ときどき
日比谷シアタークリエにて本日まで上演された音楽劇『ライムライト』、その東京公演千穐楽を娘と共に観ました。
シアタークリエ『音楽劇 ライムライト』
石丸幹二さん主演のこの舞台、原作はもちろんチャールズ・チャップリンの名作映画『ライムライト』です。2015年、初の舞台化作品として世界初演され、2019年に再演、そして今年は三演目となります。
石丸さんはじめ、年長組の顔ぶれは三公演とも変わらず、若いテリーとネヴィルは代替わりするという方法で上演されてきましたが、今回そのやり方が最も効を奏し、バランスも良く円熟の域に達していたと思います。正直言って初演時はあまりピンと来ない部分もあったのですが、今回は心から感動しました。
初演時の石丸カルヴェロは、欲も業も十分持ち合わせる壮年の男性でしたが、今回は「老芸人」の悲哀も優しさも、そしてそれでも抱え続ける夢も、良い意味でリアルに胸に迫ってきました。自分を超えてゆくテリーへの想いも、アーティストとしての嫉妬より父性がまさっていたと思います。
対するテリーも、初演時はカルヴェロの「夢の女」——諦めきれない夢の象徴のような存在でしたが、朝月希和さんのテリーはリアルに一人の女性でした。そして、本当はネヴィルが好きなのにカルヴェロへの恩義や尊敬を愛と勘違いしているのでも、一時の気の迷いでもなく、最初から最後までカルヴェロを愛し続けるテリーでした。そこが実に良かったです。
今回はカルヴェロと吉野圭吾さんが演じ続けたポスタント氏の長年の友情にも泣けました。植本純米さんのボダリングも保坂知寿さんのオルソップ夫人も絶好調で、年長組が同じ顔ぶれで続けてきた良さを感じます。
太田基裕さんのネヴィルは、石丸さんと植本さんが語り合ったラジオ番組で「オタクっぽい」「挙動不審」などと言われていましたが、そういう若さ未熟さ、それと表裏の純粋さが、年長組との良い対照をなして、これまた絶妙でした。
そしてカルヴェロが最後に歌う「君は僕の歌〜You are the Song」はしみじみ良い曲、良い歌詞だなぁ……と、再々演にして初めてその素晴らしさに涙しました。遅すぎ鈍すぎですね。
ともあれ、素晴らしい舞台をありがとうございました。千穐楽のみの観劇となりましたが、久しぶりに観たのがこの作品で良かったです。皆さんがお元気でいる限り、末長く演じ続けて欲しい作品でもあります。
本日のその他の出来事については別にエントリーを立てます。
