読書天国~ぷみのゆるゆる文学生活

この一冊が運命を変えるような、そんな本を求めて目下奮闘中。

姉飼

2005-01-29 16:01:29 | 小説(いま)
「姉飼」(遠藤徹 角川書店)を読む。

第10回日本ホラー大賞受賞作。
乱歩の猟奇的作風、谷崎の耽美的雰囲気を、はしばしに散りばめながらも、斬新でしかもどこか懐かしいような、不思議な小説でした。
単純に読めば、不快、不気味、という声もあがるかもしれない。
でも、異世界な題材を扱いながらも、適度にリアルで、適度に切り離している、そのバランス具合は相当な力量だと思います。
「油祭り」だとか「蚊吸い豚」だとかの、ファンタジーな素材群が、まさに作品の要となる、「姉を飼う」という行為を、不自然でなくしているし。
「シブヤ」や「エビス」という地名を提示しながらも、不可思議な社会とそこに息づく人々を描いているところは、民俗学的な味わいすらあります。

残虐的に殺されるから怖い、とか、正体不明の化物が襲ってくるから怖い、とかでなく、人間の業に潜む、正体不明な残虐性を、昔話のような背景で描いた作品です。
こういうホラーがあってもいいと思う。