

牧場のエサ箱に切り紙のダチョウが貼ってあります。
これは亡くなったおじさんが切ったものです。
子供が好きで、イベントや様々な機会に子供に切って見せて、驚かせたり楽しませたりすることが大好きな人でした。
末期がんの病床にあっても、大きな体を小さく曲げて、繊細な切り紙を作り、病室を飾りつけてお見舞いに来る私たちに見せてくれました。
きっと、お見舞いに来る私たちに暗い顔になってほしくなかったのでしょう。
父親が単身赴任であまりいなかった私に、時に父親のように愛情を注いでくれ、この牧場で色々な遊びを教えてくれました。
乗り物の限界速度についての色々な経験もさせてくれて、私のスピード感覚を少しおかしくなったのも、このおじさんのおかげです(笑)
子供たちを楽しませることに全力で、私や兄弟、いとこたちもおじさんのことが大好きでした。
ダチョウの卵を使った生クリームとメープルシロップがたっぷり乗ったホットケーキを作って「どうだ、うまいだろ」と食べさせてくれたことが忘れられません。とっても甘くて幸せな思い出です。
このGW期間中、たくさんの子供たちの笑顔が牧場にあふれている様子を見せられたら、どんなに喜んでくれるだろうかと思います。



「おとなは、だれも、はじめは子供だった しかし、そのことを忘れずにいるおとなはいくらもいない」
これはサン=テグジュペリ、星の王子さまの有名な書き出しです。
この言葉は国立精神・神経センターという病院で黎明期から長年児童精神の領域で臨床心理士として働かれていた私の尊敬する恩師が、大学教授を退官される記念講義で私たちに教えてくれた言葉です。
この言葉をときどき思い出し、どんな時でも、子供の心を持ち続けることは本当に難しいことですが、自分が子供だったこと、弱く小さいものであったことを忘れないでいたいと思っています。
私たちはこのコロナ禍の中、どれだけ子供の心に思いを寄せられているのでしょう。
昨年の小中高校生の自殺者数は過去最多の479人でした。
春休み明けや夏休み明け、GW明けというのは統計上、自殺する子供が増える傾向にあります。
どうしても社会が暗い話題ばかりで笑顔を見せることが大変なお父さん、お母さんが多いのだと思います。
けれども、休み明けの気分が暗くなりがちな子供たちの心が明るくなれるよう、少しでも明るい笑顔を見せてあげてほしいなぁと願っています。
だちょうさんたちの力を借りて、できるだけ私も牧場にいらっしゃる方々が笑顔になれるようこれからも精進しなくてはいけませんねぇ。
子供だけでなく 皆を笑顔にしてくれるダチョウさんに感謝です。