少し前、テレビ東京のネット配信で韓国ドラマの「デリバリーマン~幽霊専門タクシー始めました~」を見ていた。
タクシードライバーだったお母さんを事故で亡くした青年が、そのタクシーを引き継いで、
タクシー運転手になるのだけど、なぜか、彼には幽霊が見えて、しかも、その幽霊が乗車していると、
生きている人間は具合が悪くなって、すぐに下りてしまうから、仕事にならない。
結果、記憶喪失の女性刑事の幽霊と一緒に、幽霊専門のタクシーとして仕事をしながら、自分の
お母さんの事故と、その幽霊女性が何者かに殺害されたミステリーを解き明かして
行くという物語だった。
一緒に暮らす唯一の家族であるお祖母さんを案じて懸命に借金を返そうとする青年ヨンミンさんの
家族愛や、幽霊であるジヒョンさんも唯一の肉親のお父さんのことを案じる親子愛が、
なかなかに胸に迫るものがあったドラマだった。
その中でも、私の印象に強く残ったのが、ヨンミンさんのタクシー運転手仲間であるウンスさんの姿だった。
彼女は認知症になってしまったお母さんを助手席に座らせて、タクシー稼業を続けていた。
彼女もお母さんが大切で仕方なく、お母さん連れで仕事をしているが、もちろん、そんな姿に
批判的な声も上がるけれど、彼女は懸命にお母さんを守り、お母さんが何よりも大切と泣き、
タクシードライバー仲間もあたたかく見守っている。
実は私も認知症の母を仕事先に連れて行くことが何度かあって、ウンスさんの気持ちが自分と
重なって、母のことを思い出しながらドラマを見た。
初期のころは、自宅に置いておくことはできたけれど、母が認知症であることは、押し売りの
人たちの格好の餌食。高額なものを売りつけられてしまうことに辟易して、私は母を連れて
仕事先に行くようになったのだ。
もちろん、「私が戻って来るまで、ここにいてね」と何度も約束するのだけれど、母はすぐに
忘れて、車から出てしまい、徘徊してしまうので、短い時間しか置いておけないけれど、
見守ってくれる人はいなかったから、どうしても連れて行くしかなくて、苦労していたことを
思い出す。
ウンスさんは結局、殺人鬼によって、ヨンミンさんのお母さんも手にかけた犯人にお母さんを
殺されてしまうのだけど、真実を知らないウンスさんは、犯人がお母さんを助けてくれようとしたのだと
誤解して、泣きながらお礼を言い、お母さんの葬儀を行うウンスさんの切なさが胸に迫った。
シングル介護はほかに助けがないから、働くことと介護を両立させることが本当に大変だったことを
ウンスさんの姿を通して思い出した。
時間は流れて、母が寝たきりになってから、在宅介護をしていたころと、今は似たような暮らしをしている。
母は何も話すことができなくなってしまい、機能全廃で寝ているだけだったから、そのことが辛かった。
目の前にいて、生きている人と会話ができないのは辛い。
罵詈雑言の嵐のようなことを言われて、本当に母のことが苦手だと思っていたけれど、介護の最中は
「他人の私」を「ああよかった。あなたがいてくれて。あなたは本当にいい人ね」と、認めてくれた。
何だか、それだけで、母との長い長い確執がぽろりと落ちたような気がした。
今はひとりきりで、抗がん剤治療を続けている。
毎日、ひとりきりで過ごしていると、母の介護をしていたころと同じようにだれとも話すことがない。
同じように過ごしていても、介護の日々には母が生きていてくれたこと、母の飼い犬が私を見守っていてくれたこと、
そこには「愛」があったことは間違いない。
ウンスさんのお母さんもヨンミンさんのお母さんも、ジヒョンさん自身のいのちも奪おうとした犯人は冷徹で、
いのちを軽んじていたけれど、その犯人さえも、姉のような存在の女性からは心から愛されて、彼の罪を一身に
背負って自殺してしまう。
タイトルからの印象はちょっとコメディタッチだけれど、愛が詰まった作品だった。
幽霊になった母と会うことができたら、何と声をかけてくれるだろうか。
…また、罵倒されるかな。
それでも、もう一度、母と話をすることができたなら、それは限りなく幸せだと思う。
タクシードライバーだったお母さんを事故で亡くした青年が、そのタクシーを引き継いで、
タクシー運転手になるのだけど、なぜか、彼には幽霊が見えて、しかも、その幽霊が乗車していると、
生きている人間は具合が悪くなって、すぐに下りてしまうから、仕事にならない。
結果、記憶喪失の女性刑事の幽霊と一緒に、幽霊専門のタクシーとして仕事をしながら、自分の
お母さんの事故と、その幽霊女性が何者かに殺害されたミステリーを解き明かして
行くという物語だった。
一緒に暮らす唯一の家族であるお祖母さんを案じて懸命に借金を返そうとする青年ヨンミンさんの
家族愛や、幽霊であるジヒョンさんも唯一の肉親のお父さんのことを案じる親子愛が、
なかなかに胸に迫るものがあったドラマだった。
その中でも、私の印象に強く残ったのが、ヨンミンさんのタクシー運転手仲間であるウンスさんの姿だった。
彼女は認知症になってしまったお母さんを助手席に座らせて、タクシー稼業を続けていた。
彼女もお母さんが大切で仕方なく、お母さん連れで仕事をしているが、もちろん、そんな姿に
批判的な声も上がるけれど、彼女は懸命にお母さんを守り、お母さんが何よりも大切と泣き、
タクシードライバー仲間もあたたかく見守っている。
実は私も認知症の母を仕事先に連れて行くことが何度かあって、ウンスさんの気持ちが自分と
重なって、母のことを思い出しながらドラマを見た。
初期のころは、自宅に置いておくことはできたけれど、母が認知症であることは、押し売りの
人たちの格好の餌食。高額なものを売りつけられてしまうことに辟易して、私は母を連れて
仕事先に行くようになったのだ。
もちろん、「私が戻って来るまで、ここにいてね」と何度も約束するのだけれど、母はすぐに
忘れて、車から出てしまい、徘徊してしまうので、短い時間しか置いておけないけれど、
見守ってくれる人はいなかったから、どうしても連れて行くしかなくて、苦労していたことを
思い出す。
ウンスさんは結局、殺人鬼によって、ヨンミンさんのお母さんも手にかけた犯人にお母さんを
殺されてしまうのだけど、真実を知らないウンスさんは、犯人がお母さんを助けてくれようとしたのだと
誤解して、泣きながらお礼を言い、お母さんの葬儀を行うウンスさんの切なさが胸に迫った。
シングル介護はほかに助けがないから、働くことと介護を両立させることが本当に大変だったことを
ウンスさんの姿を通して思い出した。
時間は流れて、母が寝たきりになってから、在宅介護をしていたころと、今は似たような暮らしをしている。
母は何も話すことができなくなってしまい、機能全廃で寝ているだけだったから、そのことが辛かった。
目の前にいて、生きている人と会話ができないのは辛い。
罵詈雑言の嵐のようなことを言われて、本当に母のことが苦手だと思っていたけれど、介護の最中は
「他人の私」を「ああよかった。あなたがいてくれて。あなたは本当にいい人ね」と、認めてくれた。
何だか、それだけで、母との長い長い確執がぽろりと落ちたような気がした。
今はひとりきりで、抗がん剤治療を続けている。
毎日、ひとりきりで過ごしていると、母の介護をしていたころと同じようにだれとも話すことがない。
同じように過ごしていても、介護の日々には母が生きていてくれたこと、母の飼い犬が私を見守っていてくれたこと、
そこには「愛」があったことは間違いない。
ウンスさんのお母さんもヨンミンさんのお母さんも、ジヒョンさん自身のいのちも奪おうとした犯人は冷徹で、
いのちを軽んじていたけれど、その犯人さえも、姉のような存在の女性からは心から愛されて、彼の罪を一身に
背負って自殺してしまう。
タイトルからの印象はちょっとコメディタッチだけれど、愛が詰まった作品だった。
幽霊になった母と会うことができたら、何と声をかけてくれるだろうか。
…また、罵倒されるかな。
それでも、もう一度、母と話をすることができたなら、それは限りなく幸せだと思う。