ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ 妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ (2018)

2018年06月07日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
この夫婦、西村雅彦の無頓着で野放図な頭髪と、夏川結衣の重量感とルーズなウエスト周りに、社会的に不自由はしていないが精神的な緊張が足りない、いわば一生懸命に違いないが、その懸命さが生活の目的になってしまったような惰性が漂う。喜劇を戯画で終わらせないリアルな造形に感心する。

そして、寸分の破綻も隙もなく主婦賛歌をまっとうする山田洋二の職人技はさすがですが、この題材、新味がなくあまりにも古臭い。頑固なくせに妻に頼りきりでなにも出来ない夫(当時は定年退職男を指した)が「濡れ落ち葉」と揶揄されたのは、もう20年ぐらい前のこと。この一家でいえば橋爪功世代の話題。すでにシリーズ第一作でやったじゃないですか。

これだけ(家事を含めて)女性の働き方や家族のありかたが多様化した現代に、いくら戯画といえども、こんな化石みたいで図式的な夫婦は、少なくとも私の周りには見当たらず、このステレオタイプな対立構図をいまさら面白がるほどの“度量”も、残念ながら持ち合わせておりません。

2018年の当該の西村世代から団塊世代の男性は、みなさん奥さんに対してとても優しい(軟弱?)し、女性だって男の後ろに一歩さがったふりをしながら、もっと要領よく楽しく生きているようにお見うけしますが・・・。まあ、その優しさと要領の良さこそが山田喜劇を楽しむ“度量”なのでしょうね。いくつになっても未熟者の私をお許しください。

とは言え、史枝(夏川結衣)さんが次回作では、自分で稼いだ金で趣味を楽しむ今どきのフツーの主婦になられていることを切にお祈りいたします。

あと、昔の映画ならともかく小林稔侍の風吹ジュンへの言動の数々、今は完全にセクハラですよね。このキャラクターを悪気もなく、積極的にギャグとして描いてしまっているところに時代とのズレを感じ、あまりいい気分がしませんでした。

余談です。前作『家族はつらいよ2』で平田家はいったいどこにあるのだろうと書いたのですが、行き交う横浜ナンバーの車と二子玉(ふたごたまがわ)でパートという話から、どうやら横浜の宮前区か青葉区あたりみたいですね。

(6月3日/TOHOシネマズ)

★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする