世田谷美術館の2階展示室(収蔵品展)で開催(2025年4月19日~7月13日)の「世田谷でインド」という展覧会にて、私の極めて初期の仕事が少し展示されています。そのことについて触れておこうと思います。
この展覧会の会場の順路終わりに、コーナー展示というのがされます。今回の内容は「田窪恭治のイヤープレート2009ー2018」です。
田窪恭治さんはフランスのノルマンディ地方の古い教会再生プロジェクト、金刀比羅宮の仕事などで知られていますが、それ以前には金箔を貼ったオブジェなどの作品を制作していました。世田谷美術館が出来た頃は、そうした仕事から建築物に関わる表現へと変化していく始まりのようでした。
そうした折、千葉県行徳のアトリエ(元 古い木造の漁師の仕事場)からの引っ越し(江戸川区内へ)もあり、その建物のファサードを記念する作品がつくられました。この作品は「日常=時間の層へ」と名付けられたのですが、その制作は世田谷美術館の公開制作で行われたのです。この作品制作は、後の教会プロジェクトへの試行でもあったでしょう。
私は行徳のアトリエの正面を撮影し、それは引きがなくて広角レンズでも一枚では収まらなかったので分割して2枚撮影し、それを繋いて田窪さんに渡しました。それがこの作品のスケッチの元となっています。
その後、世田谷美術館の公開制作では、その制作日には撮影に出かけ、その制作工程を撮影しては現像・プリントし(当時はフィルム撮影です)、翌日には美術館創作室の壁面にプリントを掲示して、そのプロセスを分かりやすくしました。
それは、私としてもこれから行いたいと考えていた記録撮影の仕事のテストケースでもあったのです。そうして作品は完成し、10枚セットのバライタ印画紙を手製本した写真集?を5冊作り、その一部が世田谷美術館にあります。今回の展示では、その写真集?と併せて当時の田窪さんの公開制作での様子が分かるように画像を用意しました(これはフィルムからスキャニングしたものです)。
私の初期の仕事が垣間見られる機会でもあります。ご覧いただければ幸いです。