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ううう、ネタも時間もない……と言う訳で、突然ですが、以前から書いてあったこのサミュエル・L・ジャクソン主演映画のレビューを。でも、カテゴリはここ。
クリスチャン・ベイルの新作『3:10 To Yuma』や『I'm Not There』情報は、各クリスチャン・ファンサイト様でご確認下さい(すみません……)。
さて、出演作を観るたび、その天才ぶりに驚かされてばかりのクリスチャン・ベイルですが、この映画はどうかと言うと、別の意味で驚くこと請け合い。そもそも作品の内容が……

いえ、つまらない訳ではなく、何となく観ている分には十分楽しめます。
ストーリイ:NY市警の凄腕刑事ジョン・シャフト(サミュエル・L・ジャクソン)は、その夜も黒人青年撲殺事件の捜査に当たっていた。被害者のガールフレンド(白人女性)の証言から、その直前に人種差別的言動で彼と諍いのあった白人青年ウォルター(クリスチャン・ベイル)が加害者として浮上するが、実は不動産王の御曹司だったこの男、親の積んだ保釈金で釈放され、決定的な目撃証言も得られぬまま、裁判途中で海外に逃亡する。
2年後、ウォルターは自家用ジェットでノコノコとNYに舞い戻ったところを、シャフトに再逮捕されるが、またも父親の金で保釈となる。
怒ったシャフトはクビを覚悟で、あの夜の事件を目撃していたはずの女性(トニ・コレット)の行方を単独で追う。
一方ウォルターも、留置所で知り合った麻薬王ピープルス(ジェフリー・ライト)の助けなども借りて、彼女を探していた──
という訳で、ストーリイ運びはなかなか軽快で「クール」を前面に出していますが、現代の話のはずなのに、なぜか非常に'70年代的雰囲気が横溢しています。
シャフトの暴走や銃撃ちまくり、敵殺しまくりなところなども、その時代の刑事ものみたいな感じ。それも映画と言うよりテレビ──日本でも人気だったアメリカ製のいろんな刑事ドラマを思い出したりして、何だか懐かしかったです。ああいう「汚いニューヨーク」を観るのも久しぶりで、そういうところも懐かしい感じでした。
実は '70年代の人気作『黒いジャガー/シャフト旋風』の新装版で、オリジナルのシャフト役リチャード・ラウンドトゥリーが、私立探偵業の「叔父さん」として顔を見せるのもミソとされていますが、凄腕の黒人刑事が悪い白人どもをやっつけるという図式自体、既に古くなっている気がします。
それに何と言うか、ポスト 9.11 の時代にあっては、こういう人種対立自体を「娯楽化」するような映画は、もう作れないんじゃないかとも思いますね。
さて、クリスチャン・ベイルですが……
設定でもお判りの通り、すンげーヤなヤツです!
同じ金持ちボンでもブルース坊っちゃまとは大違い。初登場シーンから、仲間の前でいいカッコしてみたいだけの、レイシストと呼ぶにも底の浅い、どうしようもないヤツだというのが伝わって来て、本気で腹立ちます。
でも、この薄っぺらな上にキレ易いヤツを、まさに「そういう人間」としてきっちり演じられるのは、それはそれですごいことなのかも。こう思ってしまうのは、私の目に既に「好き」フィルターがかかっているからでしょうか?
お話の後半になって突然父親に反発(もしやマザコン?)、よせばいいのに、自分の手で何とかしちゃるわい!と決意してからの、どんどんドツボにはまるトホホぶりやダメダメ感も、なんだか愛しくなってまいります。
この頃の彼の出演作と言うと、一方に『アメリカン・サイコ』、もう一方に『ジーザス』というまさに両極端の役があり、そしてこのトホホな小悪党が……って、変幻自在すぎますよ。
それでも、ベイトマンとイエス様はどちらも或る意味寓話的な話だし、演技としては寧ろ「わかり易い」部類だと思いますが、このウォルターと、これより少し前の『ベルベット・ゴールドマイン』のアーサーが同じ人かと思うと、くらくらします。
どんな役をやっても、演技を「演技」と意識させないところはさすがだと思いますが。
あと、この映画に関しては、トニ・コレットがすごく良かった。それほど多くはない出番で、彼女の感じた恐怖や心の揺れがちゃんとリアルに表現されているのはさすがです。
特典インタビューを観たら、ベイルがこの映画に出演したきっかけは、彼女のところに送られて来たスクリプトを見せてもらって、読み合わせにつきあったことだったそうです。もしかして『ベルベット』撮影中のことだったんでしょうか?