今日見たDVD:『列車に乗った男』L'Homme du Train
監督*パトリス・ルコント
出演*ジャン・ロシュフォール(マネスキエ先生)
ジョニー・アリディ(ミラン)
シルヴィー・バルタンのダンナでイカれたあんちゃんだったあのジョニー・アリディが、すっかり人生にくたびれた影のある渋い男になっているのに驚嘆。年をとるのは悪いことではないのだ。はからずも彼の演じるミランが、老年の悲哀を感じて意気地がなくなっている退職した元教師のマネスキエをガラス窓に映して、「よく見てみろ、年をとればとるほど輝きは増すんだよ」と言うところが妙味。『髪結いの亭主』で呆れるほどおかしいアラブの踊りを踊っていたジャン・ロシュフォールおっさんが、ここでもエキセントリックな老人を演じていて、にやりとさせられる。
広壮な屋敷でひとり静かに余生を送りつつ、本当は旅から旅への無頼な人生を送りたかった元教師と、偶然彼と知り合ってその生活を垣間み、自分もスリッパを履いて、子どもに文学を教え、ピアノを弾く人生を送りたかった流れ者の銀行強盗が、最後にふっと入れ替わる男の夢と友情のファンタジー。
思い通りにいかなかった人生、苦い思い出や後悔に満ち満ちた人生こそが、他人を思いやる深い人間をつくるのだなあとしみじみ思わされる、いかにもフランス映画らしい味のある映画。最後が甘いと言う人もいるだろうが、これはファンタジーなんだからいいのだ。