伊豆大島ジオパーク研究会 ブログ

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「第 12 回日本ジオパーク全国大会 白山手取川大会」 参加報告

2022年11月03日 02時29分08秒 | 日記

「第 12 回日本ジオパーク全国大会 白山手取川大会」 参加報告


 10月20日(木)集合・出発のプレジオツアーをかわきりに10月24日帰島まで「第 12 回日本ジオパーク全国大会 白山手取川大会」 に参加しましたので,時間を追って概要と感想を報告させていただきます.

〇プレジオツアー10月20日~21日

本大会のプレジオツアーは
「①地球と旅するジオツアーここが東西日本の境界線!~糸魚川 静岡構造線をブラリ旅~ 」,
「②高低差4 000 mロマン 富山の中の地球へ行こう。 」(立山黒部GP),
「③恐竜ほって、芋ほって、勝山深堀り満喫ツアー 」 
の3コースが設定されていましたが,私は以前から糸魚川-静岡構造線に直接触れてみたいと思っていたので今回は迷わず①を選びました.ツアーエリアは糸魚川世界GPを擁する糸魚川市が中心となります.

ツアーのはじめに訪れたフォッサマグナミュージアム (石の博物館) に展示されていた岩石・化石標本は種類・量ともに圧巻でこの分野では国内最高峰である産総研つくばセンターの地質標本館に迫る展示内容だと思います.糸魚川市周辺は観光資源が乏しい土地柄だったことからヒスイやフォッサマグナなどの特異性のある地域資源に着目しGPの概念が生まれる前の1987年に世界に先駆けて地質見学地を ”ジオパーク” と命名したそうです.この博物館は昭和の終わりに「ふるさと創生事業 」で全自治体に一律交付された一億円の大半を岩石・化石標本の購入に費やして中核展示物を確保し,後に県・国からの拠出金も得て総工費14億円で建設されたとのことでした.


フォッサマグナミュージアム 内部 (展示物)

       


約2000万年前に沿岸部分が大陸から分離して現在の日本列島に至る過程で生じた巨大な割れ目をフォッサマグナと呼びます.その北西端となった糸魚川市周辺の古い大陸地質と割れ目を埋める形で堆積・隆起した日本アルプスを含む陸地との境界面はそのままユーラシアプレートと北米プレートの ”さかい” となりました.見学コースとなっている断層破砕帯 (糸魚川-静岡構造線) では明瞭な地質の差異を目と手触りで感じることができます. ブラタモリで2021年11月20日に放映 された東西両地質上に井戸を持つ渡辺家 (渡辺酒造) では当主のご厚意でふだん入れない屋内の水路見学や東西井戸水の飲み比べをさせていただきました.味覚音痴の私にも硬水・軟水の風味の差異は感じることが出来ました.醸造にはユーラシアプレート (西) 側井戸の軟水を使用するそうです.

日本列島の誕生過程(一部) 

       

 

糸魚川市の海岸,糸-静線上から見た山並み

左(東) 北米プレート(フッサマグナ)上の北アルプス,右(西) ユーラシアプーレート上の古い山々

  

断層見学公園 (フォッサマグナパーク) 

 



渡辺酒造と糸-静線をまたぐ渡辺酒造当主

 


糸魚川市のフォッサマグナではプレート・地殻の活動が活発であったことから火成岩はもとより,蛇紋岩中に生成されるヒスイの原石を含む変成岩に加えて石灰岩・砂岩などの堆積岩も豊富に存在します.ヒスイ海岸と呼ばれる姫川河口附近では色とりどりの砂利が見られ,1m四方で手あたり次第に集めただけでもちょっとした岩石標本セットができるのではないかと思われる程でした.なお糸魚川市内を流れる一級河川は姫川であり  ”糸魚川” という名前の川は存在しないとのことでした.

ヒスイ海岸 (青海)で拾った石を採集セットに納める (石の博物館で購入)

   


ジオツアーは一泊二日の日程でしたが初日に集合場所である糸魚川駅に着いた際に印象的だったのは新幹線の止まる駅の前にもかかわらず路上に通行人がほとんど見られないことでした.この点だけは私の住む泉津集落の様子とあまり変わりません.駅前メインストリートにもかかわらず横断歩道に信号機がないのはこれが常態であることを物語っていると思われます.
周辺には 「糸魚川ユネスコ世界ジオパーク」 ののぼり旗やヒスイロードの表示が目立ちました.飲食店ではおすすめメニューに 「ジオ丼」 「ヒスイ餃子」 等が並び,駅前一等地に建つホテルはその名も 「ホテルジオパーク」 で地域振興にGPをフル活用している様子がうかがえました.

糸魚川駅構内の展示



人気のない糸魚川駅北口




ジオ丼のぼり旗 駅前に建つ「ホテルジオパーク」

 

〇全国大会10月22日(~23日) 

本大会のテーマは 「地球と旅する~白山手取川の地から地球と人の未来を考える~」 です.
22日は,松任文化会館ピーノ (白山市古城町) で開会セレモニーに続き,国立科学博物館副館長の真鍋誠氏による「恐竜化石から過去,現在と未来の地球を考える」と題した基調講演を受講しました.真鍋氏は,白山取手川ジオパークの地質遺産・桑島化石壁について,「一億3000万年前の世界が蘇ってくる素晴らしい場所」と評価した上で,地球上の生物は,大量絶滅を繰り返してきたが,現代は人間の存在によって,過去の大量絶滅よりも,絶滅率が高くなっていると語り 「約100万種の動植物が数十年で絶滅する危機を迎えている」と危機感を表明しました.

講演後は, 「地球と旅する」 をテーマに真鍋さんの他に,写真家の谷口京さん,気象予報士の座間妙子さんら5名のパネルディスカッションが行われました.谷口さんは 白山手取川地域の魅力について,「火口から白山麓まで,車で一時間ほどで行けて,ドラマチックな地形の変化を体感できる」 と語りました,座間さんは,8月に小松市などを襲った豪雨被害に触れ,局地的豪雨で雨の降り方が変り,災害が少ないとされてきた白山周辺でも注意する必要が出てきたと指摘し「大雨被害は,ひとごとではないと感じてほしい」と注意喚起しました.

会場周辺は歩行者天国が設定されて,「いいとこ白山フェア」と題して伝統工芸の体験や各地のジオパーク特産品が購入できるブースが設けられていました.環境省,防災科研,国土交通省,県地質調査業協会もブースを設置しジオにかかわるテーマの展示や物販を行っていました.環境省ブースの担当者は大島事務所の歴代レインジャーの後輩にあたるとの事でよろしく伝言を承りました.

プログラムでは午後,大会参加者は分科会に各々分散します.私は 「自然災害伝承碑の取り組みと利活用」 にエントリーし宮城学院女子大学の宮原郁子教授の司会によるパネルディスカッションで各地のパネラーの報告を拝聴しました.全国各地に設置されている津波,洪水,火山災害,土砂災害などの自然災害伝承碑が 「自然災害は繰り返す」 ことを知らしめる警鐘の役割を担っていることが高く評価されていること.その存在が国 (国土地理院) によりデータベース化されていることを初めて知りました. 大島では2013年の土石流災害の慰霊碑がそれにあたります.

オープニング「かんこ踊り」・「御酒」

  

 

真鍋誠氏の基調講演 と パネルディスカッション

 

       

各団体の模擬店と国立公園を紹介する環境省ブースのレインジャー

  

防災科研 (旧科学技術庁) の海底地震計・津波センサー(津波の感知は重み=水圧の変化による)配置図

    

国土交通省ブースの砂防ダム解説

ポスターセッション (一部)

   

分科会「自然災害伝承碑の取り組みと利活用」会場

 

 

〇ポストジオツアー(自前企画) 10月23日

生業に戻る日程都合があったため最終日は閉会セレモニーを早退しプレジオツアーのみのメニューだった立山黒部GPを自前プランで1日体験することにしました.大会会場の松任駅から富山 ・立山駅を経てケーブルカー,ロープウェイ,トロリーバス,電気バス等10回の乗り換えで長野県に至る黒部ダム経由,立山黒部アルペンルートをガイド無しの一気通貫で通り抜けました.コース中の車内には本格的な装備の登山客とパンプスを履いたカジュアルな姿の女性客が混在し不思議な雰囲気を醸し出していました.工事のために敷設された資材運搬・メンテナンスルートを活用し国内屈指の登山・観光ルートに変貌させた事業は,ダム建設という巨大プロジェクトながらレガシーの活用について柔軟な発想があったればこそであり,また途上には観光利用のアイデアを生むに足る北アルプスの雄大な景観が存在することをミクリガ池周辺の景観やダムの天端歩行をしながら実感してきました.

室堂平(立山) のミクリガ池 (火口湖)

           

黒部ダム

  

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本大会はコロナ禍の完全収束を待たずに開催されたため,分科会定員・交流会のあり方等,多くの事項が早い段階では決定できず,加えて開会日寸前に国の全国旅行支援事業の適用業務が開始される等,関係者のご苦労はいかばかりであったか節々に察するに余る状況を感じました.交流会は決定寸前に某筋からの強い意向により分散形式となった旨仄聞しました.このような通常の大会運営とは異なる困難を乗り越えて3年ぶりの現地開催にこぎつけた実行委員会や旅行会社の担当者のご苦労を多とし感謝したいと思います.
来年の全国大会は関東エリアにて分散開催と聞いております.具体的にどのような形態で開催されるのかイメージ出来ていませんが,伊豆大島GPも無関係ではいられない予感がします.伊豆大島ジオガイドの会の一員としてかかわれることを楽しみに情報を待ちたいと思います. 


本会場から10km以上離れた交流会第二会場

     

めいめい膳で供されたオードブル類
 
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以上です.

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         文責 田附克弘

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