ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ 悪は存在しない (2023)

2024年05月06日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

物ごとの本質を知り生きる道理を理解しているように見える男(大美賀均)に接したことで、自分も本質に触れた気になった男(小坂竜士)。そうか、これは「本質」の喪失の話だななどと納得しようとしている私に、ああ、そうなんですか? と、無表情で濱口竜介が言う。

ひと言でも分かったようなことをう言うと自ら墓穴を掘りそうで感想が書けない。

網の目のような木々の隙間から天空を仰ぎ大地を移動する仰角ショット。開拓民3世の父親の関心ごとのひとつでしかない娘の行動の非社会性が孤独を正当化してしまったような母性の不在。湧き水の元地としての上流地域は下流域に対して責任を持たねばならないという優越感と閉鎖(安定)意識。経済効率という一見明快な単一価値の蟻地獄に自ら身を投じ抜け出せなくなり居直る者ともがく者。鹿の通り道。鹿のむくろ。鹿狩りの銃声。手負いの鹿。そして少女と鳥の羽とニット帽。地域保全と地域開発といういたって明快な構造に散りばめられた、そんなモチーフは刺激的で面白かったんだけどなあ・・・。

いったいお前は何が言いたいのだとお思いでしょうが・・まあ皆さま、百聞は一見にしかず、ということで。

(5月1日/シモキタ エキマエ シネマ K2)

★★★

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする