ととととと…リズミカルな包丁の音が響く。
リリア/ガーリックの下ごしらえしておいたよ。これぐらいでよかった?
クルル/うわ、相変わらず速いなぁ。ありがたく使わせていただきます。…ねね、リリー、このお魚「当たり」だよ。すっごく美味しそう♪
リリア/ホントだね~。「オマケ」でもらうものじゃないよね。今度魚屋のおじさんにお礼言っておかないと。
クルル/ありゃ。このトマト小さいなぁ…丸のままいっちゃおうかな?
リリア/ふふ。クルルにお任せします♪ あ、オリーブオイル、私も使う。
……
包丁の音に負けないくらい、料理中の二人も賑やかだ。
???/…料理って、もっと黙々とするものだと思ってた。
「美味しくなかったら帰る」と言った少女がカウンターに座ってリリアとクルルの料理の様子を見ている。
リリア/うーん。普通は静かに作るんじゃないかな。『無駄口叩く暇あったら手を動かせ』なんてどこの厨房でも言われてそうだし。
クルル/だね。リリーがそういうタイプじゃなくってよかったよ~。
確かにこの二人は賑やかに料理を作る。
でも、手さばきや段取りにまったく無駄が見当たらない。
???/…武術の演舞を見ているみたい…
少女のつぶやくような声はキッチンには届かない。
そして、初対面の彼女は知らない。リリアが調理の最高位「マイスター」の称号を持っていることを。
リリア/ん? ちゃちゃっと作っちゃうから待っててねっ♪
にこっと笑いかけるリリア。うん、と頷く少女。
別に怪我をしたわけでもなかったし、自分も考え事をしていた。本当におあいこ、だった。
見ず知らずの一行に付いてきてお昼ご飯、それも「試作品」になんて付き合う義理はないし、何度も帰ってしまおうと思った。
でも、メガネをかけた自分と同じくらいの年頃に見える女の子に、『にこっ』と笑いかけられると、どういうわけだか素直に待とうかと思えてしまう。
なんなのよ。わけわかんない。
見ず知らずの人にどうしてこうもフレンドリーなの?
…まあ…きらいじゃないけど。こういう雰囲気。
いつか自分達の店を持つ、という二人の夢を聞いている老マスターは、その『未来の店』に想いを巡らせているのか目を細めて「仕事」を見守り、
料理を作るのが楽しくてたまらない、という二人がキッチンで笑いあい、
賑やかだけど、どこか平和な時間がゆっくりと流れている。
…そして…
リリア/おまたせ~。
クルル/完成ですっ!
純白のテーブルクロスが広げられたテーブルには大皿が二つ。
「ほぉ…彩り鮮やかじゃな。本日のメニューを説明してくれんか」
リリア/んっと、今日は大皿料理2品です。こっちは秋の味覚、栗と豚肉のパエリヤ。珍しい取り合わせだけど、これがホントに美味しいの♪ もう一品はクルル、よろしくっ♪
クルル/オッケー。こちらの料理はスパニッシュ・マッケレル…戻り鰆のアクアパッツアです。新大陸産のトマトと新鮮なチャービルをあわせてみました。緑と赤い色で見た目も綺麗でしょー?
パエリヤのサフランの黄色とアクアパッツアの鮮やかなグリーンとトマトの赤。
昼下がりの食卓は花が咲いたように色づいた。
賑やかに取り分け、食事が始まった。
酒場のマスターと魚の旬について話すクルル。
主の作った食事を黙々と味わうハライ。
パエリヤのおこげも、炊き加減も申し分ない。なにより豚肉のうまみと栗の淡い甘さのみというシンプルさが後を引く。
クルルの用意したアクアパッツァは塩コショウで味付けした魚を焼いてから、他の具材と一緒にひたひたの水で煮込むという、こちらもシンプルなもの。
脂ののった白身魚にトマトの酸味。味付けを極力控えたために素材の味が際立っている。
「美味しくなかったら、帰る」そういっていた少女はこれまた黙々と食を進めていた。
美味しいとも、不味いとも反応がないのでクルルはかなりヒヤヒヤし、美味しくなかったのかなと不安が頭をもたげてしまう。
いたたまれず、リリアを見る。
(ね、ねぇリリー。大丈夫かなぁ?)
(だいじょぶ♪ 心配しないしない)
と、いつもの笑顔。
そして、あらかた食べ終わった頃に少し甘い何かが焼ける香り。
リリア/そろそろ焼きあがるかな~。クルル、お茶よろしく
クルル/…うん
大皿が下げられたテーブルに今度はデザートが登場。
リリア/今日は新大陸からの商船が入ったみたいで『バタタ(サツマイモ)』が手に入ったの。で、こんな焼き菓子を作ってみたんだ
オーブンから取り出したのは、いわゆるスイートポテト。
クルル/お茶はインド土産のダージリンのセカンドフラッシュ。美味しいよ~♪
リリア/甘めに作ったデザートだから、紅茶のお砂糖加減に気をつけてね
???/!
ぱくっと一口食べたときに少女の表情が初めて変った。
ぱくぱくぱく
明らかに、「止まらなくなって」いる。ヒットだ。
リリア/…どうだった?
一気に食べて、お茶を飲んでいる少女に問いかける。
???/…わるくない。美味しかった
素直に感想を漏らす。
リリア/よかった。あ、自己紹介がまだだったね。わたしはリリア。一緒に料理を作っていたのがクルル、荷物を持ってくれていたのがハライだよ
クルル/ふう、美味しくなかったかなって心配してたんだよ~
???/このお店の人?
リリア/ううん、いつもセビリアでキッチンを使わせてもらっているお店だけど、この方達のお店。私達は航海者なの
この店のマスターは、ほっほっほと笑いながら付け加える。
「リリアちゃんとクルルちゃんだったら、いつでもこの店を使ってもらっていいと言ってあるんじゃ。なに、いっそ店を継いでもらっても一向に構わんのだが、のぉ」
「ええ、二人とも考えてくれたかい?」
少しだけ本気の期待を込めて問いかける老夫婦だが…
リリア/ごめんなさい。まだまだ修行です(きっぱり
「むむ、残念じゃの。ま、気長に待つとするさ」
あえなく撃沈。
苦笑いの老夫婦に申し出のお礼を言ってから、リリアは今日の飛び入りゲストに向き直る。
リリア/今日は無理言って連れてきちゃったけど、美味しいって言ってくれて嬉しかった。
???/…リリア、もう気にしない。でも、料理は本当に美味しかった。…ごちそうさま。
恐らく、人にお礼を言うこと自体慣れていないのだろう。お礼の言葉を口にするときはかなり小声でそっぽを向いていた。
リリア/また、どこかで会えるといいね。そうそう、あなたの名前は?
???/…りーすりっと。りーす、でいい。
リリア/りーす、ね♪ 私のことは『リリー』でいいよ。よろしく、りーす。
りーす/う…うん
戸惑いながら、差し出された手を取るりーす。
ここはセビリアの酒場。
いつも航海者で溢れかえっている看板娘ロサリオのいる「酒場」ではない。
その少し先の路地を入ったところにある、名前もない小さな酒場。
航海者が情報を交換し合う酒場とは違うが、
この酒場で、ある運命的な「出会い」がやってくるのは、もう少し先のこと…
---------
と、裏キャラクターの名前が最後の最後で登場^^;
昨日のイスパ会議で本格デビュー(と言っても議長選挙に参加してきただけですがw)
ゆるゆると航海していきますので、よろしくお願いいたします。
リリア/ガーリックの下ごしらえしておいたよ。これぐらいでよかった?
クルル/うわ、相変わらず速いなぁ。ありがたく使わせていただきます。…ねね、リリー、このお魚「当たり」だよ。すっごく美味しそう♪
リリア/ホントだね~。「オマケ」でもらうものじゃないよね。今度魚屋のおじさんにお礼言っておかないと。
クルル/ありゃ。このトマト小さいなぁ…丸のままいっちゃおうかな?
リリア/ふふ。クルルにお任せします♪ あ、オリーブオイル、私も使う。
……
包丁の音に負けないくらい、料理中の二人も賑やかだ。
???/…料理って、もっと黙々とするものだと思ってた。
「美味しくなかったら帰る」と言った少女がカウンターに座ってリリアとクルルの料理の様子を見ている。
リリア/うーん。普通は静かに作るんじゃないかな。『無駄口叩く暇あったら手を動かせ』なんてどこの厨房でも言われてそうだし。
クルル/だね。リリーがそういうタイプじゃなくってよかったよ~。
確かにこの二人は賑やかに料理を作る。
でも、手さばきや段取りにまったく無駄が見当たらない。
???/…武術の演舞を見ているみたい…
少女のつぶやくような声はキッチンには届かない。
そして、初対面の彼女は知らない。リリアが調理の最高位「マイスター」の称号を持っていることを。
リリア/ん? ちゃちゃっと作っちゃうから待っててねっ♪
にこっと笑いかけるリリア。うん、と頷く少女。
別に怪我をしたわけでもなかったし、自分も考え事をしていた。本当におあいこ、だった。
見ず知らずの一行に付いてきてお昼ご飯、それも「試作品」になんて付き合う義理はないし、何度も帰ってしまおうと思った。
でも、メガネをかけた自分と同じくらいの年頃に見える女の子に、『にこっ』と笑いかけられると、どういうわけだか素直に待とうかと思えてしまう。
なんなのよ。わけわかんない。
見ず知らずの人にどうしてこうもフレンドリーなの?
…まあ…きらいじゃないけど。こういう雰囲気。
いつか自分達の店を持つ、という二人の夢を聞いている老マスターは、その『未来の店』に想いを巡らせているのか目を細めて「仕事」を見守り、
料理を作るのが楽しくてたまらない、という二人がキッチンで笑いあい、
賑やかだけど、どこか平和な時間がゆっくりと流れている。
…そして…
リリア/おまたせ~。
クルル/完成ですっ!
純白のテーブルクロスが広げられたテーブルには大皿が二つ。
「ほぉ…彩り鮮やかじゃな。本日のメニューを説明してくれんか」
リリア/んっと、今日は大皿料理2品です。こっちは秋の味覚、栗と豚肉のパエリヤ。珍しい取り合わせだけど、これがホントに美味しいの♪ もう一品はクルル、よろしくっ♪
クルル/オッケー。こちらの料理はスパニッシュ・マッケレル…戻り鰆のアクアパッツアです。新大陸産のトマトと新鮮なチャービルをあわせてみました。緑と赤い色で見た目も綺麗でしょー?
パエリヤのサフランの黄色とアクアパッツアの鮮やかなグリーンとトマトの赤。
昼下がりの食卓は花が咲いたように色づいた。
賑やかに取り分け、食事が始まった。
酒場のマスターと魚の旬について話すクルル。
主の作った食事を黙々と味わうハライ。
パエリヤのおこげも、炊き加減も申し分ない。なにより豚肉のうまみと栗の淡い甘さのみというシンプルさが後を引く。
クルルの用意したアクアパッツァは塩コショウで味付けした魚を焼いてから、他の具材と一緒にひたひたの水で煮込むという、こちらもシンプルなもの。
脂ののった白身魚にトマトの酸味。味付けを極力控えたために素材の味が際立っている。
「美味しくなかったら、帰る」そういっていた少女はこれまた黙々と食を進めていた。
美味しいとも、不味いとも反応がないのでクルルはかなりヒヤヒヤし、美味しくなかったのかなと不安が頭をもたげてしまう。
いたたまれず、リリアを見る。
(ね、ねぇリリー。大丈夫かなぁ?)
(だいじょぶ♪ 心配しないしない)
と、いつもの笑顔。
そして、あらかた食べ終わった頃に少し甘い何かが焼ける香り。
リリア/そろそろ焼きあがるかな~。クルル、お茶よろしく
クルル/…うん
大皿が下げられたテーブルに今度はデザートが登場。
リリア/今日は新大陸からの商船が入ったみたいで『バタタ(サツマイモ)』が手に入ったの。で、こんな焼き菓子を作ってみたんだ
オーブンから取り出したのは、いわゆるスイートポテト。
クルル/お茶はインド土産のダージリンのセカンドフラッシュ。美味しいよ~♪
リリア/甘めに作ったデザートだから、紅茶のお砂糖加減に気をつけてね
???/!
ぱくっと一口食べたときに少女の表情が初めて変った。
ぱくぱくぱく
明らかに、「止まらなくなって」いる。ヒットだ。
リリア/…どうだった?
一気に食べて、お茶を飲んでいる少女に問いかける。
???/…わるくない。美味しかった
素直に感想を漏らす。
リリア/よかった。あ、自己紹介がまだだったね。わたしはリリア。一緒に料理を作っていたのがクルル、荷物を持ってくれていたのがハライだよ
クルル/ふう、美味しくなかったかなって心配してたんだよ~
???/このお店の人?
リリア/ううん、いつもセビリアでキッチンを使わせてもらっているお店だけど、この方達のお店。私達は航海者なの
この店のマスターは、ほっほっほと笑いながら付け加える。
「リリアちゃんとクルルちゃんだったら、いつでもこの店を使ってもらっていいと言ってあるんじゃ。なに、いっそ店を継いでもらっても一向に構わんのだが、のぉ」
「ええ、二人とも考えてくれたかい?」
少しだけ本気の期待を込めて問いかける老夫婦だが…
リリア/ごめんなさい。まだまだ修行です(きっぱり
「むむ、残念じゃの。ま、気長に待つとするさ」
あえなく撃沈。
苦笑いの老夫婦に申し出のお礼を言ってから、リリアは今日の飛び入りゲストに向き直る。
リリア/今日は無理言って連れてきちゃったけど、美味しいって言ってくれて嬉しかった。
???/…リリア、もう気にしない。でも、料理は本当に美味しかった。…ごちそうさま。
恐らく、人にお礼を言うこと自体慣れていないのだろう。お礼の言葉を口にするときはかなり小声でそっぽを向いていた。
リリア/また、どこかで会えるといいね。そうそう、あなたの名前は?
???/…りーすりっと。りーす、でいい。
リリア/りーす、ね♪ 私のことは『リリー』でいいよ。よろしく、りーす。
りーす/う…うん
戸惑いながら、差し出された手を取るりーす。
ここはセビリアの酒場。
いつも航海者で溢れかえっている看板娘ロサリオのいる「酒場」ではない。
その少し先の路地を入ったところにある、名前もない小さな酒場。
航海者が情報を交換し合う酒場とは違うが、
この酒場で、ある運命的な「出会い」がやってくるのは、もう少し先のこと…
---------
と、裏キャラクターの名前が最後の最後で登場^^;
昨日のイスパ会議で本格デビュー(と言っても議長選挙に参加してきただけですがw)
ゆるゆると航海していきますので、よろしくお願いいたします。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます