こんな夢を見た。
四月に受けた健康診断の結果は、自分からしてみれば、思った以上に好成績だった。
確かに血圧が高いという新たなる不安要素は増えたものの、それ以外の数値は改善されていたように思う。
日頃から不摂生な日々を過ごし、二十歳の頃から比べれば二十キロ以上も体重が増えているというと言うこともあり、健康診断の結果を知るまではかなり不安であったのだけども、その不安も解消されたのだった。
それからしばらく経ち、血圧の高さも気にならなくなった頃、勤め先に加入している生命保険のおばちゃんがやってきたのだった。
おばちゃんと始めて会ったのは、私が働き始めてすぐの頃だったので、高校を卒業したばかりの十八の頃で、それから五年かけて落とされた私がおばちゃんの生命保険に加入してから、もう二十年近く経っている。
今にして思えば、かなり強引な勧誘の仕方で、ほとんど違法行為だったんじゃないのかと思う。
ツイッターなどに、そのあまりの勧誘の酷さを動画付きで投稿して、訴えてやろうかと思うレベルだったのだけれども、当時はツイッターどころか、携帯電話を誰もが持っているという時代ではなかったので、そんな事はできやしなかった。
おばちゃんとは久しぶりに会った。
以前の会社が倒産して以来なので随分長いこと会っていなかったのだが、おばちゃんは依然と変わらぬ感じで私に言った。
「押利さん、健康診断に引っかかっているけれども、ちゃんと再検査に行きました?」
そんなはずはないと私は言う。
「数値的には再検査が必要な所はなかったはずだ。だいたい何でおばちゃんがそんなことを知っているんだよ」
「数値的に基準値を超えていれば引っかかってるんですよ。早く再検査に行ってきなさい」
私は手を取られると引きずられるようにして病院に連れて行かれて再検査を受けた。
「ガンです」
検査を終えて診察に移ると、医者が表情のない顔でそう言った。
「すぐに入院して頂きますが、もうあちこちに転移しまくっていて手の施しようがありませんので、覚悟しておいて下さい」
「マジですか!?と言うか、患者にはっきり言っちゃうんですね?配慮とかいっさい無しですか?」
「希望を持たせても申し訳ないですし」
医者はそう言った。
とりあえず、入院しなければならないので、その事を同居する両親に伝えなければならない。
ついでに、勤め先にも伝えなくてはならない。
自分一人で死んでいくのは仕方がないが、それを誰かに伝えなければならない作業というものは、非常に気が重い。
私は携帯で親父に電話する。
「もしもし、俺だけど。ガンで入院することになったから」
親父は言った。
「がーん」
ここで目が覚めた。
目が覚めてからも、入院費のことや、自分がいつまでいきられるのかということを考えていたのだが、保健のおばちゃんはもう10年以上前に無くなっていたり、行った病院も今年の春には閉鎖され取り壊されていたの思いだし、夢だと気が付いた。
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