獣臭

深夜から朝にかけてちょっとした前線が通過し、久しぶりにしっかりと雨が降った。
これは祭りの予感。

車の中で雨が弱まるのを待って入渓。
雨が土と植物と沢の香りをミックスし、清々しい香りを醸し出している。
こんな日に釣れないわけがない。

ヤマツツジがもう咲き始めていた。
赤い花が新緑によく映える。


入渓点でまず一尾…、と思ったらフックアウト。
思った通り活性は高い。

と、突然の異臭。本能的に危険を感じた。
風上から猛烈な獣臭がしてくる。
沢の奥を見つめるが、肉眼では何も見えない。
息を殺して両岸の斜面を見つめるが、やはり何も見えない。

急いで熊鈴をつけ、周囲の気配にピリピリしながら遡行を続ける。
しばらく進むも、獣臭は相変わらずおさまらない。


もしや？　クマ？

こんなのに鉢合わせたらたまらん。
渓魚の反応もピタリと止まってしまったので、何かしらの動物が先行していることは間違いなさそうだ。


数分後、ヤマメがヒットしたときには、獣臭は消えていた。
こちらの気配に気づいて、山奥へ立ち去ってくれたのだろうか。

このあと、チビ祭りが始まった。

まるで休み時間を待ちわびた小学生が、チャイムと同時に一斉に校庭に飛び出すがごとく、わ～っとチェイスしてくる。
あんまり小さいのは写真にも撮らなかったが、今季初のツ抜け達成。って言っていいのかな？
このサイズは数に入れちゃダメかもね。



退渓すると目に入ってきたのは、風になびく新緑の山と見事なスカイブルーの空。

林道には、名も知らぬ蝶が群れていた。

車に戻るころには、じっとり汗をかくほど気温が上がってきた。
夏の気配すら感じる。


獣臭にはちょっと参ったが、今日も楽しい朝のチョイ釣りだった。
帰りは車の窓を全開にして、気持ちのいいドライブ。
山から遠ざかるにつれてどんどん暑くなってきた。
ふと、車の温度計を見ると…

げげ、３０℃！
夏の気配どころか、こりゃもう夏だ。