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意匠法 意匠間の取り扱い

2010年04月18日 | 意匠間の取り扱い

<部品の意匠、部品と同一の部分についての部分意匠、部品を含む完成品の意匠の相互関係>
 例・・・部品の意匠;ヘッドライト
     部分意匠;車に適用したヘッドライト部分
     完成品の意匠;ヘッドライトを含む車
 ※以下に、全体とは全体意匠のことをいい、部品とは部品の意匠のことをいい、部分とは部分意匠のことをいう。
(1-1)先願;全体、後願;同一の全体
①3条1項各号
 物品及び形態が同一なため、3条1項1号又は2号の適用がある。
②3条2項
 3条1項1号又は2号の適用があるため、適用がない(かっこ書)。
③3条の2
 後願の意匠全体の形態が先願の意匠の一部でないため、適用がない。
④9条
 物品及び形態が同一なため、適用がある。
⑤23条
 この場合、後願が登録されたときには、重複登録となる。重複登録の場合、法上の規定がないため問題となる。重複登録の後願は、意匠権を有している以上、実施を制限する規定もなく、無効にされるまでは実施が可能とも思われる。しかし、利用・抵触関係についての規定が存在する一方(26条)、重複登録の規定が存在しないのは、利用・抵触関係については、審査の対象外で適法に権利が発生するため後願の実施を制限する規定が必要であるからである。これに対し、重複登録の場合は、審査の対象となっていながらも過誤登録があった場合であるので、無効審判(48条1項各号)によって処理されるべきだと考えられるためである。
 したがって、利用関係ですら実施が制限されるため(26条)、重複登録の場合には、後願の実施が当然に制限されると解する。このことより、後願の意匠を実施すると、先願の意匠権を侵害することになる(23条)。
⑥48条1項1号
 先願の意匠権者等は、意匠登録無効審判を請求できる(48条1項1号)。無効審決が確定すれば、意匠権は初めからなかったものとみなされる(49条)。
 これに対し、後願の意匠権者は、審判請求の予告登録前に、重複登録の無効理由を知らなかったときに、日本国内で後願の意匠又はその類似意匠を実施し、又はその準備をしていたときには、中用権を有する(30条1項)。
後願の意匠権者から権利行使を受けた第三者は、無効審判を請求することができる(48条1項1号)。また、この請求を行うと共に、審決が確定するまで訴訟を中止する旨の申立てを行うことができる(準特168条2項)。

(1-2)先願;全体、後願;類似する全体
①3条1項各号
 物品及び形態が類似するため、3条1項3号の適用がある。ただし、4条の適用を受ければ、適用がない。
②3条2項
 3条1項3号の適用があるため、適用がない(かっこ書)。
③3条の2
 後願の意匠全体の形態が先願の意匠の一部でないため、適用がない。
④9条
 物品及び形態が類似するため、適用がある。ただし、10条の適用を受ければ、適用がない。
⑤23条
 後願は過誤登録となり、無効理由を有する(3条1項3号又は9条、48条1項1号)。従って、権利行使が制限される(準特104条の3)。
 ただし、出願人が同一で意匠公報発行前に後願が出願された場合、適法に後願の意匠権が存在することがある。
⑥26条
 23条(直接侵害)の検討で十分。
⑦38条1号
 23条(直接侵害)の検討で十分。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する(3条1項3号又は9条)。

(1-3)先願;全体、後願;非類似の全体
①3条1項各号
 物品が非類似のため、適用がない。
②3条2項
 形態における要部が同一又は類似であれば、適用がある。ただし、4条の適用を受ければ適用がない。
③3条の2
 後願の意匠全体の形態が先願の意匠の一部でないため、適用がない。
④9条
 物品が非類似のため、適用がない。
⑤23条
 意匠が非類似のため、直接侵害は成立しない。
⑥26条1項、2項
 先願が形状のみの意匠で、後願が形状に斬新な模様を付加した意匠である場合、意匠は類似しないが、後願の意匠が形状の意匠を製造した後、模様を付加して製造される場合には、利用関係が成立し得る。 ただし、斬新な模様が形状と一体不可分になっているときには、利用関係が成立しない。
⑦38条1号
 先願が形状に斬新な模様を付加した意匠で、後願が形状のみの意匠である場合、意匠は類似しないが、後願の形状のみの意匠が先願の意匠の実施以外に他の用途がなければ間接侵害が成立し得る。ただし、形状とこれに色彩を付加したもので後願の意匠の美的外観としての形態が成立するため、間接侵害は成立しないと考える。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する可能性はある(3条2項)。

(2-1)先願;部分、
後願;同一の部分(類似も同様)
①3条1項各号
 物品、部分の用途及び機能、部分の形態、部分の位置、大きさ、範囲が同一なため、3条1項1号又は2号の適用がある。
②3条2項
 3条1項1号又は2号の適用があるため、適用がない(かっこ書)。
③3条の2
 後願の部分意匠の形態が、先願の部分以外も含めた意匠全体の形態の一部と同一であるため、適用がある。
④9条
 3条1項各号と同じ。
⑤23条
 後願は過誤登録であり、実施が制限される(3条1項3号、3条の2又は9条、46条1項1号)。また、権利行使も制限される(準特104条の3)。
⑥48条1項1号
 無効理由を有する(3条1項3号、3条の2又は9条)。

(2-2)先願;部分、
後願;位置、大きさ、範囲が異なる部分
①3条1項各号
 (a)後願の部分意匠の意匠全体に占める位置、大きさ、範囲が当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内にあると、3条1項3号の適用がある。
 (b)ありふれた範囲内にないと、3条1項3号の適用がない。
②3条2項
 (a)3条1項3号の適用があるため、適用がない(かっこ書)。
 (b)位置、大きさ、範囲を異ならせることが当該意匠の属する分野においてありふれた手法によってできないと、3条2項の適用がない。
③3条の2
 後願の部分全体の形態が、先願の部分以外も含めた意匠全体の形態の一部と同一であるため、適用がある。
④9条
  3条1項各号と同じ。

(2-3)先願;部分(車におけるヘッドライト)
後願;部分と同一の部品(ヘッドライト)
   (類似も同様)
①3条1項各号
 部分意匠の開示と同時に、部分と同一の部品も重畳的に開示されるため、3条1項1号又は2号の適用がある。
②3条2項
 3条1項1号又は2号の適用があるため、適用がない(かっこ書)。
③3条の2
 後願の部品全体の形態が先願の意匠の一部と同一であるため、適用がある。
④9条
 意匠登録を受けようとする方法及び対象が異なるため、適用がない。
⑤23条
 後願は過誤登録となり、無効理由を有する(3条の2、48条1項1号)。従って、権利行使が制限される(準特104条の3)。
 ただし、出願人が同一で意匠公報発行前に後願が出願された場合、適法に後願の意匠権が存在する。
⑥26条
 先願の意匠を包含しないので利用関係は成立しない。
⑦38条1号
 先願の部分意匠に係る物品と同一・類似の物品に部品の意匠を用いることが予定されていれば、他に用途がないとして間接侵害が成立し得る。
 第三者が部品の意匠を実施する場合、部分意匠の実施以外に他に用途がない場合は、間接侵害が成立し得る。
 なお、先願の登録意匠に係る部分が物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる場合は、5条3号の過誤登録であり、無効理由を有することになる(48条1項1号)。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する(3条の2)。

(2-4)先願;全体(車)
後願;全体の部分と同一の部品(ヘッドライト)
①3条1項各号
 全体意匠の開示と同時に、全体意匠における部分と同一の部品も重畳的に開示されるため、3条1項1号、2号の適用がある。
②3条2項
 3条1項1号、2号の適用があるため、適用がない(かっこ書)。
③3条の2
 後願の部品全体の形態が先願の意匠の一部と同一であるため、適用がある。
④9条
 物品が非類似のため、適用がない。
⑤23条
 後願は過誤登録となり、無効理由を有する(3条の2、48条1項1号)。従って、権利行使が制限される(準特104条の3)。
 ただし、出願人が同一で意匠公報発行前に後願が出願された場合、適法に後願の意匠権が存在する。
⑥26条
 先願の意匠を包含しないので利用関係は成立しない。
⑦38条1号
 先願の部分意匠に係る物品と同一・類似の物品に部品の意匠を用いることが予定されていれば、他に用途がないとして間接侵害が成立し得る。
 第三者が部品の意匠を実施する場合、部分意匠の実施以外に他に用途がない場合は、間接侵害が成立し得る。
 なお、先願の登録意匠に係る部分が物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる場合は、5条3号の過誤登録であり、無効理由を有することになる(48条1項1号)。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する(3条の2)。

(3-1)先願;部品(ヘッドライト)、
後願;部品と同一の部分(車におけるヘッドライト)(類似も同様)
①3条1項各号
 部品の意匠が開示されても、部品を部分とする部分意匠は開示されていないため、3条1項各号の適用がない。
②3条2項
 部品を物品全体における位置、大きさ、範囲に適用することが、当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内であれば、3条2項の適用がある。
③3条の2
 後願の部分全体の形態が、先願の部品全体の形態の一部とならないため、適用がない。
④9条
 意匠登録を受けようとする方法及び対象が異なるため、適用がない。
⑤23条
 3条2項の適用がなかった場合、後願の意匠権は適法に存在する。
⑥26条
 後願意匠の登録意匠に係る部分が、それ以外の部分と一体不可分になっていない限り、先願意匠を利用する関係にある。
⑦38条1号
 間接侵害に該当することはない。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する可能性はある(3条2項、)。

(3-2)先願;全体(車)、
後願;全体における部分と用途及び機能並びに形態が同一で、位置等も同一の部分(車におけるヘッドライト)
①3条1項各号
全体意匠の開示と同時に、部分と同一の部品も重
畳的に開示されるため、3条1項1号又は2号の
適用がある。
②3条2項
3条1項1号、2号の適用があるため、適用がな
い(かっこ書)。
③3条の2
 後願の部分意匠の形態が、先願の全体意匠の物品全体の形態の一部と同一であるため、適用がある。
④9条
 意匠登録を受けようとする方法及び対象が異なるため、適用がない。
⑤23条
 過誤登録として後願の実施が制限される(3条1項1号、2号又は3条の2、48条1項1号)。また、後願の権利行使も制限される(準特104条の3)。
⑥26条
 利用関係は成立しない。
⑦38条1号
  後願の登録意匠に係る部分の形態が、先願の完成品の全体の形態を実施する以外に用途がなければ間接侵害が成立し得る。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する(3条1項1号、2号又は3条の2)。

(3-3)先願;全体(車)、
後願;全体における部分と用途及び機能並びに形態が同一で、位置等が異なる部分(車におけるヘッドライト)
①3条1項各号
 (a)後願の部分意匠の意匠全体に占める位置、大きさ、範囲が当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内にあると、3条1項3号の適用がある。
 (b)ありふれた範囲内にないと、3条1項3号の適用がない。
②3条2項
 (a)3条1項3号の適用があるため、適用がない(かっこ書)。
 (b)位置、大きさ、範囲を異ならせることが当該意匠の属する分野においてありふれた手法によってできないと、3条2項の適用がない。
③3条の2
 後願の部分全体の形態が、先願の全体意匠の物品全体の形態の一部と同一であるため、適用がある。
④9条
 意匠登録を受けようとする方法及び対象が異なるため、適用がない。
⑤23条
 後願の登録意匠に係る部分の位置、大きさ、範囲がありふれていないとき、意匠は類似しない。
⑥26条
 利用関係は成立しない。
⑦38条1号
  後願の登録意匠に係る部分の形態が、先願の完成品の全体の形態を実施する以外に用途がなければ間接侵害が成立し得る。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する可能性がある(3条1項3号又は3条の2)。

(4-1)先願;部品(ヘッドライト)、
後願;同一の部品を含む全体(車)(類似も同様)
①3条1項各号
 部品の意匠が開示されても、部品を含む全体意匠は開示されていないため、3条1項各号の適用がない。
②3条2項
 (a)全体意匠において部品以外の部分の意匠に創作性がある場合は、3条2項の適用がない。
 (b)部品以外の部分の意匠に創作性がない場合は、3条2項の適用がある。
③3条の2
 後願の全体意匠の物品全体の形態が、先願の部品全体の形態の一部とならないため、適用がない。
④9条
 物品が非類似であるため、9条の適用がない。

(4-2)先願;部分(車におけるヘッドライト)、
後願;部分と用途及び機能並びに形態が同一で、位置等も同一の全体(車)
 ①3条1項各号
部分意匠において登録意匠に係る部分以外(破線
部分)を含めた全体が対比の対象となる程度に十
分に開示されていれば、3条1項1号又は2号の
適用がある。
②3条2項
3条1項1号、2号の適用があるため、適用がな
い(かっこ書)。
③3条の2
 後願の全体意匠の形態が、先願の部分意匠の物品全体の形態の一部とならないため、適用がない。
④9条
 意匠登録を受けようとする方法及び対象が異なるため、適用がない。
⑤23条
 後願の意匠権も適法に存在する可能性が高い。この場合、両意匠は類似しないと考える。
 第三者が後願の意匠と同一の意匠を実施する場合、先願の登録意匠に係る部分と第三者の実施する完成品との類否判断を行う。
⑥26条
 利用関係はないとも考えられる。
 しかし、位置等が同一であるため、後願の意匠において、意匠全体として異なる美感を呈するような事情がなければ、利用関係も成立し得る。
⑦38条1号
  間接侵害は成立しない。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する可能性はある(3条1項1号、2号)。

(4-3)先願;部分(車におけるヘッドライト)、
後願;部分と用途及び機能並びに形態が同一で、位置等が異なる全体(車)
①3条1項各号
位置等の違いが、ありふれた範囲内であれば3条
1項3号によって拒絶される。
②3条2項
 (a)全体意匠において部品以外の部分の意匠に創作性がある場合は、3条2項の適用がない。
(b)全体意匠において部品以外の部分の意匠に創作性がない場合は、3条2項の適用がある。
③3条の2
 後願の全体意匠の形態が、先願の部分意匠の物品全体の形態の一部とはならないため、適用がない。
④9条
 意匠登録を受けようとする方法及び対象が異なるため、適用がない。
⑤23条
 後願の意匠権も適法に存在する可能性が高い。この場合、両意匠は類似しないと考える。
 第三者が後願の意匠と同一の意匠を実施する場合、先願の登録意匠に係る部分と第三者の実施する完成品との類否判断を行う。
⑥26条
 位置等同一でなければ利用関係は成立しない。
⑦38条1号
  間接侵害は成立しない。
⑧48条1項1号
 無効理由を有する可能性はある(3条1項3号、3条2項)。