(共同出願)
第38条 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。
14条の不利益行為には、分割出願が含まれないが、分割出願をする際には、共同出願違反とならないよう共有者の全員で特許出願をする必要がある。
9条の不利益行為には、分割出願が含まれないが、分割出願をする際には、新たな出願として委任を受ける必要がある。
特許を受ける権利の共有者の一方が特許出願を拒否する場合には、他の共有者は特許出願をすることができない。特許出願をするためには、他の共有者から特許を受ける権利を譲り受ける必要がある(33条1項)。
「共同発明」
共同発明者とは、2人以上の者が、単なる協力でなく実質的に(一体的、連続的に)協力して発明を完成させた場合をいう。発明の成立過程を、①着想の提供と②着想の具体化とに分けて考えることができる。
①提供した着想が新しい場合には、具体化した結果を予測することが可能であれば、発明者となる。ただし、単に基本的な課題とアイデアを示したに過ぎず、具体化した結果を予測することが困難な場合には、発明者とならない。
②新着想を具体化した者は、その具体化が当業者にとって自明程度でなければ共同発明者となる。新着想の提供を受けて発明を具体化した者は、その具体化した結果を予測することが困難で、着想が発明の成立に結びつき難い場合には、単独の発明者となる。ただし、単に指示を受けて実験等を行ったに過ぎない者は、共同発明者とはなり得ない。
<共同発明者の認定>
東京地裁平成14年8月27日判決
上記によれば,平成元年当時被告会社が抱えていた課題(真球度の高い細粒核を高収率で得ること)の解決のためには,撹拌造粒法における最適な実験条件を見つけ出すことが重要であり,当時公知であった主薬と賦形剤を混合して細粒核を製造する方法と,寺下論文に開示された真球度の高いコーティング用細粒核を高収率で得る方法とを組み合わせて主薬を含む真球状の細粒核を製造しようとすることは,それ自体が発明と呼べる程度に具体化したものではなく,課題解決の方向性を大筋で示すものにすぎない。したがって,原告が上記着想を得たからといって,本件発明の成立に創作的な貢献をしたということはできず,原告を共同発明者と認めることはできない。
なお,一般に,発明の成立過程を着想の提供(課題の提供又は課題解決の方向付け)と着想の具体化の2段階に分け,①提供した着想が新しい場合には,着想(提供)者は発明者であり,②新着想を具体化した者は,その具体化が当業者にとって自明程度のことに属しない限り,共同発明者である,とする見解が存在する。上記のような見解については,発明が機械的構成に属するような場合には,一般に,着想の段階で,これを具体化した結果を予測することが可能であり,上記の①により発明者を確定し得る場合も少なくないと思われるが,発明が化学関連の分野や,本件のような分野に属する場合には,一般に,着想を具体化した結果を事前に予想することは困難であり,着想がそのまま発明の成立に結び付き難いことから,上記の①を当てはめて発明者を確定することができる場合は,むしろ少ないと解されるところである。
本件についても,上記のとおり,主薬と賦形剤を混合して細粒核を製造する方法と寺下論文に示された方法を組み合わせるという着想は,それだけでは真球度の高い粒核を高収率で得られるという結果に結び付くものではなく,また,当該着想自体も当業者であればさほどの困難もなく想到するものであって,創作的価値を有する発想ということもできないのであるから,原告をもって,本件発明の共同発明者と認めることはできない。
(特許出願の放棄又は取下げ)
第38条の2 特許出願人は、その特許出願について仮専用実施権又は登録した仮通常実施権を有する者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許出願を放棄し、又は取り下げることができる。
特許権の放棄の場合には、通常実施権者が登録をしていなくても承諾が必要である(97条1項)。特許を受ける権利の場合に(38条の2)、仮通常実施権者の登録を必要とするのは、仮通常実施権の規定が設けられた趣旨が、特許権成立前に登録による第三者効を付与することにあったためと考えられる。登録をしていなければ、従前の事実上の実施許諾と異ならないためである。
従って、登録を行っていない仮通常実施権の場合には、放棄、取下げの際に承諾は不要であるが、当事者間の契約は有効に存在するため、債務不履行違反になると考えられる。
特許権の譲渡があった場合、許諾の通常実施権者の場合は(78条1項)、契約当事者である特許権者のみがかかる通常実施権者の承諾を得ることが必要と考える。通常実施権者は、登録がなければ特許権の転得者に対抗できないため、特許権を放棄する際には、実質的に登録した通常実施権者の承諾を得ればよいことになる。
(先願)
第39条 同一の発明について異なつた日に2以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
独占排他権が複数の者に帰属することを防止するため、重複特許の成立を排除することを規定する。他に拒絶理由がなく特許をできる状態にある出願について適用がある。
先願について、拒絶査定の確定、出願の放棄、取下げ、却下があったとき、先願の地位はなくなる。従って、本条の審査は先願の処理が確定後に行う。
特許出願人が同一である場合にも適用がある。権利の存続期間が延長されることを防止するためである(67条)。
特許請求の範囲に記載された発明が実質的又は部分的に同一である場合にも、特許を受けることができない。明細書の実施例の一部が同一の場合は、後願の特許請求の範囲で除くクレームに補正すれば特許を受けることができる。
先願発明と後願発明との同一性の判断
①発明特定事項に相違があっても、後願発明が、周知、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな作用効果を奏さない場合、②後願発明が上位概念として表現したことによる相違の場合、③カテゴリー表現上の相違(例えば、物の発明と方法の発明の相違)である場合は、実質同一であるとして39条の適用がある。
2 同一の発明について同日に2以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。
長官から協議指令があり(39条7項)、協議により定めた一の出願人のみが特許を受けられる。また、届出がないと協議不成立とされる(同8項)。協議不成立のとき、先願の地位が残る(同5項)。
出願の取り扱い
①出願人の異同に拘わらず同一、実質同一かの判断を行う。
②同日出願(39条2項)の場合、いずれか一方の出願が上位概念で、他方の出願が下位概念である場合には、両者とも拒絶されない(49条2号)。いずれを先願にしても、他方が周知、慣用技術の付加、置換で新たな作用効果を奏しない場合には、39条2項の拒絶理由となる(49条2号)。
③異日出願(39条1項)の場合、後願の出願時における出願人及び発明者が先願と後願で異なるときには、29条の2を優先して適用する。後願の出願時における出願人が先願と後願で異なるときには、発明者が同一であっても、39条1項を適用するが、先願の処分が確定するまで後願の審査は待ち状態となる。後願に対して拒絶理由通知を発することはできると考える。
④異日、同日出願(39条1項、2項)の場合、査定時に先願と後願の出願人が同一のとき、先願の確定を待たずに、後願の審査を進める。未確定の先願に対して39条1項、2項違反がある場合、先願の確定を待たずに後願について拒絶査定をすることができる。ただし、先願が審査請求されているが未着手のとき、先願の補正意思がある旨の申出があったときは、先願の審査をした後、後願を審査する。
⑤同日出願(39条2項)の場合、一部の出願が審査請求されていないときは、審査請求した出願人に審査を進められない旨を通知し、他の出願の処理を待つ。
3 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が異なつた日にされたものであるときは、特許出願人は、実用新案登録出願人より先に出願をした場合にのみその発明について特許を受けることができる。
実用新案権の保護対象は技術的思想の創作として特許権の保護対象と共通するため、先後願の対象となる。
4 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合(第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(第44条第2項(第46条第5項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一である場合を除く。)において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。
特許出願人にのみ協議命令が出され、実用新案登録出願人には協議命令が出されることはない(実7条7項)。実用新案法では実体審査を経ることなく登録されるためである(14条2項)。まれなケースとして、実用新案の登録前に特許出願人に協議命令が出された場合(通常、登録には5ヶ月程度を要する。)には、実用新案登録出願を放棄、取下げ等することはできる。
特許出願人が特許を受けるためには、実用新案権の放棄をしてもらっても先願の地位が残るため、訂正によって請求項を削除してもらう必要がある(14条の2第7項)。
5 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第1項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第2項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
出願公開される前に出願の放棄、取下げ等を行った出願に先願の地位を認めると、秘密化した状態で第三者の出願を拒絶することが可能になってしまう。そのため、放棄等がなされた出願には、先願の地位を消滅させることとした。
6 発明者又は考案者でない者であつて特許を受ける権利又は実用新案登録を受ける権利を承継しないものがした特許出願又は実用新案登録出願は、第1項から第4項までの規定の適用については、特許出願又は実用新案登録出願でないものとみなす。
先願が冒認出願である場合には、真の権利者の後願は拒絶されない旨を規定する。真の権利者が出願をしていなければ本項が適用される場合はない。
特許を受ける権利がない者がした出願は、査定・審決時に、特許を受ける権利を譲り受ければ、本項違反及び拒絶理由(49条7号)が解消する。特許権発生後には、冒認出願の無効理由(123条1項6号)を解消することはできない。
7 特許庁長官は、第2項又は第4項の場合は、相当の期間を指定して、第2項又は第4項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならない。
必ず協議命令がなされる必要があるが、審査の過誤がある場合には、協議命令が出されない。
8 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第2項又は第4項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。
届出がないときに協議不成立とみなすことができる裁量規定である。
協議により定めた一の特許出願人の届出があった場合に、この特許出願人が特許料を納付しなかったときには、当該特許出願人の出願が却下される(18条1項)。この場合、他の特許出願人の出願が特許庁に係属していれば、この他の特許出願人が特許を受けることが可能になると考える。
第38条 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。
14条の不利益行為には、分割出願が含まれないが、分割出願をする際には、共同出願違反とならないよう共有者の全員で特許出願をする必要がある。
9条の不利益行為には、分割出願が含まれないが、分割出願をする際には、新たな出願として委任を受ける必要がある。
特許を受ける権利の共有者の一方が特許出願を拒否する場合には、他の共有者は特許出願をすることができない。特許出願をするためには、他の共有者から特許を受ける権利を譲り受ける必要がある(33条1項)。
「共同発明」
共同発明者とは、2人以上の者が、単なる協力でなく実質的に(一体的、連続的に)協力して発明を完成させた場合をいう。発明の成立過程を、①着想の提供と②着想の具体化とに分けて考えることができる。
①提供した着想が新しい場合には、具体化した結果を予測することが可能であれば、発明者となる。ただし、単に基本的な課題とアイデアを示したに過ぎず、具体化した結果を予測することが困難な場合には、発明者とならない。
②新着想を具体化した者は、その具体化が当業者にとって自明程度でなければ共同発明者となる。新着想の提供を受けて発明を具体化した者は、その具体化した結果を予測することが困難で、着想が発明の成立に結びつき難い場合には、単独の発明者となる。ただし、単に指示を受けて実験等を行ったに過ぎない者は、共同発明者とはなり得ない。
<共同発明者の認定>
東京地裁平成14年8月27日判決
上記によれば,平成元年当時被告会社が抱えていた課題(真球度の高い細粒核を高収率で得ること)の解決のためには,撹拌造粒法における最適な実験条件を見つけ出すことが重要であり,当時公知であった主薬と賦形剤を混合して細粒核を製造する方法と,寺下論文に開示された真球度の高いコーティング用細粒核を高収率で得る方法とを組み合わせて主薬を含む真球状の細粒核を製造しようとすることは,それ自体が発明と呼べる程度に具体化したものではなく,課題解決の方向性を大筋で示すものにすぎない。したがって,原告が上記着想を得たからといって,本件発明の成立に創作的な貢献をしたということはできず,原告を共同発明者と認めることはできない。
なお,一般に,発明の成立過程を着想の提供(課題の提供又は課題解決の方向付け)と着想の具体化の2段階に分け,①提供した着想が新しい場合には,着想(提供)者は発明者であり,②新着想を具体化した者は,その具体化が当業者にとって自明程度のことに属しない限り,共同発明者である,とする見解が存在する。上記のような見解については,発明が機械的構成に属するような場合には,一般に,着想の段階で,これを具体化した結果を予測することが可能であり,上記の①により発明者を確定し得る場合も少なくないと思われるが,発明が化学関連の分野や,本件のような分野に属する場合には,一般に,着想を具体化した結果を事前に予想することは困難であり,着想がそのまま発明の成立に結び付き難いことから,上記の①を当てはめて発明者を確定することができる場合は,むしろ少ないと解されるところである。
本件についても,上記のとおり,主薬と賦形剤を混合して細粒核を製造する方法と寺下論文に示された方法を組み合わせるという着想は,それだけでは真球度の高い粒核を高収率で得られるという結果に結び付くものではなく,また,当該着想自体も当業者であればさほどの困難もなく想到するものであって,創作的価値を有する発想ということもできないのであるから,原告をもって,本件発明の共同発明者と認めることはできない。
(特許出願の放棄又は取下げ)
第38条の2 特許出願人は、その特許出願について仮専用実施権又は登録した仮通常実施権を有する者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許出願を放棄し、又は取り下げることができる。
特許権の放棄の場合には、通常実施権者が登録をしていなくても承諾が必要である(97条1項)。特許を受ける権利の場合に(38条の2)、仮通常実施権者の登録を必要とするのは、仮通常実施権の規定が設けられた趣旨が、特許権成立前に登録による第三者効を付与することにあったためと考えられる。登録をしていなければ、従前の事実上の実施許諾と異ならないためである。
従って、登録を行っていない仮通常実施権の場合には、放棄、取下げの際に承諾は不要であるが、当事者間の契約は有効に存在するため、債務不履行違反になると考えられる。
特許権の譲渡があった場合、許諾の通常実施権者の場合は(78条1項)、契約当事者である特許権者のみがかかる通常実施権者の承諾を得ることが必要と考える。通常実施権者は、登録がなければ特許権の転得者に対抗できないため、特許権を放棄する際には、実質的に登録した通常実施権者の承諾を得ればよいことになる。
(先願)
第39条 同一の発明について異なつた日に2以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
独占排他権が複数の者に帰属することを防止するため、重複特許の成立を排除することを規定する。他に拒絶理由がなく特許をできる状態にある出願について適用がある。
先願について、拒絶査定の確定、出願の放棄、取下げ、却下があったとき、先願の地位はなくなる。従って、本条の審査は先願の処理が確定後に行う。
特許出願人が同一である場合にも適用がある。権利の存続期間が延長されることを防止するためである(67条)。
特許請求の範囲に記載された発明が実質的又は部分的に同一である場合にも、特許を受けることができない。明細書の実施例の一部が同一の場合は、後願の特許請求の範囲で除くクレームに補正すれば特許を受けることができる。
先願発明と後願発明との同一性の判断
①発明特定事項に相違があっても、後願発明が、周知、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな作用効果を奏さない場合、②後願発明が上位概念として表現したことによる相違の場合、③カテゴリー表現上の相違(例えば、物の発明と方法の発明の相違)である場合は、実質同一であるとして39条の適用がある。
2 同一の発明について同日に2以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。
長官から協議指令があり(39条7項)、協議により定めた一の出願人のみが特許を受けられる。また、届出がないと協議不成立とされる(同8項)。協議不成立のとき、先願の地位が残る(同5項)。
出願の取り扱い
①出願人の異同に拘わらず同一、実質同一かの判断を行う。
②同日出願(39条2項)の場合、いずれか一方の出願が上位概念で、他方の出願が下位概念である場合には、両者とも拒絶されない(49条2号)。いずれを先願にしても、他方が周知、慣用技術の付加、置換で新たな作用効果を奏しない場合には、39条2項の拒絶理由となる(49条2号)。
③異日出願(39条1項)の場合、後願の出願時における出願人及び発明者が先願と後願で異なるときには、29条の2を優先して適用する。後願の出願時における出願人が先願と後願で異なるときには、発明者が同一であっても、39条1項を適用するが、先願の処分が確定するまで後願の審査は待ち状態となる。後願に対して拒絶理由通知を発することはできると考える。
④異日、同日出願(39条1項、2項)の場合、査定時に先願と後願の出願人が同一のとき、先願の確定を待たずに、後願の審査を進める。未確定の先願に対して39条1項、2項違反がある場合、先願の確定を待たずに後願について拒絶査定をすることができる。ただし、先願が審査請求されているが未着手のとき、先願の補正意思がある旨の申出があったときは、先願の審査をした後、後願を審査する。
⑤同日出願(39条2項)の場合、一部の出願が審査請求されていないときは、審査請求した出願人に審査を進められない旨を通知し、他の出願の処理を待つ。
3 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が異なつた日にされたものであるときは、特許出願人は、実用新案登録出願人より先に出願をした場合にのみその発明について特許を受けることができる。
実用新案権の保護対象は技術的思想の創作として特許権の保護対象と共通するため、先後願の対象となる。
4 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合(第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(第44条第2項(第46条第5項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一である場合を除く。)において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。
特許出願人にのみ協議命令が出され、実用新案登録出願人には協議命令が出されることはない(実7条7項)。実用新案法では実体審査を経ることなく登録されるためである(14条2項)。まれなケースとして、実用新案の登録前に特許出願人に協議命令が出された場合(通常、登録には5ヶ月程度を要する。)には、実用新案登録出願を放棄、取下げ等することはできる。
特許出願人が特許を受けるためには、実用新案権の放棄をしてもらっても先願の地位が残るため、訂正によって請求項を削除してもらう必要がある(14条の2第7項)。
5 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第1項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第2項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
出願公開される前に出願の放棄、取下げ等を行った出願に先願の地位を認めると、秘密化した状態で第三者の出願を拒絶することが可能になってしまう。そのため、放棄等がなされた出願には、先願の地位を消滅させることとした。
6 発明者又は考案者でない者であつて特許を受ける権利又は実用新案登録を受ける権利を承継しないものがした特許出願又は実用新案登録出願は、第1項から第4項までの規定の適用については、特許出願又は実用新案登録出願でないものとみなす。
先願が冒認出願である場合には、真の権利者の後願は拒絶されない旨を規定する。真の権利者が出願をしていなければ本項が適用される場合はない。
特許を受ける権利がない者がした出願は、査定・審決時に、特許を受ける権利を譲り受ければ、本項違反及び拒絶理由(49条7号)が解消する。特許権発生後には、冒認出願の無効理由(123条1項6号)を解消することはできない。
7 特許庁長官は、第2項又は第4項の場合は、相当の期間を指定して、第2項又は第4項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならない。
必ず協議命令がなされる必要があるが、審査の過誤がある場合には、協議命令が出されない。
8 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第2項又は第4項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。
届出がないときに協議不成立とみなすことができる裁量規定である。
協議により定めた一の特許出願人の届出があった場合に、この特許出願人が特許料を納付しなかったときには、当該特許出願人の出願が却下される(18条1項)。この場合、他の特許出願人の出願が特許庁に係属していれば、この他の特許出願人が特許を受けることが可能になると考える。