伊豆大島ジオパーク研究会 ブログ

ジオ研の活動記録および資料提供のためのブログです.コメント投稿の画面反映には時間がかかる場合があります.

『2023年 第13回日本ジオパーク全国大会in関東』 参加報告(後編)

2023年11月04日 12時23分00秒 | 日記

『2023年 第13回日本ジオパーク全国大会in関東』 参加報告(前編) より続きます.


〇10/27 特別座談会「ジオパーク秩父と私」林家たい平 他2名

 開会式前日の夕方に一般市民も聴講できる催しとして秩父

会場で行われました.

人気落語家さんがGPをどのように捉えているのか興味があり,

ツアー解散直後でちょっと疲ていましたが,参加してみました.

冒頭のつかみはなんと,楽屋に大島のクサヤが届いたという話

題でした.大島には何回か渡島したそうで,裏砂漠や地層大切

断面の感想も披露してくれました.その後ブラタモリ浜松編を取

り上げ,稲作に向かない風土と織物の関係,織機(しょっき)職人

と舶来オルガンの修理というエポック,木工技術の発展,木製プ

ロペラ製造,金属中空プロペラの製造,金管楽器の製造・・

と土地の成り立ちと気候風土が産業発達に結びつくことをGPと

絡めて解りやすく語り,最後に二度の大震災後の復興には秩父

のセメントも役立っていること,夜祭屋台の豪華さはそのセメント

や絹織物(秩父銘仙)が生みだした富による,と地元聴衆に秩父

GPの素晴らしさを再発見することを促しました.付け焼き刃

のGP知識を披露するだけかもしれないと思っていたのですが,

あにはからんや楽しくて見事なGP概念の普及啓発座談会でした.

(撮影禁止のため画像はありません)

 


〇10/28 開会式  (一部オンライン)

 今回は分散開催の為か,全国大会では恒例だった開催GP

周辺の郷土芸能の披露がないことがちょっと残念でした.日本

GPの関係者・首長さんや政治家さんの挨拶・祝辞が続きまし

たが,多元中継のノウハウ不足によるものなのか,銚子会場や

リモート発言者の映像の不鮮明さと音声の聞き取りにくい事が

とても気になりました.素材が多元接続状態での視聴技術は,

だいぶ前に完成していますが運営側では会場全体の俯瞰映

像とPA音声のみの採取伝送で安易に済まそうとしたための

不具合だったと想像しています.当初は関東全GPによる分散

開催が予定されていたそうですが,この程度のオンライン会合

ノウハウのままで,もしも開催していたら大混乱必至だったと思

います.

 

[秩父会場となった秩父宮記念市民会館]

 

[映像・音声の共有に難のあった2元会場接続]

 

[開会前の秩父会場内]

 

〇10/28 基調講演 「チバニアアンと地質遺産」 (オンライン聴講)(要旨メモ)

講師 日本地質学会会長 岡田誠氏

 冒頭,チバニアンは何が凄いのかは現地に行ってもわから

ない.また房総半島の地質の凄さは専門家にはよく知られて

いるが,一般人にはわからない.という実例から説き起こし,

チバニアンを軸に地質に関するあれこれをお話して下さいま

した.以下は講演のメモです.

 地質遺産は後世に残す価値あるものであるが,専門家にしか

価値がわからない場所がある.一方でGPは地質遺産を含まな

ければならず,自治体は地質遺産で地域振興をしたい.観光

地や地域資源として成り立ちにくいものがある.地質遺産は専

門家にしか判断できない.

玄武洞は壮大な奇観により地磁気逆転発見前から観光地.

地磁気逆転は一部に見られるだけ.

チバニアンは地磁気の逆転の経過が逐一記録されていること

にタイムマシン的な価値があり,日本でははじめて地層年代の

境目(GSSP) となった.天然記念物にもなったが景観が理由で

はない.見学者来るが泥岩地帯でシマシマも無く地味.

GSSP:(国際境界模式層断面のポイント)地球史は地層に残され

た化石の種類の変化や,地層に刻まれた気候の変化などをも

とに 116の階に区分され.その内81の名称が決定している.

なお,地磁気で年代決定はできない.チバニアン階/期は77.4

~12.9万年前.現地の花粉の研究から,地磁気の逆転と生物

の相関関係は見いだされていない.

(撮影禁止のため画像はありません)

 


〇10/28 基調提言 「ジオパークは誰のためのもの?」 (オンライン聴講)(要旨メモ)

講師 糸魚川市観光協会事務局長(元日本ジオパークネットワーク事務局)  齋藤清一氏

 日本ジオパークの創生から関わっているが最近のGP活動

は元気が無くなってきた感がある.成熟期・高齢化・4年ごとの

審査の大変さ等が原因か.

世界GPによって規制されている鉱物資源の販売について,

糸魚川GPではヒスイ商組合を組織して規制に沿うよう対応して

きたが,糸魚川GPとの調整不調で組合は解散した.

GP活動には地質遺産の保全と継承に重きがあるが現世代に

実質利益を求める希望は当然ある.

GPをしっかりと知る.情報交換・学び・ゴールの共有が進んで

いない.個人企業・構成員レベルで具体的目標を設定行動

するところに至っていない.自分たちは何をしたいのか常に

考える必要.

地質物品の売買禁止についてヒスイを売りたい.GPやめて

もらいたいとの声もある.

認定審査はパスしないと行けないものなのか? 

行政の無誤謬性からパスが目的化しているのではないか.

GP—社会—地域

の三つが相互連携して発展するのが理想だがGPと地域の間

に現在の人々の為になる物がないと活動の継続性が確保しずらい.

本音の疑問・主張・納得が必要.今回地元で「世界の石展」が

開催されるがGPも出展を決めた.販売促進の現場でブレーキ

をかけ営業妨害をするような事になるかもしれない.

 

・・等々,糸魚川GPでは地質資源である地元産ヒスイの販売に

ついて深刻な状況が生じているようでした.この問題は秩父GP

にもあり,武甲山は古くから漆喰やセメントの材料として石灰岩

の採石が行われており,秩父一帯の繁栄の礎となっています.

一時閉山の計画があったそうですが,折から東日本大震災が

発生し大量のセメント需要が発生した為,採石停止とはならな

かったそうです.

(撮影禁止のため画像はありません)

 

〇10/28 分科会⑪『ジオ・エコ・ヒト―なぜジオパークで生態学?』

コーディネーター 平田 和彦

[JGN生態学WGリーダー、千葉県立中央博物館分館海の博物館 研究員]

分科会は両会場合計で11,秩父会場ではその内4分科会が

開催されました.

私は表題のものに参加しましたが,各地のGPで生態観察や

研究を行っている若い研究者の取り組みの事例発表をたくさん

聞くことができました.

なお,座談会には 伊藤 舜専門員も参加しています.

コーディネーターの 平田 和彦氏 は当日早朝に転倒したとの

ことで顔面負傷した痛々しいお姿でしたが,地質主体のGP運

動の中にあっては傍系である生態学の意義について冒頭の

趣旨説明で熱く語っておられました.

[コーディネーターの平田氏]

[分科会会場]

[伊豆大島GPの伊藤専門員も発表者]


〇10/28 交流会

 コロナ禍中の大会では交流会の中止や会場分散・めいめい膳

利用など制約の多かった交流会ですが,久しぶりに参加者が一

堂に会しての交流会となりました.おなじ円卓に着席した方たちと

の名刺交換は恒例です.今回は森内・牧野(立山黒部),図師(霧島),

石川(山陰海岸),肥沼(秩父),水永(アポイ)[敬称略]など.森内さん

には黒部ダムの構造を解説していただき,図師さんとは新燃岳の状

況やGP関係者必読の小説「死都日本」が話題になりました.

おひらきの寸前に来年の開催予定地の下北GPの方々が壇上から

参加を呼びかけ,会場からはエールが飛ぶという賑やかさの内に

散会しました.

なお,来年の全国大会は2024年8月30日開会とのことです.

[同テーブルとなった方々]

 

[恒例の次期開催予定地の決意表明 来年は下北GP開催で今回の大会に10名を送り込んできました]

以上を本大会の参加報告とします.

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『2023年 第13回日本ジオパーク全国大会in関東』 参加報告(前編)

2023年11月04日 10時54分41秒 | 日記

『2023年 第13回日本ジオパーク全国大会in関東』

 今大会は銚子ジオパークと秩父ジオパークの二か所および

リモート参加を利用した分散形式で開催されました.私はジオ

ツアーの希望エリアに沿って秩父会場に参加しました.

(以下ジオパークをGPと略記します)

 

秩父会場参加プログラム 

10/26-10/27 プレジオツアー

10/27 特別座談会 「ジオパーク秩父と私」林家たい平 他2

10/28 開会式  (一部オンライン)

10/28 基調講演 「チバニアアンと地質遺産」 (オンライン聴講)

10/28 基調提言 「ジオパークは誰のためのもの?」 (オンライン聴講)

10/28 分科会⑪『ジオ・エコ・ヒト―なぜジオパークで生態学?』

10/28 交流会

 

 これ以外にもポスター発表と10/29の小中高生の部をはじめと

した各種口頭発表が設定されていましたが,日程の都合がつか

ず参加できませんでした.

 

10/26-10/27 プレジオツアー

 秩父側のプレジオツアーは二つのプログラムが設定されまし

たが 『バスで巡る日本地質学発祥の地ツアー』を選択しました.

 最初に訪れたジオサイトは札所28番橋立堂という武甲山の西

端岩壁の麓に建つお堂でした.

二億年の昔,海洋プレート上で活動を停止した火山島の上に

生じたサンゴ礁が石灰岩に変じ,いったんプレート境界で付加

体となったのちに,その後方から沈み込んできた海嶺等で地殻

上まで押し上げられた山体が秩父のシンボルである武甲山です.

(なぜ持ち上がったのかガイドさんの説明はありませんでした.

海嶺による押し上げは推測です)

ここでは当時の火山島の名残りの玄武岩溶岩の露頭と,その

上に形成された石灰岩の山体の両方が見られます.堂の左側

には見学コースだけでも30mを超える落差の縦長構造の鍾乳

洞があり,石灰岩の山体を内部から体感できました.その後も

長瀞・秩父付近がかつて地底・海底であった事を示す多くの

イントや大型哺乳類の化石が発見された1500万年前の堆積

層を見学し,この地が「日本地質学発祥の地」と呼ばれる場所

であることを得心しました.

[秩父のシンボル武甲山]

 

 

[橋立堂]

 

 

[堂の裏にある玄武岩の露頭と表面の石灰岩]

 

秩父GPは日本列島がユーラシア大陸から分離し始めた2

万年前をはるかにさかのぼる2億年前から6500万年前にかけ

ての地層が各所に露出してしています.ここは関東山地の南

東部にあたります.糸魚川GPの解説パネルの表現を借りれば,

関東山地は日本列島が大陸より分離し,南西部と北東部に割

れた際にフォッサマグナ内に生じた「かけら」とされていますが,

武甲山一帯は海洋プレート上の山体がプレート境界に達した

後に,なんらかの原因で浮き上がって来た物とされていますの

で,もともとは大陸由来の陸地ではありません.加えて付近には

マントル内のカンラン岩から生じた蛇紋岩まで存在しているので,

列島創生の物語は単純ではなく,多彩な現象が含まれることが

想像されます.

[カニ・貝の化石を含む「ようばけ」 この地が海底であったことを示す]

 

[法性寺のタフォニ風化跡 岩盤表面からの水分蒸発に伴う. 塩類による風化跡]

 

[長瀞 この地が高圧力状態の地底にあった事を示す景観]

 

後編に続く

 

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※※※ 学校教員および旅行事業者の皆様へ ※※※

2022年12月31日 03時19分16秒 | 日記

※※※ 学校教員および旅行事業者の皆様へ ※※※

教育旅行 無料モニターツアー 参加者募集! 【1/20締切】

伊豆大島ジオパークでは、児童・生徒に、伊豆大島ジオパークでの体験活動を通じて、地球の営みと自然環境、生態系、人の暮らしや産業の関わり等について学ぶ教育旅行をご提供しております。 そこで、学校教員および旅行事業者の皆様に、伊豆大島ジオパークをフィールドとした教育旅行企画をご体験いただき、当ジオパークが有する地域資源の教材活用の可能性をご理解いただくとともに、皆様のご意見をもとにプログラムの充実化を図ることを目的とした 無料モニターツアー を実施いたします。

詳細は以下のリンクへ

▼伊豆大島ジオパークWebサイト https://izuoshima-geo.org/news/news-265.html

▼Facebook https://www.facebook.com/izuoshimageopark/posts/pfbid02ZQ2re5iFjyyASZPHfzM3mrcQj4Z8k4pfrBGpMLgnj37LeywBEyjRsAxGDCbxB2rNl

▼Twitter https://twitter.com/izuoshimaGP/status/1607996481147129858

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「第 12 回日本ジオパーク全国大会 白山手取川大会」 参加報告

2022年11月03日 02時29分08秒 | 日記

「第 12 回日本ジオパーク全国大会 白山手取川大会」 参加報告


 10月20日(木)集合・出発のプレジオツアーをかわきりに10月24日帰島まで「第 12 回日本ジオパーク全国大会 白山手取川大会」 に参加しましたので,時間を追って概要と感想を報告させていただきます.

〇プレジオツアー10月20日~21日

本大会のプレジオツアーは
「①地球と旅するジオツアーここが東西日本の境界線!~糸魚川 静岡構造線をブラリ旅~ 」,
「②高低差4 000 mロマン 富山の中の地球へ行こう。 」(立山黒部GP),
「③恐竜ほって、芋ほって、勝山深堀り満喫ツアー 」 
の3コースが設定されていましたが,私は以前から糸魚川-静岡構造線に直接触れてみたいと思っていたので今回は迷わず①を選びました.ツアーエリアは糸魚川世界GPを擁する糸魚川市が中心となります.

ツアーのはじめに訪れたフォッサマグナミュージアム (石の博物館) に展示されていた岩石・化石標本は種類・量ともに圧巻でこの分野では国内最高峰である産総研つくばセンターの地質標本館に迫る展示内容だと思います.糸魚川市周辺は観光資源が乏しい土地柄だったことからヒスイやフォッサマグナなどの特異性のある地域資源に着目しGPの概念が生まれる前の1987年に世界に先駆けて地質見学地を ”ジオパーク” と命名したそうです.この博物館は昭和の終わりに「ふるさと創生事業 」で全自治体に一律交付された一億円の大半を岩石・化石標本の購入に費やして中核展示物を確保し,後に県・国からの拠出金も得て総工費14億円で建設されたとのことでした.


フォッサマグナミュージアム 内部 (展示物)

       


約2000万年前に沿岸部分が大陸から分離して現在の日本列島に至る過程で生じた巨大な割れ目をフォッサマグナと呼びます.その北西端となった糸魚川市周辺の古い大陸地質と割れ目を埋める形で堆積・隆起した日本アルプスを含む陸地との境界面はそのままユーラシアプレートと北米プレートの ”さかい” となりました.見学コースとなっている断層破砕帯 (糸魚川-静岡構造線) では明瞭な地質の差異を目と手触りで感じることができます. ブラタモリで2021年11月20日に放映 された東西両地質上に井戸を持つ渡辺家 (渡辺酒造) では当主のご厚意でふだん入れない屋内の水路見学や東西井戸水の飲み比べをさせていただきました.味覚音痴の私にも硬水・軟水の風味の差異は感じることが出来ました.醸造にはユーラシアプレート (西) 側井戸の軟水を使用するそうです.

日本列島の誕生過程(一部) 

       

 

糸魚川市の海岸,糸-静線上から見た山並み

左(東) 北米プレート(フッサマグナ)上の北アルプス,右(西) ユーラシアプーレート上の古い山々

  

断層見学公園 (フォッサマグナパーク) 

 



渡辺酒造と糸-静線をまたぐ渡辺酒造当主

 


糸魚川市のフォッサマグナではプレート・地殻の活動が活発であったことから火成岩はもとより,蛇紋岩中に生成されるヒスイの原石を含む変成岩に加えて石灰岩・砂岩などの堆積岩も豊富に存在します.ヒスイ海岸と呼ばれる姫川河口附近では色とりどりの砂利が見られ,1m四方で手あたり次第に集めただけでもちょっとした岩石標本セットができるのではないかと思われる程でした.なお糸魚川市内を流れる一級河川は姫川であり  ”糸魚川” という名前の川は存在しないとのことでした.

ヒスイ海岸 (青海)で拾った石を採集セットに納める (石の博物館で購入)

   


ジオツアーは一泊二日の日程でしたが初日に集合場所である糸魚川駅に着いた際に印象的だったのは新幹線の止まる駅の前にもかかわらず路上に通行人がほとんど見られないことでした.この点だけは私の住む泉津集落の様子とあまり変わりません.駅前メインストリートにもかかわらず横断歩道に信号機がないのはこれが常態であることを物語っていると思われます.
周辺には 「糸魚川ユネスコ世界ジオパーク」 ののぼり旗やヒスイロードの表示が目立ちました.飲食店ではおすすめメニューに 「ジオ丼」 「ヒスイ餃子」 等が並び,駅前一等地に建つホテルはその名も 「ホテルジオパーク」 で地域振興にGPをフル活用している様子がうかがえました.

糸魚川駅構内の展示



人気のない糸魚川駅北口




ジオ丼のぼり旗 駅前に建つ「ホテルジオパーク」

 

〇全国大会10月22日(~23日) 

本大会のテーマは 「地球と旅する~白山手取川の地から地球と人の未来を考える~」 です.
22日は,松任文化会館ピーノ (白山市古城町) で開会セレモニーに続き,国立科学博物館副館長の真鍋誠氏による「恐竜化石から過去,現在と未来の地球を考える」と題した基調講演を受講しました.真鍋氏は,白山取手川ジオパークの地質遺産・桑島化石壁について,「一億3000万年前の世界が蘇ってくる素晴らしい場所」と評価した上で,地球上の生物は,大量絶滅を繰り返してきたが,現代は人間の存在によって,過去の大量絶滅よりも,絶滅率が高くなっていると語り 「約100万種の動植物が数十年で絶滅する危機を迎えている」と危機感を表明しました.

講演後は, 「地球と旅する」 をテーマに真鍋さんの他に,写真家の谷口京さん,気象予報士の座間妙子さんら5名のパネルディスカッションが行われました.谷口さんは 白山手取川地域の魅力について,「火口から白山麓まで,車で一時間ほどで行けて,ドラマチックな地形の変化を体感できる」 と語りました,座間さんは,8月に小松市などを襲った豪雨被害に触れ,局地的豪雨で雨の降り方が変り,災害が少ないとされてきた白山周辺でも注意する必要が出てきたと指摘し「大雨被害は,ひとごとではないと感じてほしい」と注意喚起しました.

会場周辺は歩行者天国が設定されて,「いいとこ白山フェア」と題して伝統工芸の体験や各地のジオパーク特産品が購入できるブースが設けられていました.環境省,防災科研,国土交通省,県地質調査業協会もブースを設置しジオにかかわるテーマの展示や物販を行っていました.環境省ブースの担当者は大島事務所の歴代レインジャーの後輩にあたるとの事でよろしく伝言を承りました.

プログラムでは午後,大会参加者は分科会に各々分散します.私は 「自然災害伝承碑の取り組みと利活用」 にエントリーし宮城学院女子大学の宮原郁子教授の司会によるパネルディスカッションで各地のパネラーの報告を拝聴しました.全国各地に設置されている津波,洪水,火山災害,土砂災害などの自然災害伝承碑が 「自然災害は繰り返す」 ことを知らしめる警鐘の役割を担っていることが高く評価されていること.その存在が国 (国土地理院) によりデータベース化されていることを初めて知りました. 大島では2013年の土石流災害の慰霊碑がそれにあたります.

オープニング「かんこ踊り」・「御酒」

  

 

真鍋誠氏の基調講演 と パネルディスカッション

 

       

各団体の模擬店と国立公園を紹介する環境省ブースのレインジャー

  

防災科研 (旧科学技術庁) の海底地震計・津波センサー(津波の感知は重み=水圧の変化による)配置図

    

国土交通省ブースの砂防ダム解説

ポスターセッション (一部)

   

分科会「自然災害伝承碑の取り組みと利活用」会場

 

 

〇ポストジオツアー(自前企画) 10月23日

生業に戻る日程都合があったため最終日は閉会セレモニーを早退しプレジオツアーのみのメニューだった立山黒部GPを自前プランで1日体験することにしました.大会会場の松任駅から富山 ・立山駅を経てケーブルカー,ロープウェイ,トロリーバス,電気バス等10回の乗り換えで長野県に至る黒部ダム経由,立山黒部アルペンルートをガイド無しの一気通貫で通り抜けました.コース中の車内には本格的な装備の登山客とパンプスを履いたカジュアルな姿の女性客が混在し不思議な雰囲気を醸し出していました.工事のために敷設された資材運搬・メンテナンスルートを活用し国内屈指の登山・観光ルートに変貌させた事業は,ダム建設という巨大プロジェクトながらレガシーの活用について柔軟な発想があったればこそであり,また途上には観光利用のアイデアを生むに足る北アルプスの雄大な景観が存在することをミクリガ池周辺の景観やダムの天端歩行をしながら実感してきました.

室堂平(立山) のミクリガ池 (火口湖)

           

黒部ダム

  

---
本大会はコロナ禍の完全収束を待たずに開催されたため,分科会定員・交流会のあり方等,多くの事項が早い段階では決定できず,加えて開会日寸前に国の全国旅行支援事業の適用業務が開始される等,関係者のご苦労はいかばかりであったか節々に察するに余る状況を感じました.交流会は決定寸前に某筋からの強い意向により分散形式となった旨仄聞しました.このような通常の大会運営とは異なる困難を乗り越えて3年ぶりの現地開催にこぎつけた実行委員会や旅行会社の担当者のご苦労を多とし感謝したいと思います.
来年の全国大会は関東エリアにて分散開催と聞いております.具体的にどのような形態で開催されるのかイメージ出来ていませんが,伊豆大島GPも無関係ではいられない予感がします.伊豆大島ジオガイドの会の一員としてかかわれることを楽しみに情報を待ちたいと思います. 


本会場から10km以上離れた交流会第二会場

     

めいめい膳で供されたオードブル類
 
----

以上です.

(写真はクリックすると拡大されます.本文に戻る際はブラウザの戻るボタンをご使用ください)


         文責 田附克弘

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第7回日本ジオパークネットワーク関東大会in浅間山北麓 参加報告

2022年10月13日 00時03分48秒 | 日記

第7回日本ジオパークネットワーク関東大会in浅間山北麓 参加報告

このたび日本ジオパークネットワーク関東大会in浅間山北麓に参加させていただきましたので大会の概要・気づいた点を報告します.


 全国各地に郷土を詠んだ「かるた」が存在するようですが特に有名と思われる「上毛かるた」では群馬県の形状を 「鶴舞うかたちの群馬県」 と歌っています.この鶴の形の左下長野県との県境群馬県側が浅間山北麓ジオパーク (以下GP) となります.「北麓」とはGPを構成する群馬県嬬恋村と長野原町の二自治体を指すそうです.

一日目 (9月23日)
 開会式は9月23日13時から群馬県長野原町住民総合センターで開催されました.
手頃な規模のホールや多目的室を持つ近代的な地域の中核施設で人口5400人の自治体の総合センターとしてはかなり豪勢な印象を受けましたが後にガイドの方から八ッ場ダム建設に付帯する多くの事業のお話を聞きムベなるかなと得心した次第です.

首長の開会宣言や地元選出の小渕優子議員の挨拶の後JGN副理事長の桂雄三氏による基調講演 「風土の記憶を辿る」 を受講しました.内容は元文化庁主任文化財調査官の経験をふまえ多岐にわたりましたが,当日が彼岸の中日であることから説き起こし宇宙の誕生からウクライナ戦争まで広いパースペクティブを持つお話でした.環境と文化の表裏一体性や過去に学ぶこと,進歩の意味を考察する事の重要性を強調され,レヴィ・ストロースの 「世界は人間なしに始まったし,人間なしにおわるだろう」 という言葉をペシミスティックに紹介したのが印象的でした.

プログラム二番目 は地元長野原高校 (冬季五輪で活躍した荻原兄弟の母校) 生徒たちによる「八ッ場ダム周辺の校外学習」と「浅間山天明噴火に関する大型紙芝居」の活動発表でした.大島高校同様の生徒数100名ほどの小規模高校ですが,ジオパークに係る活動を継続的に行っているようでした.

プログラム三番目 は箱根・筑波山地域・下仁田・浅間山北麓の各GPガイドによるパネルディスカッション 「明日に伝える物語」 です.「伝える」 を主題に各々パワボにて発表されました.箱根GPの充実したガイド活動に繋がる 「いつも笑顔」「参加者に発見させる」「むづかしいことをわかりやすく」 etc. はとても共感できる内容,筑波山の 「山名由来のGP 」 中活火山でないところは僅か4か所で,その火山に由来しないGPのお話, 下仁田の付加体の解説にリボンを使用するテクニックの披露,浅間山北麓の 「キャベツから地球」 の意外な必然性に納得のお話,どれも工夫された興味深い発表でした.
当日は17時に閉会し翌日参加するジオツアー別にホテルまでバスで移動しました.

二日目 (9月24日)
本大会のジオツアーは「スカイロックトレイル」 「八ッ場ダム・吾妻渓谷」 「火山が作った台地と人々の物語をめぐるツアー」 「天明噴火で何が起きたのか探るツアー」 の4コースが設定され,私は「八ッ場ダム・吾妻渓谷」に参加しました.

ダム建設事業は 「故郷の水没」 を伴うことがあり,ほぼ必然的に反対運動がついて回ります. 八ッ場ダムも1952年の計画開始時点から地域を二分する反対運動が始まりました.住民への説得と苦渋を伴う納得,着工までには実に40年の時間を要し,巨大ではあるものの,ガラス細工のような繊細さで組み上げられた事業のようです.その後の政治判断による突然の工事中止.政権交代による再開と関係する住民は翻弄され続けた末令和2年にダムは完成しました.このプロジェクトに要した費用は5000億円を上回り年間国家予算の0.5%に迫る大事業でした. 
ツアーでは1億3000万円の水陸両用バスを使用した村営のダム湖面観光の後,天明3年(1783)の浅間山噴火に伴う土石なだれにより一瞬にして埋没した鎌原村の出来事を伝える「やんば天明ミュージアム」を見学しました.昼食後は八ッ場ダムの巨大天端歩行やダイナミックな放流に感嘆し,ダム下流面到着後はよく整備された吾妻渓谷の遊歩道を散策しました. ミズナラやカエデ・クヌギ等々大島ではほとんど見ることのできない落葉広葉樹に覆われた初秋の渓谷・森歩きは島育ちには珍しく心踊るリバートレッキングでありました. ツアーの時間配分は適切でガイドの解説もよく吟味された内容だったと思います.願わくばダムの構造や噴火の歴史に加えて,渓流沿いの樹木名や森の特徴についてもう少しお聞きしたかった.大島では見ることのできない高原の広葉樹林はすっきりと涼やかな印象があります.テイカカズラ・フウトウカズラ・葛等々の蔓が樹々に絡まる様子がほとんど見られないことは高原の森の美しさの大きな要素だと感じました.
今回の関東大会では箱根の市川さん,浅間山北麓の古川さん・梅沢さん,那須烏山の吉川さん,かすみがうら市の松澤さん・岡本さん,秩父の肥沼さん 等々と名刺交換させていただきましたが,奇しくも全員が自治体職員の方でした.三連休を利用しての大会開催は勤め人には参加しやすい反面プロガイドにとっては繁忙期であり,開催日程に一考あってしかるべきだったかもしれません.

主要日程
9/22 ジェットフォイルにて上京,(中軽井沢前泊)
9/23 1140 軽井沢駅集合 (会場までバス移動)
   1300 開会式 各次第 ジオツアー参加者ホテル移動
9/24 ジオツアー・終了後 都内移動 (都内泊)
9/25 ジェットフォイルにて帰島

大会・ツアー点描




住民総合センターのロビーフロアに埋め込まれた縄文遺跡 
     



桂雄三氏による基調講演




長野原高校生の発表 
                       



1億3000万円の水陸両用バス




やんば天明ミュージアム 
             



ミュージアムに併設された旧校舎 (水没メモリー)




八ッ場ダムの天端歩行(幅10m)




台風接近に供え大量放流中.瀑布にかかる虹がきれいでした





下流側に降りるとダムの巨大構造に圧倒される 
   




吾妻渓谷は多くの部分に架設歩道が敷設されている.




今回ガイドしていただいた浦野さん          



お別れの言葉は「また来てください」でした.


---以上---

文責 田附克弘
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