バレエには妖精がよく登場します。
シルフィードとかジゼルのウィリーとか。
ラ・シルフィードの妖精は本当に可愛らしいのですが、ジゼルのウィリーはそうでもありません。
ジゼルの第2幕は、迷い込んできた者をとり殺す恐ろしさもあるので、恐ろしいと同時に美しいというのが一般イメージでしょう。
2幕はロマンティックバレエの傑作で間違いなく美しいとは思います。
ただ、ジゼルがおもしろいなーと思うのは、美しさ、恐ろしさに加えて化け物感があることです。
足が問題です。
変な話ですが、日本では幽霊は足がないのですが、ジゼルは足が強調されます。
でもって、「ぴょんぴょん」飛ぶのです。ところどころ。
主役のジゼルも他のウィリーも。
かなり変だと感じます。
そこらへんが、ああ、彼女は人間ではなくなったのだな、と思えるところです。
人間の亡霊ではなく、人間以外の生き物のようです。
群舞でこれをやると、奇妙で化け物の雰囲気がかなり出ます。
全員白装束で、「集団で」ぴょんぴょん跳んで移動するのです。
個人的なイメージですが、妖精は単体だから美しいので、これが10人以上だと美しさ以外が強くなってくる気がします。
美しさ以外とは、つまり化け物感です。
水木しげるのマンガに出てくる妖怪、一反木綿に近い印象のときがあります。
全員白い衣装のウィリーが跳びながら移動していく場面はかなり異様で、迷い込んだ森番をとり殺すところは美しい妖精という感じではありません。
魔法などではなく、物理的につかんで池に投げ込むのです。
幽霊のように恐ろしい形相で取り殺すわけでもなく、事務的にあっさりと投げ込んでしまいます。
怪力なのです。どうも妖精のイメージではありません。
ジゼルは本当に美しいバレエですが、時々、化け物感が顔をだします。
同じく白いバレエの典型、バヤデールの影の王国の場面は本当に美しい幻想的なシーンです。幽玄というのはたぶんこういうのだろうと思います。
ジゼルのウィリーはどうも白い化け物っぽいです。
でもそこがいいのです。
ジゼルで私が面白いと思う要素はたくさんあります。
ウィリーの化け物感もそのうちのひとつです。
ボリショイの衣装は長すぎて足元が少ししかみえないのですが、やはり足首がみえたほうが好きです。