俺なりの愛だ
~四畳半神話大系~
主人公である「私」が小説のラストシーンで小津に向かって言う言葉。壮絶?な冒険をした結果「私」にとって悪友の小津が何にも変えられない大切な人物だと気づいたのである。
この小説は主人公の大学生活を書いたものだが、第1話から最終話である第4話まで時系列が繋がっているものではなくそれぞれ1年生のあの時あの道を選んでいたらこうなった・・というものである。各話の〆は「私」の問いに小津がへらへら笑って
小津「僕なりの愛ですわい」
私 「そんな汚いもん、いらんわい」
という掛け合いになっている。これは毎回「私」がなんで小津なんかと知り合ってしまったのか・・という想いから発せられている。しかし最終話で「私」は、眠りから覚め住まいである四畳半の扉を開けるとそこには四畳半が広がっているという不可思議な世界に囚われてしまうことになる。扉を開けても窓を開けても壁を壊しても天井をぶち抜いてもそこには四畳半しかない空間の中で80日間も生活していくことになるのだが、ある日ふと気づくのである。よく見ると各四畳半は同じに見えて微妙に違いがある。もしかしたらここは違う選択をした場合の「私」の部屋なのではないだろうかと。そして無限に広がる四畳半の中で確かなものがあった。それはどのような選択をしたとしても必ず小津に出会った痕跡があるということだ。各話の「私」とは違い最終話の「私」は小津の存在の大切さを知ることになる。
最終話で小津は様々な人から反感を買い橋から川に落ちて入院することになる。入院先で見舞いに来た「私」が小津に対して色々世話をしようとするのだが、こんな嫌われ者の自分に何故かまうのか小津が問いただす。すると「私」はにやりと笑い、
私「俺なりの愛だ」
小津「そんな汚いもん、いりません」
と答え物語は終わるのであった。