『カオリの1日』昔書いた言葉遊びのアレンジ。
テーマ?それって食えるのか? . . . 本文を読む
「はい、これバレンタインのお返し」
「えっ」
「僕の勘なんだけどね。多分君ってこういうの好きかなって」
「うわ、高そう…」
「いいのいいの。絶対似合うから。あ、遠慮しないで、ほんの気持ちだし」
「でも困る…」
「いいから付けてみてよ」
「付けてみてって言われても。そういうのはちょっと…」
「えー?せっかく渋谷くんだりまで出かけて買ってきたんだからさ」
「そんなこと言われてもなぁ…」
「わかった。恥 . . . 本文を読む
部屋がだいぶ暖まったようだ。私は毛布を乱暴にはだけると、パソコンの前に座る。そして、いつもように”フリーセル”を起動する。ウィンドウズに最初からついているトランプのゲームだ。
私はこのところフリーセルばかりをやっている。トランプが途中で詰まらないようにつらつらと繋げていく。詰まってしまわないように数手先まで考えながらやっていると時間を経つのを忘れる。気が付いたら数時間立っていることなんてよくあ . . . 本文を読む
やきそばを食べ終えた。普段より水分を多く含んだそれはお世辞にも美味いとは言えず、ただ胃袋にずしりと不愉快な感覚を残しただけだった。なんだか気持ちが悪い。冷蔵庫を開け、ウーロン茶を取り出すと、コップにそそぎ、ぐいと飲んだ。
煙草に火を付ける。吸い込む。吐き出す。吸い込み、吐き出した。何気なく壁に目を向ける。換気することすら億劫になった私の部屋は煙草の煙ですでに本来の白さを失っている。ニコチンの付 . . . 本文を読む
パソコンを起動した。といっても私のパソコンの電源は常に入りっぱなしになっている。私のパソコンは15分放置されると自動的にサスペンドモードに入るようになっている。こうしておけばマウスに触れるだけでディスプレイに光が灯る。逃げ道はいつでも用意しておく、そういうことなのだろう。そんなパソコンはいまや私の日常、と言ってもよかった。今の私に必要なことは私から逃げる、逃げ続けることだ。そう信じている。
3 . . . 本文を読む
この部屋に篭ってからどれくらいの時が経ったのだろう。カレンダーを外してからこの部屋はどれくらい私を守ってきたのだろう。時間の流れすら私をおいてけぼりにしてしまった、そんな風に感じる。煙草をもみ消した。ちりちりと指先が熱い。
不意に何かが私の澱みを掻き回す。常に抑圧されているそれは時折こうして現れる。私は小さく喘ぎ、その何かを再び抑えつけた。何も考えるな何も考えるな何も考えるな。
自己暗示、と . . . 本文を読む
朝6時。
人間たちが目覚め、その命を繋ぐ為に活動を始めるその時間。私の目は冴えている。そうだろう。私は人々が眠る、ちょうどその時に目覚めたのだから。
目覚め。(めざめ)
目覚めること。
覚醒。私はそれが恐ろしい。水底に溜まった泥が少しの衝撃ですべてを己が色に染めてしまう、その様と同じように、目覚めることで私の中に潜む、泥の姿をした悪魔が心を凌辱し、塗りつぶしていく。
煙草に火をつける . . . 本文を読む