まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

割烹旅館臨水 松と月

2021-06-23 23:47:24 | 建物・まちなみ
高知 割烹旅館臨水の続き。


1階の広間は食事用の部屋として使われており、「松」と「月」の2部屋がある。
まずは私たちが食事を頂いた松の間から・・・その名の通り、松をモチーフにした模様が見られる。


床柱は松材だろう。


そして廊下側に美しいシルエットを映し出していたガラス障子の窓があるのもこの部屋だ。


部屋内から見ると組子の細工もよくわかる。ひらひらと飛んでいるコウモリのかわいいこと!ちゃんと桟にはめ込んである。


もう一方の窓は組子の外側に竹を組み合わせたもの。


そして、この部屋の前の廊下には石で組まれた池があったが、その池は何と部屋の床下にまで続いていたのだ!!
敷物をめくると、ガラス板(アクリル板?)の下に岩が見えた。今は水は張られていなかったが、かつては床下にまで
通じた池に泳ぐ鯉などを眺めながら宴会を楽しんだのだろうな!何という風情・・・これが高知のお座敷文化か!




ここで「まるで夕食のような贅沢朝食」を頂いた。地の食材がふんだんで、さすが鰹のたたきは分厚くて味が濃厚、
塩で食べるのが最高においしい!


そして奥にある月の間。こちらもまた凝った意匠が満載!


2つの部屋からなり、控えの間っぽい手前の部屋は「竹の間」さながらに随所に竹が使われ、地袋の戸にも
笹の絵が描かれている。


床框には四角い四方竹が。




こちらの欄間の障子の桟は星のように見えてかわいいな~


二間の間の欄間は「千羽鶴の欄間」と呼ばれ、分厚い板に鶴の群れが両面から彫られている。


鶴がうじゃうじゃ!!


そして奥の方の部屋の床の間が「月の間」の名のゆえんである。
琵琶床のような形で2畳分張り出していて、その背景には老松の絵が描かれている。そこにぽつんと照らし出された
赤い丸が月なのだ。どこから照射されているのかよくわからないのだが、なんだか火の玉のようで不思議。。。


そしてこれが何と、動くのだ!!左端にあった光の玉は眺めている間にじりじりと位置を変え、右端へ。
えぇ~~っ、なんという面白い仕掛け!昭和23年、建物が建った当初に造られたからくりだといい、三日月にも
変わるらしい。これもまた宴会の場を盛り上げたことだろうな!
どうなってるんだろうと興味深いが、粋な演出の種明かしは野暮なのでしくみを詳しく聞くのはやめておく(笑)。


そして横には書院もついている。書院の欄間は厚い板に松の木が彫られている。
障子の方に飛んでいる鳥はつばめだろうか。ぽっちゃりしててつばめっぽくないな、ひばりかな?


この書院と広縁との間に用途不明なスペースが挟まっている。天井もちゃんと独立していて、こんな折り上げ天井に
なっているのだ。窓側なのだから配膳スペースではないだろうし、いったい何のための空間だろう。


不思議な間取り、面白い意匠、それが近代和風の木造旅館の面白いところだ。


月の間からさらに廊下を奥へ進んで行くとトイレやお風呂などがある。こちらの手洗いは自然石をザクザクと
組んだ、ミニチュアの岩風呂のようなシンク。袖壁にひょうたん型の透かし窓、正面には組子の格子入りの
変形窓に装飾のひさしが架かっている。お座敷の世界観がここまで続いている。


こちらはトイレの手洗い場。かわいいグリーンの豆タイルがシンクの内側と全面の壁にも立上げて貼られている。


自然のままの曲がった形の木や竹を使った数寄屋風の意匠と、工業製品であり短小軽薄な豆タイルは全く異質で
ミスマッチと思いきや、意外となじむのだ。数寄屋は懐が深い。


「御手洗」と書かれたガラスドアの奥にあるトイレはまたモザイクタイル貼りの壁だった。






そしてこちらがお風呂の入口。石畳の廊下を通り、階段を上ると脱衣所にたどり着く。ここも十分迷路宿だ(笑)






お風呂へはまた階段を数段下りて・・・浴槽はもちろん床や壁にも石が貼りつめられていた。
床には吉野川の青石が使われている。中央構造線が四国を横断するように走っており、それに沿った
三波川変成帯では青石を産出するのだ。


そしてこちら側の壁は・・・どひゃ~~!子供ぐらいの大きさの石が天井近くまで積み上げられている!!
ほの暗い灯りの中で湯気で湿った石が鈍くてかっている。まるで身を乗り出しているような石たち・・・
すごい存在感で、視線を感じる(笑)。また、古い木造船の虫食い板を転用して壁に使ってあったりするが、
穴がいっぱい空いていて・・・ちょっと苦手かも(汗)

ちなみにお風呂はもう1ヶ所あって、落ち着いて体を洗うのはそちらの方がいいかもしれない(笑)

あぁ、もうあっちもこっちも、圧巻の意匠に埋め尽くされた臨水。丸ごと堪能した!!やはり、泊まって食事もして
お風呂も入って、ゆっくり滞在するのがいい。
ロビーの壁に肖像画が飾られていた初代の女将はとてもしっかりした方で、毅然とした態度で経営を切り盛りされたとか。
老舗旅館でも行き詰まり破綻するところも多い中現代まで続いているのは、長年地元とともにありしっかり根付いて
いるからだろうな。本当に貴重なことだ。コロナ禍も何とか乗り切ってこれからも長く続けてほしいなぁ。
皆さんどんどん使ってあげて下さ~い!

割烹旅館臨水のサイト

続く

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