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最近の相談事例分析:新卒の価値低下


今回は代表・今野晴貴のブログより新卒の価値低下について述べた記事を転載します。今月の労働相談事例を分析したものになっています。


***以下、今野ブログより掲載***

6月に入り、新卒の退職勧奨の事案相談が増えている。
 
ここ数日でも二件の相談がきたが、そろって新卒。もちろん正社員での採用。ところが、たった二ヶ月で「能力なし」と判断され、「アルバイトへの格下げ」を宣告された。
 
まったく業種も異なる二つの事例だが、立て続けにきたことは重要であるので、いくつか論点を整理する。
 
・選別の早期化(試用期間の意味変化)
 まず、たった二ヶ月で選別されるというのは、これまでの労働相談と比べても異様である。従来は、いわゆる「試用期間」との関係で、3ヶ月、6ヶ月を経過した時点で新卒からの相談が寄せられた。7月から8月にかけてと、10月・11月・12月と、年度末の3月が、新卒からの相談のピークだった。
 試用期間はすでに労働契約が結ばれており、この期間での解雇には法的に大きな問題がある。あまり理解されていないが、試用期間が法的に効果を持つためには長期雇用を前提とし、そのために必要な合理的な「選別」である必要がある。つまり、長期間雇う上で問題ないかを、適正などを適切に訓練・評価するための期間である。
 したがって、その間にはきちんとした訓練をほどこす必要があるし、よっぽどのことがない限り試用期間の解雇は認められない。
 ところが、たった2ヶ月でこうした長期適正を評価するというのだから、これまでの常識とは大きくかけ離れている。そもそも長期雇用であるのかも怪しい。
 相談事例では、「おもったより使えないからアルバイトにする」といわれたようだが、新卒がすぐに戦力になるという理屈そのものがおかしい

・新卒の価値低下
この事例からは、新卒の「価値」が社会的に低下したことを印象付けられる。確かに、採用してすぐ解雇するという事案はよくある。だがそれは主に中途採用の場合であって、新卒をそのように扱うということは少なかった。
 これまで、大学新卒を採用する場合には一定の「モラル」が社会的に要求されていた。裁判でも、新卒採用をいい加減に解雇して許されることはない。最初の採用が、日本型雇用の長期雇用・年功賃金と関連して、一度きりの重要なチャンスである以上、それを奪う行為は、社会的に強く非難される。
 ところが、最近では新卒を解雇する(退職強要する)事案はあとを絶たない。その成れの果てが、2ヶ月で「即戦力でないから解雇」という今回の事案である。
 
・辞めさせる手法としての地位変化への「同意」
 もう一つ技術的な論点を指摘しておきたい。彼らが両方とも「アルバイト」になる契約に同意を迫られている点が重要である。いきなり解雇することは違法であることを、経営者はやはり悟っているのだ。
だから、より「軋轢が少ない」方法を採る。新卒が自分の実力不足を認めて、「アルバイトでも仕方がない」とサインすれば、もう訴訟の心配はない。卒業したばかりで社会のことがよくわからない若者を落とし込むのは、容易なことである。
経営者は、本当は違法な解雇をしたいから、若者に「同意」させて、違法な解雇ではないようにみせかけようとしている。しかも、ただ退職に同意させるのではなく、「アルバイトへの格下げ」という退職に等しい同意をさせるのがポイントだ。
法的には正社員をアルバイトに格下げする行為は「解雇」と等しく、厳しく制限されている。ところが、あたかも「まだチャンスがある」「働き続けられる」「あまり実態がかわらない」という幻想から、解雇や退職強要よりも若者の側が受け入れやすいものに見えてしまう。
若者の社会経験の少なさが、こうした心理的トリックを用いやすくさせている。周到に練られた、詐欺まがいの手法である。
 
・ブラック企業という言葉の意義!
 最近、「これはさすがにブラック企業ではないか」というところから、連絡をくれることが増えている。これまで、ひどい扱いを受けても「ただ耐える」しかたなかったかもしれない。だが、最近「ブラック企業」という言葉が広がる中で、潮目が変化してきたように思う。
 あまりにもおかしいことは、「会社の側がおかしいのでは」と考えることができるようになってきた。
 一つ一つの不正を正していくことは、世の中を正していく道である。ぜひ、諦めずにおかしいことがあれば相談してほしい。

***以上***

 

最近の相談事例分析:新卒の価値低下(NPO法人POSSE(ポッセ)代表・今野晴貴)

http://blogs.yahoo.co.jp/perspective0301/5645157.html

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