カーティスクリークの宝石

３月１日、多摩川水系が解禁となった。
今年も渓の宝石達との再会を果たすため「カーティスクリーク」に向かう。

シェリダン・アンダーソン著『フライフィッシング教書』によれば、「誰にも教えたくない秘密の川」、それをカーティスクリークと称している。
「自分しか知らないとっておきの川」なんて実際にはあるわけがない。
でも、釣り人は、一人一人それぞれの「カーティスクリーク」を探し続けるのだ。


解禁間近の２月の最終週は、冷たい雨が降り続く日々で、金曜は雪も降った。
うってかわって土曜、日曜と気温が上がり、三寒四温を思わせる。
身支度をして渓に降り立つと、日陰にはまだ名残の雪が目につく。

水温は、5.4℃。減水気味。
ルアーではちょいとキビシイが、きっとどこかに春を待ち望んだヤル気のあるやつがいるはずだ。
そう信じて、スローなテンポでミノーを引く。


しばらくは、水底の赤茶けた枯れ葉や枝を引っかけては、バイトと勘違いする時間が過ぎていく。
そんな中でも時折ルアーにまとわりつく一瞬の銀鱗に心臓がどきどきする。
そのアタックは、まだ鋭さに欠けていて、フッキングに至らない。

じれったいバイトミスが続いた後、ようやくファーストヒットの恩恵にあずかれた。

サビが浮かんだ濃い体色は、越年の証。
12cmほどのオチビさんだが、記念すべき２００９年の初物だ。
解禁１尾目は、特別な存在。
サイズで図ることのできない大きな喜びと安堵をもたらす。
リリースすると、元気よく流れの中に戻っていった。


ほどなくして２尾目がヒット。
落ち込みの反転流の中からチェイスしてきた。

これも越年ヤマメ。16cm。いいサビ具合だ。


今シーズンも私のカーティスクリークは、期待を裏切ることなく渓の宝石との出会いを演出してくれた。
流れは小さく細いけれど、これからもたくさんの渓魚たちを育み守っていってほしい。