まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

北海道開拓の村 青山家漁家住宅

2020-05-28 23:29:03 | 建物・まちなみ
2019年10月の北海道開拓の村の続き。

漁村エリアへ突入。


ここでは海辺をイメージした池がつくられていて、漁家の立地が再現されている。水上に張り出した土谷家の「はねだし」。
この建物は漁具や漁獲物、加工品などを収納しておく単体の蔵だが、以前見た江差の廻船問屋の横山家や仲買商の田中家では
家の最奥の海に面したところがはねだしになっていた。
江差ではねだしが海辺にひしめくように建っていたニシン漁最盛期の写真も展示されていたな。


そしてこちらが青山家漁家住宅。青山家は山形県出身で、小樽沿岸でニシン建網を経営した漁家。
建網とは、塀のように海の中に定置網を建て、囲われた網の中へ魚を追い込んで獲る漁法。
ここには母屋のほか、文庫倉、石倉、板倉、米倉、網倉、外便所、の附属屋を併せ7棟が移築展示されている。
海を模した池の浜から少し上がった平地に、海岸線に対して垂直方向に一直線に並べて建てられているのは創建当時の配置を
再現したものといい、建物の前に作業場や干し場となる広い庭が取られている。


母屋に入ろう。大きな寄棟屋根の建物で、てっぺんに望楼(?)が載っている。窓の上から軒裏までが漆喰で塗り込めてある。
入口が二つ並んでおり、右側は反った千鳥破風の入母屋型の入口ひさし、左側はむくりのついた切妻型の入口ひさし。
左側がヤン衆(漁夫)たちが出入りする番屋の入口、右側が親方の住まいの玄関である。1919(大正8)年築。


番屋の中は・・・圧巻!!この複雑なトラスの小屋組!キングポストトラスをタテヨコナナメに組み合わせたような構造。
一体どこがどこを支えているのか??
外から見るとつし2階があるように見えるが、1階の天井はなく吹き抜けである。ただし壁沿いにぐるりと
ロフトのような中二階が作られていてはしごがかかっている。


ニシン漁の季節は中央の板の間でヤン衆が食事をし、周囲の畳敷きのスペース(ロフトも?)で寝泊りしたのだ。


番屋のつくりは余市の福原漁場で見たのとほぼ同じだな。土間の通路が通っていて靴を脱がずに食事をすることができる。




こちらは親方の住まい。帳場や茶の間や座敷がある。アザラシの皮の敷物が敷かれているのが
北海道ならでは。


座敷も天井が高く、深緑色の壁、仏壇、床脇、床の間などいずれもなかなか立派。。




トイレや手洗い場は板張りでタイルはなかったが(笑)


トイレ前の廊下の天井を見上げると格天井で、格間には丸い花模様が描かれていた。きれい!
鮮やかな色は改修で描き直したと思われるが、元から描かれていたのに違いない。


そしてこちらの「廊下」はニシンを一時収蔵しておくための施設。建物は青山家のものではなく再現である。
ニシンの搬入や周辺で行う加工作業に便利なように廊下の壁の板は取り外せる「落とし板構造」となっている。
この中には現在、大きな木造の「枠船」が2艘納められていた。大量に獲ったニシンは、枠船に吊り下げた枠網に入れて
沿岸まで運ばれたという。この枠船は1911(明治44)年と1924(大正13)年に建造され、小樽付近で使われていたもの。


各蔵もさらっと見学。庭にはかまどなども再現され、大規模なニシン漁家の暮らしを思い描くことができる。
しかしここにある建物は作業場がメインの「現場」であり、その繁栄ぶりを理解するにはここを見るだけでは不十分。
山形県に青山家の本邸、小樽に別邸が残っているので是非見に行かねばならないな!


こちら、1908(明治41)年から数年にわたって建築された北海中学校の本館部分。


なんておしゃれな校舎!


軒まわりに並ぶ持ち送りとミニペディメントがかわいすぎる!


浦河公会会堂。1894(明治27)年に建てられた、2代目の建物。


公会会堂とは要は教会だな!中は意外なかまぼこ型ドーム天井。


渡辺商店は、明治30年代に砂金掘りで賑わった中頓別のまちに建てられた雑貨店。1916(大正5)年の建物であり、漆喰仕上げの土蔵造りは北海道では珍しいとか。


面白いのは、店舗内にトロッコのレールが敷かれているのだが、レールが木製だ!トロッコの車輪も木製だったのかな。


札幌軟石を積み上げたこの蔵は、札幌拓殖倉庫。1907(明治40)年に札幌駅北側で線路に隣接して建てられ、
農産物倉庫として使われた。


開拓使のシンボル、星マークがたまらなくカッコいいなぁ!!


あぁ、開拓の村はまだこの奥に農村エリアや山村エリアがあり、じっくり見て行くなら丸1日かけても全然足りない。
しかし2時間半ほど見てきたがやはりちょっと疲れてきたので(苦笑)、また次の機会に残しておくことにしよう。


札幌近郊にも関わらず豊かな自然を感じられる北海道開拓の村。雄大な北海道の広さを十分に生かしてゆったり配置され
ロケーションまで再現された建物たち。いずれも必要以上にピカピカにされることもなく、元々とほぼ変わらない
自然な姿で佇んでおり、ここで余生を過ごしている、という言葉がしっくりくる。とても気に入った!
チャラチャラした雰囲気や媚びた感じはいっさいなく、商業施設はエントランスの建物の中だけと潔い。
ここは1回来て片っ端からローラー的に見て行くというよりも、何度も来て季節ごとの風景の中で自分のお気に入りの
建物を楽しんだり、気の赴くままにふらっと入った建物をじっくり見たり、そういう楽しみ方がいい。また来よう。



前にも行った竹山高原ホテルで4日間の旅の疲れを流し、食べ損ねたランチを兼ねて千歳のお気に入りのお寿司屋で
プチ贅沢な夕食を楽しんでから新千歳空港へ戻ったのだった。あぁ、楽しかった!

おわり。

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