昔、遠くの村に「なだらかな双丘」と呼ばれる二つの丘がありました。
一つは喜びに満ちた丘で、もう一つは悲しみに包まれた丘でした。
この二つの丘は村人たちに愛され、時折彼らの背中をそっと押してくれる存在でした。
喜びの丘に住む人々は明るく元気で、毎日笑い声が響き渡っていました。
一方、悲しみの丘に住む人々は暗く沈んだ表情を浮かべ、涙を拭う日々が続いていました。
村の人々は、この二つの丘がどうしてこんなに違うのかを不思議に思いながらも、その存在を受け入れていました。
ある日、村の占い師が現れ、両方の丘に一筆書きの線を引いたところ、その線は一瞬で変わることなく、二つの丘をつなぎ合わせるように繋がりました。
占い師は村人たちに語りかけました。
「喜びと悲しみは表裏一体です。この二つの丘は偶然ではなく、つながっているのです」
村人たちはその言葉を深く胸に刻み、両方の丘に目を向け始めました。
喜びの丘の人々は、悲しみの丘の人々に笑顔を届け、手を差し伸べました。
そして、不思議なことに、悲しみの丘から初めて笑い声が湧き出し、花が咲き誇るようになったのです。
喜びと希望の種が、悲しみの土地に降り注ぎ、美しい花畑へと変えていったのです。
しかし、幸せな出来事は他を幸福に変える力を持つことを村人たちは知っていました。
だからこそ、悲しみの丘の大工である父親が仕事を失ったと聞いた時、立ち上がることを決意しました。
若者や老人、女性たちも力を合わせ、一緒になって再建を手伝いました。
父親は若者たちに指導を行い、女性たちはおにぎりを用意し、笑顔で働くことで丘に元気を取り戻していきました。
そして、驚くべきことに、震災の傷跡があった悲しみの丘は、心温まる笑顔と希望に包まれ、再び美しい景色が広がるようになったのです。
「なだらかな双丘」という言葉は、両方の丘が互いに補完し合い、つながり合うことで初めて本当の幸せを見出すことができるという教訓を伝えています。
私たちも自分の喜びや悲しみを受け入れ、他者との繋がりを大切にし、困難を乗り越えていけるよう努めることが重要であると忘れてはならないのです。
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