SF小説ですが、SFファン以外にも人気があるようです。
実験によって高い知能を獲得した主人公の人生が彼の一人称によって語られます。
実験によって知的レベルがあがるというアイデアは、アシモフもテッド・チャンもやっていますが、一番成功したのがこれです。
これほど印象的にできあがったものは他にないのではないでしょうか。
この作品は長編と中編があります。
まず長編を読んで、中編も読んで両方いいなと思いました。
発表は中編、長編の順のようです。
有名なのは長編の方です。
この小説は、なにが面白いかというと、書き手の知的レベルが上がるにしたがって文体が変わることです。
日本語で読 んで、これは英文の原作を読まなければ、と思いました。
こう考える人は多いようです。
ところが、私はだめでした。英語は得意でなかったのが大きな原因ですが。
つまり、英文表現で子供っぽい表現と難解な表現の区別がよくわからないのです。これがこの小説のキモなので、これがわからないと意味がありません。
日本語なら、これは小学生で習う漢字、高校で習う漢字というのがわかります。単語も同じです。
ところが英語でこの単語や文体は子供のレベル、一般の大人のレベル、高度な知性のある大人のレベルという違いが、わかりません。
もっと頑張って読んだらどうだったか。でも、根気がないし、英語が好きでもなかったので。
翻訳と原文を照合しながら読ん だらわかったかもしれません。
時間と余裕があるときにもう一度読んでみようか、と思っています。
原文に挫折した結果、あらためて英文のエッセンスを日本文に置き換えた翻訳者のセンスに脱帽です。
うまいなあと。
そしてタイトルがとどめです。
原題 "Flowers for Algernon"
邦題「アルジャーノンに花束を」
今なら、英語をそのままカタカナにした
「フラワーズ・フォー・アルジャーノン」が一番ありそうです。
ひねりもなにもありませんが。
動詞を省略したこのタイトルはSF翻訳の大傑作でしょう。
ちょっと感傷的だなと思うのですが。
このタイトルでなかったら、日本人にこれほど愛されたか、わかりません。