメ筋を同時に鍛えるトレーニング。
正しい姿勢を保てるよう、壁や椅子に手をつきながら、無理のない回数で行って
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足を腰の幅に開き、壁に手をつく(またはしっかりした椅子の背をつかむ)
足の裏を床につけたまま、3秒かけてしゃがんでお尻をまっすぐ下に落とす(ひざが90度に曲がるくらいまで)
3秒かけて元の姿勢に戻し、さらにそのままかかとを上げて1~2秒キープ
かかとをおろす ※10回行う
菊池守
下北沢病院院長
大阪大学医学部卒業。米国ジョージタウン大学創傷治癒センターに留学し、足病医学に出合う。帰国後、佐賀大学医学部附属病院を経て、現職。
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退職した瞬間に、ぱったり交流が途絶える「友達」
よく高齢者向けに「ソロ社会」をテーマとした講演会を実施した際、特に男性の高齢者からこんな質問を多くいただきます。
写真=iStock.com/Dean Mitchell
※写真はイメージです
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「会社を辞めてから友達がいなくなった。どうすればいいか?」
この質問は、まず、前提の認識が違っていると思います。「友達がいなくなった」というのは、元は「友達がいた」という前提です。しかし、こうした質問をされる方は大抵「そもそも友達なんて元からいなかったのに、それに気づいていない」場合が多いのです。
彼らのいう友達とは、あくまで会社の同僚や上司・部下という「自分の周りにいた人」の事を指していて、決して友達ではありません。もちろん、会社の中で友達をもつ人もいるでしょう。頻繁に飲みに行ったり、休日にゴルフに行ったり、場合によっては、家族ぐるみで海水浴や旅行に行く間柄かもしれません。しかし、そのほとんどが会社を退職した瞬間に、ぱったり交流が途絶えてしまいます。
広告
会社といういわゆるひとつの「囲いのあるコミュニティ」の中に互いに所属していたからこそ、たまたま行動を共にしただけであり、その囲いがなくなってしまえば、疎遠になるのも無理はありません。つまり、会社という「所属するコミュニティ」の中の人間関係の多くは、その所属がなくなると同時に消えてしまうものなのです。
上司だから、評価権があるから誰かがいたに過ぎない
残念ながら、退職された高齢男性の多くは、在職中にそのことに気付けません。それどころか、多くが仕事上の人間関係を友達と勘違いしています。特に、現役時代に一部上場の大企業に勤めて、家庭や趣味より仕事に邁進し、出世も果たし、そこそこの上席管理職を経験した人ほどその傾向があります。
会社ではポストに応じて、人間関係が自動的に用意されます。上司がいて、部下がいて、同僚がいて、あるプロジェクトの仕掛り中には一緒に目標に向かって協働する仲間がいたはずです。一定以上のポストであれば、秘書的な役割を果たす人材も用意されていました。自ら努力せずとも、自分の周りは人であふれていたでしょう。それが当たり前でした。ランチには誰かがお供についてくれて、「飲みに行くぞ」といえば、大勢の部下が(内心は行きたくないと思っていても)ついてきてくれて「俺って人気ある~! 慕われてる~!」などと思っていなかったでしょうか。
とんでもない勘違いです。上司だから、評価権があるから、人事権があるからついてきただけであって、決してあなたの人徳ではない。その証拠に、会社を辞めたとたん、誰も会社の人間から連絡など来ないでしょう。それは、かつてのあなたの上司にあなたもまったく連絡を取ろうとしなかったのと同じです。
男性は50代から急激に「友達ゼロ」が増える
会社の人間関係は、会社の内集団だからこその関係性にすぎず、会社を辞めれば、外集団の無関係な人間となります。以前勤めていた会社だからといって、IDカードもないのに入所することはできませんし、連絡をとったところで相手も迷惑するでしょう。何十年も勤め上げたところで、退職した瞬間に、それまでの人間関係はその瞬間に消滅するのです。
ここまで読んで、「いやいや、俺は大丈夫。俺には会社以外の友達もたくさんいるから」と思っている今は現役の男性もいるかもしれません。しかし、その友達は、あなたが会社を辞めて、何の肩書もない状態になっても付き合ってくれるでしょうか? そもそもその人と知り合ったのは仕事絡みではなかったですか? 連絡をとってくる時は何かしら仕事の頼み事があったからではないですか? そもそも、知り合いと友達は違います。フェイスブックで、登録上友達数が何千人いたとしても、それは単に「いいね」をくれるだけの関係でしかありません。
年代別に「友達がいない割合」を調査したものがあります。
男性は、50代から急激に「友達ゼロ」が増えていきます。70歳以上でさらに友達の数が減るのは、数少ない友達自体が死んでしまうということもあるからですが、それでも男性は、加齢と所属の有無とともに、友達がゼロになっていくのです。
【図表】友達が一人もいない割合
日本の高齢男性特有の「妻唯一依存症」
要するに、ほとんどの男性には、仕事を辞めた後も付き合いが続く人間関係はほぼいません。深刻なのは、現役の時に友達がいると錯覚している人ほど、仕事を辞めた途端に「俺は友達がいなかったんだ……」と突然思い知らされ、大きな絶望を感じてしまうことです。
身も蓋もない言い方をすれば、退職後の高齢男性の末路は、友達もなく、趣味もなく、生きがいもなく、やることもなく、さりとて何かを始めようとする意欲もなく、ただ毎日テレビを見て過ごすだけの抜け殻となります。
その最大の被害者が配偶者(妻)です。今まで会社だけに依存してきた夫が、退職後は今度は妻に依存するようになるからです。私はそれを高齢男性特有の「妻唯一依存症」と名付けています。
そうなってしまった夫は、分かりやすくいえば幼児と一緒です。妻の買い物についていこうとするし、やたらと構ってもらおうとするし、ちょっとでも相手にしないと不機嫌になって怒り出したりします。唯一の依存先である妻に見捨てられることを極端に恐れるからです。
妻もいい迷惑なので、何か理由をつけて夫を「家の外に追い出そう」としますが、夫は外に行ってもすることもないので、うだうだと居間に寝そべるだけです。元から何かしらの趣味を持ち、退職後はその趣味に没頭できる男性は別です。そういうものもなく、「趣味は仕事」という人生を送ってきた人こそ危険です。本当に何をしたらいいか分からないからです。
人とのつながりに「生きがい」を感じにくい男性たち
内閣府が行った「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(対象は60歳以上男女)」によれば、「生きがいを感じるのはどのような時ですか?」という質問に対する回答の男女の差分を見ると、高齢男性がいかに仕事以外に何も楽しみや喜びを見いだせていないかが分かります。
高齢男性が女性と比して生きがいを感じるのは、「趣味・スポーツ」を除けば、「仕事」や「勉強」「収入」といった、どちらかというと仕事的なものばかりです。
【図表】日本の高齢者「生きがいを感じる時」男女差
高齢男性と高齢女性の大きな違いは、女性のほうが人とのつながりに生きがいを感じている点です。「おしゃれ」をして「友達と交流」し「おいしい物を食べ」たり、「旅行」したりして、そうしたつながりから「他人からの感謝」を受けることが生きがいとなっています。そうした女性にとって日常的にできる当たり前のことが、高齢男性にはできないのです。
写真=iStock.com/SeventyFour
※写真はイメージです
かといって、老後のために「友達を作りましょう」とか「趣味を持ちましょう」とかいう高齢者向け自己啓発セミナーの口車に乗せられてはいけません。まず、不可能だからです。正確には「作ろうと思って友達はできるものではない」し、「趣味にしようと思って始めたことが趣味に昇華することなんてない」からです。友達はいつの間にか友達になっているものだし、趣味はいつのまにか泥沼(いい意味で)にハマっているものです。
仕事、旅、スナック…喋る機会を増やすこと
では、友達もいない、趣味もない高齢男性はどうやって生きていけばいいのでしょう?
それは「友達を作る」でも「趣味を作る」ことでもなく、1日数時間、週2~3日でもいいから仕事を続けることです。その仕事は1人黙々とやる仕事ではなく、倉庫の分別とか大勢の人間との共同作業であったほうがいい。なぜなら、それは金を得るための仕事ではなく、人と接する機会を得るための仕事だからです。そうでもしないと、丸一日誰とも口をきかずに終わる日々を過ごすことになるでしょう。
他愛のない話でいいのです。人と喋ることはとても大事。「俺の話を聞いてくれる相手がいる」と感じられることはとても大切です。それはテキストのやりとりだけではカバーできない心の充足と脳の活性化を生みます。
友達の数より会話の数を増やす。いつものメンバーだけではなく、時折知らない人との会話の機会があればなおよいでしょう。仕事がない場合でも、一人旅でもして見知らぬ土地の誰かと一言二言喋るだけでもいい。人見知りだからそんなことできないと思いますか? 自分の事を誰も知らない土地であれば、案外気楽に喋れるものです。準備運動したいなら、スナックでも行って、ママや他の客と会話してみてもいいでしょう。喋らせてくれて聞いてくれるのがサービスですから。
そういう意味で、高齢男性のクレーマーが店頭や電話口でまくしたてるのは、こうした会話欲求を満たすはけ口として使われているのかもしれません。
荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。