倫理法人会では、毎週今週の倫理を会員の皆様に送信しています。今日は、今週の倫理を紹介します。
おおみそか恒例の「第61回NHK紅白歌合戦」に初出場が決まった歌手の植村花菜さん。
デビューして六年になる花菜さんですが、四年前に亡くなった祖母との思い出を幼少時からたどった「トイレの神様」が、今年一番の「泣ける歌」として有線や着うたを中心に注目を浴びました。そしてついに、紅白という夢舞台を掴み取ることができたのです。
「トイレの神様」とはユニークなタイトルですが、花菜さんは七月に同名の著書を発表しています。花菜さんの生い立ちや、祖母から「トイレには女神様がいるから、掃除をするとべっぴんさんになれる」と聞かされたエピソード、そして曲が生まれるまでの誕生秘話が紹介されています。
花菜さんは祖母の「トイレには神様がいて、いつも綺麗に掃除するとべっぴんになれる」という言葉に、人の嫌がることでも自ら率先して実践することで、表情が美しくなるということを感じ取ったといいます。祖母の言葉を信じて、一所懸命にトイレ清掃を実践し、素直に成長したご褒美が曲の大ヒット、紅白出場へとつながったのでしょう。(参考文献『トイレの神様』植村花菜著/宝島社)
さて、トイレ掃除には「汚れた所を綺麗にして清潔に保つ」ということだけでなく、「汚れた所を綺麗にする行為を通して、自身の心を磨き浄化する」という意義があります。
経営者のAさんは、トイレ掃除の必要性を痛感し、今までやったこともない社内のトイレ掃除を毎日行なうようになりました。どんどん綺麗になるトイレを見てAさんはとても満足していましたが、ある日の汚れた便器を見て「誰が汚したんだ!」と無性に腹が立ってきました。
このことをある先輩に話したところ、次のように諭されたのです。
「A君、君は何のためにトイレ掃除をしているんだい。ちょっとやったからといって、ずいぶん偉そうな心になっているんじゃないかい。トイレ掃除はあくまで自分の心磨きだよ。汚れがあったら、これは自分の心の汚れと受けとめて、掃除することによって自分自身の心を綺麗にするんだという気持ちが大切だよ」
Aさんはこの先輩のアドバイスにハッとしました。トイレ掃除をちょっと始めただけで、いかにも自分が良いことをしているような錯覚に陥っていました。
便器を汚した人を無意識のうちに責めていました。トイレ掃除はこうした自分の醜い心を浄化する実践であることを肝に銘じたのです。
今年も残り少なくなり、大掃除の頃となりました。一年の締めくくりとして、お世話になった様々な物への感謝の気持ちとして大掃除があります。その中でも特にトイレ掃除に心を注ぎ、自身の心を磨くとともに、トイレの女神様にも喜んでもらいましょう。