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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

生活保護申請の実態

 生活保護制度とは憲法第25条(生存権)に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに自立を助長するというものです。国で定める最低生活費よりも収入が少ない場合、その不足している分を基本的には誰でも保護費として受給することができます。

 POSSEでは今年2月から若者の生活支援のための『総合相談窓口』を設けて、今までの各種労働相談に加え、生活保護の相談も受け付けています。スタッフも4月に行なわれた派遣村などにボランティアとして参加して、申請の同行などを行ってきました。前々回のブログで紹介した竹信さんの著書にもあったのですが、今では20代で派遣や契約社員のような非正規労働者として働いている人の割合は、20代の労働人口の約50%に達しようとしています。それは若い世代の約半数が不安定な働き方をしていると同時に、各種社会保障・セーフティーネットから排除されていることを意味しています。そんな中で、最近では生活保護を若者が受けるということは、可能性として十分にありえることになってきました。

 しかし、最後のセーフティーネットといわれている生活保護制度をめぐって、数多くの問題を、実際に申請同行をする過程で目の当たりにしました。例えば、役所が生活保護申請者を窓口で追い返すということで有名な『水際作戦』や、劣悪な居住環境にも関わらず破格の料金で生活保護費の大部分を取っていく『悪徳施設』の問題。その後、アパートに転宅するにあたって、敷金・礼金・仲介手数料が0円というのを売りにしているが、滞納時の追い出し屋などの被害が問題となっている『ゼロゼロ物件』や格安で安心とうたってはいるものの、脅迫や嫌がらせをしてくる『悪徳保証会社』の問題などなど非常に多くの問題があります。これらはまさに『貧困ビジネス』というにふさわしく、困った人を食い物にする市場が出来上がっていることを実感しました。

 実際に申請同行をする中で知った施設の問題を紹介します。その施設では、入居者の生活保護費が月に約13万円ほどなのですが、約10万円は施設費として取られてしまいます。その施設はというと5人の相部屋で仕切りは天上まで届かないベニヤ板やカーテンだけ、地下2階で空調設備もなく布団はカビが生え、ダニもひどい。シャワーは週3日だけで時間制限がありほとんど入れない。食事代は月に3万円ということになっていますが、出てくるのは朝・夕2食だけで、毎回ご飯1杯と粗末なおかずが1品だけ。しまいには施設長から外出や外部と連絡を取らないよう注意され、1日の行動をすべてノートに書かされます。このような施設が約10万円かかるということに納得できるでしょうか。そして何より、これを人間的な生活といえるのでしょうか。

 これらの経験から感じることは、申請者本人一人で生活保護を申請し、社会に復帰していく道のりは非常に険しいということです。施設や物件、保証会社などの『貧困ビジネス』に対しては予備知識や現状を知っている人がサポートしなければ、役所の窓口で追い返され、だまされてしまうことがままあります。苦労して申請をしても、息つく間もなく、次から次へと越えなければならない壁があります。本来このような貧困ビジネスにだまされないようにサポートを行ない、それらに規制をかけていくのは誰の役目なのでしょうか?そう考えたときに最近の朝日新聞の記事を目にしました。

http://www.asahi.com/national/update/0507/OSK200905070079.html

 ケースワーカーとは生活保護を受けている人に対して、様々な働きかけや支援をすることで自立を支援する役所の職員のことです。本来は彼ら、そして国の役目なのではないでしょうか。その大事な役目を負ったケースワーカーが、現在全く足りていないためにサポートが行き届いていない状況だということです。実際には信じがたいことですが、例に出した施設をAさんに紹介したのは担当のケースワーカーでした。このような状況では上記のような被害に遭う人がどんどん増加してしまうし、生活保護制度の本来の目的である社会復帰、自立支援も難しくなってしまうことは明らかです。なぜこのような事態が起こってしまうのでしょうか。それは、もちろん昨今の不況で生活保護の申請者が増え業務量が増えたということもあるのですが、それ以上に以前から続く人件費削減、自治体の財政負担増加を進めた国の政策の影響が強いといえます。 

 このような状況を打開するためには、生活保護制度の運用実態の調査をし、制度改善に向けた働きかけをしていくことが必要だと思います。個別の生活保護相談を受け、サポートしていくと同時に、このような不健全な運用がなされている最後のセーフティーネット・生活保護制度を改善するための社会的取り組みを、POSSEでは行なっていきたいと思います。

コメント一覧(10/1 コメント投稿終了予定)

K
今まさに
生活保護の事で困り果てています。
強気で申請!!と言われても、様々なダメな理由を数時間…

ついでにお説教までされて怒られ帰宅

付き添いで申請に行ってくれるNPO法人などがあるとは聞きましたが、どう探せば良いのやら………

20代女子ですが、まもなくネットカフェ難民目前です
Unknown
セーフティーネットの最後の砦とも言われる生活保護、水際作戦はきいたことがありましたが、取得してから待ち受けてる状況もこんなに惨憺たるものだと知り、驚きました。

こういう事実はもっと世に知らしめていくべきだと思います。
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