NPO法人POSSE(ポッセ) blog

ブラック企業に対する裁判が始まりました!

ブラック企業に対する裁判が始まりました!

○東北医療器械事件

1月17日、東北医療器械事件の第一回弁論がありました。この裁判は仙台や松島などのホテルや旅館にセラピスト(エステ・マッサージ)を派遣する東北医療器械(現:REジャパン)に勤務していた20代の男女6人が、同社と取締役15人を相手取り、未払い残業代と精神的苦痛に対する損害賠償など計約3658万円を求めて仙台地裁に提訴した(提訴の時の記事はこちら:http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20131116ddlk04040247000c.html)、というものです。

2013年の3月に仙台POSSEで開催した「仙台・宮城 若者のためのブラック企業相談ホットライン」で初めて相談者が来たことをきっかけに、次々とこの会社の従業員が相談に来ました。約半年間の準備を経て、仙台POSSEとブラック企業対策仙台弁護団が支援する形で集団訴訟を開始しました。


○事案の内容と労働実態

原告の方々は皆、専門学校を卒業後この会社に入社しました。学校に来ていた求人には、雇用形態は正社員で、賞与は年2回、昇給も年1回で社会保険有、労働時間は16時~23時15分(所定労働7時間)といった労働条件が記載されており、賃金の額も専門学校生が新卒でもらえる金額の中では比較的多めでした。原告の方々は専門学校で勉強してきた技術を活かして、安定して働けるという期待を胸に入社しましたが、実態は全く違いました。


① 求人とはかけ離れた実際の労働条件

正社員として入社したはずなのに、実際は「外交員」という個人事業主扱いであり、そのため社会保険にも加入させてくれませんでした。賞与も昇給もなく、手当などもほとんどないため、年金保険料や所得税などを支払えない人もいました。


② 長時間労働と残業代未払い

労働時間も13時25分に勤務を開始して、終業は早くて24時頃、遅いときには26時前までと長時間にわたるものでした。ミーティングのため12時に出社したり、他県などに派遣されたときは自宅に帰るのが深夜3時になった日もありました。休みも月6日しかなく、病院に行けず悩んでいた人もいました。また、残業代に関しては一切支払ってもらえず、年間100万以上の未払いがありました。年次有給休暇については「入社後1年3か月以降にならないと取得できない」、「日数も1年間で5日までに限られる」などと虚偽の説明を受け(法律的には最低でも半年で10日は取得できる)、必要な日数の取得はできませんでした。


③ パワハラと覆面調査

元々ノルマは無いと言われていましたが、達成するのが困難な目標が設定されており、達成できなかったり、1日の売り上げがゼロだったりすると自腹を切り、1円でも多くの売り上げを作らせるという暗黙の了解がありました。それを実行させるために朝礼ではパワハラが頻繁に行われていました。売り上げが悪い人に対してそのことを問い詰め、「ロープレ(ロールプレイングの略)をしてください」と会社が作成したマニュアルを暗唱するよう言われ、一字でも間違えるとやり直しをさせられます。「今日の売り上げ目標は?」「目標金額を超えないと帰らないつもりでいてください」と言われることもありました。また、スタッフとは別の会社の親族などが客を装って施術を受けに来て、従業員の働きぶりを監視するという覆面調査も行われていました。よくできた時の報告はされず、あらさがしのような結果だけを報告され、それについて朝礼で集中攻撃を受ける、というようなことも行われていました。この朝礼では泣かされる人もいましたし、メンタルヘルスに不調をきたす人もでていました。


④ 耐え切れなくなるまで働かされる

辞職は3か月前に伝えるように指導されており(その後6か月前に変更)、また辞めたい旨を伝えると慰留のために勝手に昇進させてきて(昇進といっても形式だけで、待遇は改善しなかった)、辞めづらくさせる仕組みがありました。また、それらを振り切って辞めようとすれば、「協力、フリー」と称して左遷(福島や一人体制の旅館に派遣)され、仕方なくバックれるようにしていなくなれば、最終月の給料を支払はないというような嫌がらせをされます。また会社は離職手続きを取らないため、ほとんどの人が雇用保険も受給できませんでした。辞めた後の生活が不安なためなかなか辞められないという状況がありました。


以上のような労働実態があり、この会社では新卒が毎年次々と辞めていきます。平成22年入社の新卒(約60名)は約3年で全員が離職を余儀なくされています。しかし、会社は労働条件を改善しようとはせず、毎年大量に新卒を採用し(仙台支店では1年に30~40人採用)、使い捨てにすることで利益を上げ続けていました。それらの状況に対して怒りを持った原告らが、自分たちの損害を回復することに加え、「これから入る新卒学生に同じ思いをしてほしくない」「全国でブラック企業と戦う人の背中を押したい」という思いで裁判を起こしました。


○裁判の社会的意義

この裁判の訴状において、被告の(株)東北医療器械は「新規学卒者を正社員として大量に採用し、違法な労働条件で働かせ、身体や人格が壊れるまで使いつぶす」ブラック企業の典型であるとしたうえで、被告による長時間労働を初めとした使い捨てを前提とする労務管理によって、原告らが「新規学卒者としての雇用機会を台無しにされ、専門学校で身につけたスキルやそのためのコストを無為にした」ことの責任を法的に追及する構成となっています。若者を使いつぶすことを前提にした労務管理の是非を問うという意味において、全国初の裁判であり、この裁判で企業や経営者に対して責任を取らせる判決が出れば、現在社会問題となっているブラック企業に対して「NO」をつきつける法的な根拠になります。


○裁判当日の様子

当日はブラック企業問題に関心がある学生や教員など合わせて約30名の傍聴者が集まり、裁判所の傍聴席はほぼ満員でした。原告の一人(20代女性)は意見陳述の中で、自分たちが受けてきた被害のつらさや、これから入社する新卒の方々のためにも本当に夢や希望を持てる労働環境を望むということを強く主張しました。報告集会は、原告・弁護士・支援者(過労死遺族の会の方、労組の方、労働NPO)・記者・他の当事者・多数の学生・原告の親御さんが集まり、活発な意見交換や原告への激励がありました。裁判はメディアからも注目を浴びており、第一回弁論の前日には「使い捨てだった 「ブラック企業」あす初弁論」(朝日新聞 宮城版2014年1月16日)が掲載され、第一回弁論の翌日には朝日新聞や河北新報で取り上げられました。このように、社会的にも大きく注目される裁判になっています。


○次回日程

2014年3月11日 13時半 仙台地方裁判所307法廷

私たち仙台POSSEはこの裁判で勝利を得るため、原告の方々や弁護団の方々と共にこれからも頑張っていきたいと思います。この裁判に興味がある方は是非期日に裁判所へお越しください。


○メディア記事

・朝日新聞「使い捨てだった 「ブラック企業」あす初弁論」2014/01/16



・朝日新聞「被告側、棄却求める 元従業員賃金請求「ブラック企業」訴訟」2014/01/18



・河北新報「過酷労働訴訟 会社側 争う姿勢」2014/01/18




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