旅の途中。~乳がん編~

H17年34歳で体験した乳がんの記録。

乳腺クリニック受診。

2007年07月24日 | Weblog
しこり発見から1ヵ月後の9月の末、やっとクリニックを受診する時間がとれた私は、この日を逃したらまたしばらく行けないと、気合を入れてクリニックに向かいました。
気合が入りすぎて興奮していたのか、もしもがんだったらどうしようという不安からか、前の晩はほとんど眠れませんでした。

クリニックに着ついたのはちょうど9時頃。
玄関にある靴の多さに驚き、待合室に溢れる患者さんの数にさらに驚きました。

うわ!なんじゃこりゃ!!
こりゃあ相当待たされるな…。

予想外の混雑振りに一気にテンションが下がりましたが、患者さんが多いということは、それだけいい病院ってことなんだからと自分に言い聞かせました。

問診票に記入して保険証と一緒に受付に出し、1ヶ所だけ空いていたピンク色のソファーにちょこんと腰掛けました。
テレビを見ても雑誌を読んでも落ち着かず、キョロキョロと周りを見渡しました。
年配の人が多く、私と同年代と思われる人はほとんどいませんでした。
この中の何人の人ががんなんだろう…。
そんなことを考えていました。

「この病院の評判を聞いて初めて来てみたんですけどね、こんなに混んでるとは思わなかったわ。いやぁ、びっくりした」
「今日は院長先生の外来日だから特に混んでるんですよ」
周りの人たちの会話を耳をダンボにして聞いていました。

地方から来ている人もいるようで、
「チェックアウトが12時だから間に合うと思って、ホテルの部屋そのままにしてきたのよ。それまでに終わるかしら…」
そんな声も…
ホテルってあぁた…。
一体どこから来たの??
って感じでしたが、
この病院に来て正解だったみたい。
患者さんたちの会話から私はそう感じました。

いい加減待ちくたびれてきた頃、ようやく名前を呼ばれました。
「診察の前にマンモグラフィーというお乳のレントゲン撮りますから」
と、看護師さんにレントゲン室に案内されました。
マンモグラフィーのことはインターネットで調べて知っていました。
触っても解らないようなごく小さなしこりや、しこりを作らないタイプの乳がんも発見できるという素晴らしいレントゲン。
でも、かなり痛いらしい…。(ーー;)

上半身裸になって装置に向かって立つと、女性の技師さんが「失礼します」と言って私のささやかな胸を持ち上げ、板の上に乗せました。
緊張のあまり身体が堅くなり、腰がひけてしまってなかなかうまく収まらず、かなりてこずらせてしまいました。^^;
板でギューっと挟んで潰されて、あまりの痛さに思わず体に力が入ってしまい、何度も力を抜くよう言われたのですが、もはやどうやったら力が抜けるのかも分からない状態に…。
堅く目を閉じ、撮影が終わるまでひたすら我慢。
縦と横、左右2枚ずつ写して終了。

その後さらに待合室で待たされて、診察室に呼ばれたのは11時頃でした。
看護師さんに、
「こちらで服を脱いで、先生に呼ばれたら中にお入りください」
そう言われ、診察室の中のカーテンで仕切られた脱衣所で服を脱ぎ、肩からバスタオルを羽織って待機。
すぐに名前を呼ばれました。

そこには、“外科医”という感じの、潔癖そうな先生。
そしてちょっといいオトコ。(笑)
ネームプレートには“外科医長”の文字。
どうせなら評判よさげな院長先生がよかったけど、まぁいっか。。。
な~んて思っていたけれど、実は後に“あぁ、この先生でよかった!”と、何度も痛感することになるのです。

先生は先に写した私のマンモグラフィーのレントゲン写真を食い入るようにじっと見ていました。
それから私の方を向き、いつ頃しこりに気づいたのか、大きくなってきたような感じはあるかなど、穏やかな口調で尋ねました。
私は1ヶ月前にしこりに気づき、大きくなってきているような気がすると答えました。
のどの触診の後、診察台の上に仰向けに寝かされて触診。
おっぱいだけじゃなく、鎖骨から脇の下まで念入りに。
しこりがある右側だけじゃなく、左側も。
彼氏でもない男の人に胸を触られるのは初めてで、少し恥ずかしい気がしました。

「確かに何かありますね」
そう言って先生は、私の胸にひんやりしたゼリーみたいなものを搾り出し、機械でぐりぐり。
触診同様、鎖骨から脇の下まで念入りに。
真剣な表情でモニターを見つめ、ところどころで手を止めて画像をプリントアウトしていました。

「これがしこりです。大きさは、1.3cmの0.8cm」
モニターにはっきりと黒いものが写っていました。
「どっちかな~。乳腺症っぽいけどな~。分かんないな~」
先生は難しい顔でぶつぶつ呟いていました。
えっ?分かんない??
大丈夫なの?この先生…。(ーー;)
その時はそう思いましたが、今思えば先生の「分かんない」は、“乳腺症かがんかどっちか判断がつかない”ということで、この時点で怪しかったということです。

「細胞を採って調べてみましょう。こうゆうしこりは乳腺症の場合が多いんですよ。若い方に多いんですけど、炎症起こして中に水がたまってるんです。乳腺症だと針を刺した時に水がひけて、しこりが無くなることもあるんですよ」
病院に来る前にネットでいろいろと調べ、乳がんの検査方法も把握していました。
その通りに進んでいる…。
私の場合、きっとそこまで(細胞診まで)しなくても大丈夫だろうと勝手に考えていたのに。
私の胸にいや~な予感が広がりました。

「ちょっとチクッとしますよ」 
先生はそう言って、モニターを見ながらしこりに針を刺し、カチカチカチカチなにやら吸い取っていました。
マンモグラフィーの痛さに比べたら、なんてことありませんでした。
すぐに済むのかと思いきや、結構時間がかかりました。
きちんと細胞が採れないと検査にならないそうです。

針を刺しても残念ながらモニターのしこりは小さくならず、
「う~ん…」
と唸る先生。
「あまり水はひけませんでした」
先生は表情を曇らせて、残念そうにそう言い、
「検査結果は明後日の金曜日に分かりますから、12時から1時の間にお電話ください」
と。
「えっ?電話でいいんですか?」
私は驚いて聞き返しました。
また何時間も待たなくていいけれど…。

先生は真っ直ぐに私の目を見て言いました。
「はい。結果が良ければそれでいいんですけど、もしも良くなければ、良くないとうのは乳がんということですが(先生はこの時初めて乳がんという言葉を口にしました)部分麻酔をして、日帰りの手術でしこりを取って詳しく調べます。その説明もあるので、土曜日にご家族の方と一緒に来てください」
思いがけない展開に、言葉もありませんでした。

私、乳がんかもしれないの??
安心するためにここにきたのに…。

そんな思いと共に、
もしもがんだったら今の状態から解放される。
仕事を辞めるのに、こんなに絶好の言い訳はないじゃない。

そんなヨコシマな思いもありました。