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84才にして食欲旺盛、睡眠も充分にとれていた。まだまだ元気な姿をファンに見せてくれると誰もが疑わなかった矢先、思わぬ場所で帰らぬ人となった。風呂場だ。野村克也さんが息を引き取った浴室は、中高年にとってはリラックスできるオアシスである一方で、危険地帯でもあった。
2月11日、惜しまれながらこの世を去った野村克也さん(享年84)。撮影/小彼英一
【目次】
- 野村克也さんは、ひとりで風呂に入っていたときに
- 白川由美さんも自宅の風呂場で
- しっかりしている人ほど要注意
- 教えてくれた人
野村克也さんは、ひとりで風呂に入っていたときに野村克也さんも…お風呂が命取りになった著名人
最低気温が0℃を下回る寒い日だった。2月11日、野村克也さん(享年84)が、自宅の浴槽で亡くなっているのが見つかった。日付が変わった深夜1時頃、野村さんはひとりで風呂に入ったという。
「普段はお風呂から10分ほどで出てくるのに、この日は出てこなかった。不審に思ったお手伝いさんがドア越しに声をかけたところ、応答がなく、戸を開けたら野村さんが浴槽の中で意識を失っていたそうです。お手伝いさんが泊まり込みで身の回りの手助けをしていたのですが、野村さんは頭もしっかりしていたし、他人の世話になるのが嫌いな性格だった。トイレやお風呂、着替えなどはゆっくりとした動きでしたが、全部ひとりでやっていました」(野村さんの知人)
→お風呂場で死なないために今すぐできること|怖いのはヒートショックだけじゃない!
白川由美さんも自宅の風呂場で
俳優の故・二谷英明さん(享年81)の妻で、映画やドラマで活躍した白川由美さん(享年79)も、2016年6月に自宅の風呂場でぐったりしているところを家族に発見され、搬送先の病院で亡くなった。
白川由美さん(享年81)もお風呂で…写真/時事通信社
→白川由美さんの死因もしかして…高齢者の長湯は死を招く!?お風呂で熱中症に
同年10月に亡くなった俳優の平幹二朗さん(享年82)の最期もまた、風呂場だった。
平幹二朗さん(享年82)も…写真/共同通信社
しっかりしている人ほど要注意
介護ジャーナリストの末並俊司さんが指摘する。
「介護サービスでプロの入浴介助を受けていたり、家族の見守りがある場合は風呂場で亡くなることはほとんどない。しかし“まだ自分は大丈夫”と思っている人、足腰は不自由だけど頭がしっかりしている人などは、“裸を見られるのは恥ずかしい”と補助を拒み、入浴中に事故死するケースが増えています」
厚生労働省が2015年に発表した推計によれば、入浴中の死者は年間1万9000人。2019年に交通事故で死亡した人の数は3200人なので約6倍にあたる。「お風呂」はこれほどまでに危険な場所なのだ。
野村さんの死因は、2017年12月に亡くなった妻の野村沙知代さん(享年85)と同じ虚血性心不全だった。
狭心症や心筋梗塞を起こすと、心臓に血液が行き届かなくなり心臓の一部が壊死してしまう。この状態を「虚血」といい、その後、心臓の働きが弱まることで心不全が起きる。この虚血性心不全は突然死の代表ともいえる病気だ。野村さんの虚血性心不全を引き起こした原因は、冬場の入浴時に起こる「ヒートショック」だと考えられるという。
入浴と健康の関係を研究している医師で、東京都市大学人間科学部教授の早坂信哉さんが解説する。
「ヒートショックは急激な温度変化による、血圧の上昇によって起こります。冬場の寒い脱衣所で服を脱ぐと交感神経が刺激され、血圧が30~40ほど上がり、続けて熱い湯船にドボンとつかることで、さらに10~20ほど上昇する。合わせて50くらい一気に上がることで心臓に負荷がかかり、心筋梗塞や心不全といった病気を引き起こすのです。若い人は血管が丈夫なのでさほど危険はないのですが、中高年の人は動脈硬化が進行しているのでリスクが高い」
本来リラックスできる空間を“最期の場所”としないために、寒暖差には要注意だ。
白川由美さんの死因もしかして…高齢者の長湯は死を招く!?お風呂で熱中症に
日本列島に大寒波が到来し、記録的な大雪を降らせたことは記憶に新しい。立春近しといえども、まだまだ、体の芯まで凍える寒さが続いている。
そんな夜は、ひととき時間を忘れ、本でも持ち込み熱いお湯に肩までつかって、長風呂を楽しみたいもの。でも、ちょっと待った! その入浴が、とんでもない事態を引き起こすかもしれない…。
入浴中の死亡事故の多くは熱中症だった
これまでこういった事故の原因は、急激な気温変化で、血圧が急上昇し、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす「ヒートショック」ではないかといわれてきた。しかし、昨年11月に大阪府監察医でもある千葉科学大学の黒木尚長教授らは、「入浴中の死亡事故の多くは、熱いお湯に長時間入浴したことによる熱中症」だと発表した。黒木さんが解説する。
「42℃のお湯に入ると、10分間で体温が1℃ほど上がり、30分で3℃体温が上がります。多くの人の平熱は36℃程度ですから、体温は40℃近くまで上昇します。そのとき深部体温も同程度に上昇します。血液の温度は40℃を超えると、重症の熱中症にかかり、意識を失うと、そのままお風呂で溺れてしまうというわけです。
さらにお湯の温度に体温が近づくと、細胞が壊れ始め、壊れた細胞から、カリウムが血液に流れていく。血液中のカリウムが上がると、溺れなくても心停止を起こします」
「日本の風呂は小さく、浴槽で亡くなったほとんどの人は、溺れていないのに心停止で亡くなっています。布団の中で心筋梗塞で亡くなるかたもいるので、長い間 “ヒートショックかもしれない”と考えられていたのです。しかし、もしヒートショックであるならば、冬の露天風呂での入浴時の事故が多発するはずなのに、そうでもない。
一方で現在は、浴室内外の寒暖差に気をつけようという意識も広がり、浴室暖房も普及しているにもかかわらず、入浴中の事故は増加傾向にあります。そういった経緯もあって熱中症だとわかったのです」
浴室での熱中症は高齢者に多い
今回、浴室での熱中症は高齢者に多いことがわかった。その理由は、「老化により、温痛覚が鈍くなるから」だと黒木さんは指摘する。
「夏の熱中症対策で、お年寄りがクーラーをつけない理由は、節約ではなく、そもそも暑いと感じないからといわれていますが、お風呂でも同じことがいわれています。例えば41℃のお風呂に入ったとき、若い人は熱いと感じるし、のぼせるので長時間お湯につかっていられませんが、高齢者は熱いお湯にじっくりつかっていられますし、それを好みます。それは高齢者が、熱さに鈍感になっているから」
熱中症を防ぐには、「41℃以上のお湯に、30分以上肩までつからない」こと。
「ある銭湯では、42℃で営業していた際に、脱衣所で倒れる客が多く、救急車を呼ぶこともあったが、41℃で営業したら、倒れる客が激減したそうです。お年寄りはよく『温まりたい』と言うけれど、41℃のお湯に10分程度の入浴で済ませることがいちばん。そしてできれば1人でいるときの入浴は避けましょう」
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