HITO-OMOI(ひとおもい)

ひとを、ひととき、ひとへに想ふ短歌がメインのブログです。作歌歴約二十年、かつては相聞(恋歌)、現在は専ら雜詠です。

4502首目・・・幸田露伴を読む

2022-04-24 00:00:00 | 日記

明治の文豪でやはり外せないのが、幸田露伴(本名は成行(しげゆき)、1867年(慶応3年) ~1947年(昭和22年))


露伴はデビューしてから十五年くらいで小説をあまり書かなくなり、大正以後は、主として随筆や芭蕉の評釈に時を費やした作家。

全集読破には、高すぎる山。なので、岩波の『露伴小説』全六冊を軸に、小説ばかり44作品を読む。


主要な作物は文語なので正直骨が折れた。だが、折れただけのことはある。充実の読後感だ。

前期の作物は、掛け値なしに面白いエンタメ小説群。一旦文章のテンポに乗れば、忽ち引き込まれ、夢中になってしまう。しかも、漢籍に通暁し儒道仏三教の裏打ちもあるから底が浅くない。

明治中葉の時代を覆う気分のなせる業か、豪快、颯爽な読後感を覚える作物が多い。心底の極悪人やメンヘラ系は、ほとんど出番がない。

そんなことは傷と思えないくらい文章に生気というか、「力」がみなぎっている。さりとて、ただ遮二無二ではなく、おかしみも時々覗かせ飽きさせない。


そんな作物の中でのマイベスト5は、『風流仏(明治23)』

『対髑髏(明治23)』

『いさなとり(明治24-25)』

『五重塔(明治24-25)』

『新浦島(明治28)』


中でも『五重塔』は、とっておきとして、最後に読んだのだが、全ての人物がくっきりと立っていて、ぐうの音も出ない、唖然呆然の大傑作だ。嵐の夜の、のっそり十兵衛の切る啖呵、痺れるねぇ。


(台東区谷中・天王寺五重塔跡)


(台東区谷中・幸田露伴居宅跡)(040320)


さて、幸田露伴といえば大抵はトップ画の左の髭じいさんを思い浮かべるけど、文壇を席巻してた頃の露伴は、右側の何だか几帳面なサラリーマン風である。


露伴の中期以降は、歴史ものや随筆めく小品となる。

小品は前期の作物を読んだ読者が、露伴の「枯れ具合」を味わうものだろう。江戸落語の名人の人情噺を聴いて「上手い」と唸るみたいな、、。

口語なので余計に飄逸。でも、文語作品の露伴自身が得得として書いている雰囲気は薄まるなぁ。

中編の『運命(大正8)』は、文壇が口を極めて絶賛する。ただ、漢籍に疎いので充分楽しめず残念だ。


露伴の書く随筆なら面白いものが山ほどあるのだろうが、後ろ髪ひかれつつも、随筆にまで手を伸ばすのは断念した。



「いざ露と寝ん草枕成行は早くもわが道ゆきし蝸牛(かぎゅう)ぞ(新作)」

説明が長くなるので、歌意は省略。(汗)

不尽



コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (かぐや姫)
2022-04-25 17:21:03
幸田露伴の小説のご紹介ありがとうございました

一度読んでみたく思いますが、なかなかでしょうね。

いざ露と寝ん草枕成行は早くもわが道ゆきし蝸牛(かぎゅう)ぞ(新作)

私(成行)は、さっさとマイペースで、カタツムリのようになって旅先で露と一緒に寝ようと思う

と解釈させていただきましたが、いかかでしょうか?
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Unknown (oyedih922)
2022-04-25 17:24:44
恐縮です。期待はしてましたが、期待以上の面白さでした。
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