あれだけ大袈裟に騒いでいた私を制し、あっさりと抜いてのけた腕に感激し
その後も同じ歯科医院に治療に通っている。
自宅近辺を見回しても、歯医者はあちこちに溢れている。
改めて数えてみると凄い数だ。
それだけ数があれば、
裏返せばとてつもないヤブも混じっていても不思議ではない訳で、
事実私はこれまで「腕がいい」とはとても言い難い所にばかり
通っていたのだと抜歯の一件で痛感した事である。
そこで、やっと巡り合えた今回の歯医者には
きっちり通わねばと頑張って治療に行っている。
今度こそ悪い所を全部治すのだ。
もう、不完全な治療で被せ物をされたせいで隠れて虫歯が進行しており
気づいた時には抜歯以外選択肢が無いなんてまっぴらだ。
さて。歯医者と言えば「治療時の痛み」が付き物だ。
中にはそれが嫌で通わない人もいる位、切っても切れない仲である。
まあ、治療に痛みが伴う場合というのは、
大抵ひどい状態になるまで放置していた本人が悪いのであるが、
そうわかっていてもやはり痛いものは痛い。
例えば、今日の私のように
かなり進行してしまった虫歯の治療時に歯の深部を刺激された際、
鋭い激痛が走る事がある。
そういう場合、担当医に
「痛みがあった時は、左手を挙げて教えてくださいね♪」
と言われているのだが、私はどうしてもそれが出来ない。
手を挙げる前に痛みで体がビクッとしてしまい、
「あ、痛かったですか~?」
とバレてしまうのである。
とてもじゃないが、スマートにスッと手を挙げて知らせるなんて無理だ。
理性より先に体が反応してしまうのである。
。。。何だか言い回しが妙にオヤジエロ風味な気がするが、まあいい。
一体、スマートな挙手で痛みを知らせる人というのは実在するのだろうか。
そういう人というのは、
「うぐっ、痛え!!(心の声)」
とダメージを受けた瞬間を耐えてやり過ごし、
一瞬の余裕の後に「スッ」と美しく左手を挙げるのだろうか。
でも手を挙げる瞬間までは痛みが続いている筈で、
それを耐えつつ挙手しているのか?
何だかとっても「耐えの美学」である。昭和のプロレスみたいである。
今後、途中で私が挫けない限りはこれから長期にわたり治療が続くのだが、
何回通院しても私には出来そうに無い。
いつか私にも、控えめな美しい挙手で
「痛いんじゃゴラァ!」
と意思表示出来る日は来るのだろうか。
かの猪木に言わせれば、
「やる前から負ける話をするのはバカ」
との事だが、
私は彼とは違いしがない凡人なので、やっぱりいくら通っても無理な気がする。
そして、治療が終わり医院を後にする際、
「またね~、バイバイ~」
と手を振ってくれた医師と歯科助手の面々に
「もっと大きな声で!」
とダメ出しをしていた幼児がいたが、
彼は「全員集合!」のDVDでも観たのだろうか。。。
等等、色々と物思いにふける今夜であった。