杜の里から

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改訂された疑似科学評定サイト

2015年10月04日 | ニセ科学
今年のニセ科学関連のトピックスとしては、まずは1月下旬に明治大学による「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」が作られた事が挙げられます。
しかし当初は、その方向性や評定の仕方、掘り下げ方の浅さ等が色々指摘されたりしました。

あれから10ヶ月、サイトの更新情報を見てみますと、新年度となった4月以降から積極的に更新を繰り返しており、最新では9月21日に「ホメオパシー」の項目が改訂されています(→更新情報)。

取り上げている項目も旧版より増え、当初指摘があった「水ビジネス」という項目も、現在は「水からの伝言」と「活性水素水・(電解還元水)」とに分けられて、「電磁波有害説」は新たに設けられた『安全性に関する言説』という項目に移動しています。
    
内容についても各項目でブラッシュアップが施されており、例えば「EM菌」の項目などは初めの頃から比べると見違えるほどの情報量となっており、〔語句説明〕の部分だけでもかなりの情報量となっています。
そしてその問題性についても、例えば〔社会的観点〕「社会への応用性(低)」の項目を比べてみますと、
(旧)
 EM菌には“生ごみのニオイ消し”といった他の微生物資材と同程度の生活改善効果は期待できる。そのため、EM菌がそのような狭義の意味における単なる “ブランド名”や“商標”のワクに収まっていれば、本研究で積極的に疑似科学的言説としてとりあげることもなかっただろう。
 しかし行き過ぎた EM菌言説では、この世界の事象すべてをEM菌によって解決しようとする主張がみられる。「EM菌は神様」「善悪はEM菌によって説明できる」といった“信仰”としか表現のしようがない研究姿勢が見受けられ、それを「科学的研究成果」として社会に広めているのが現状である。
 これをそもそも科学的な研究姿勢とは言えないことはもはや自明であるため、当然応用性における評価も極めて低く評価する。


(改)
 たとえばEM菌言説が狭義の効果のみ(生ごみの臭い消しなど)を主張するものならば、単なる“ブランド名”や“商標”といった枠組みに収まる可能性もあり、積極的に疑似科学的言説としてとりあげられることもなかっただろう。
  しかし行き過ぎたEM菌言説では、この世界の問題すべてをEM菌によって解決しようとする主張がみられ、それを社会に還元するという試みは危ういといえる。「EM菌は神様」「善悪はEM菌によって説明できる」といった“信仰”としか表現のしようがない主張が随所に見受けられ、社会的な道徳性に訴えかけることによるコミュニティの拡大がみられる(3)(6)(18)。
 EM言説は単なる営利的な目的ではなく、倫理や道徳性を強調している意味もあり、それを「科学的効果」として産業化しているため、相当根が深い問題であるといえるだろう。
と、まさにEM問題の本質に迫る考察がなされています(尚、強調は引用者によります)。
そして疑似科学とした「総評」においても、旧版では「EMの効果」に対してのみの評価であったのに比べ、改訂版では、
 ただしEM言説において最も危惧すべき問題点は、多くのEM肯定者が道徳的に“善”であるという信念に基づいて行動していることにあると考える。言説の 随所に見受けられる「共存共栄」というコピーは多くの人の自然回帰的精神をくすぐるには丁度良く、このような体制が問題を大きくしてしまっている一因といえるだろう。
と、科学的評価のみに留る事なくその行動原理にまで言及が及び、そして
 疑似科学であると評するが、本言説における「疑似科学」はたとえばサプリメントにおける疑似科学性とは少し性質や意味の違う「宗教的なもの」であることを述べて、結びとする。
とし、単なる疑似科学とは一線を画している点を指摘している所が注目されます。
また前回指摘した参考文献の脚注処理もなされており、文献自体も旧版とは比べものにならぬほどの充実ぶりで、かなりの研究の跡が見られます。

取り合えずEM菌に限っては、よくぞここまで問題点を整理したと評価するものですが、他の分野についてはまた別な評価となるかもしれません。
何せこれだけの数、とても自分一人で判断出来るものでもなく、他項目の評価についてはそれぞれそれを得意分野とする方達に譲りたいと思います。

また、「評定の基本的考え」で、新たに「判断保留」が加えられたのも注目点です。
とかく何かを評価しようとする時など、評価基準があらかじめ設定されているとつい無理やりそれに当て嵌めてしまおうと思い、かえってその評価項目自体に縛られてしまう事があるものです。
ためにかえって結論がゆがめられてしまうという懸念も生じる訳ですが、これを避けるうえでもこの「判断保留」の評価項目は正解だと思います。

今後ともこの評定サイトはどんどん改訂されていく事でしょう。
それをより良いものにしていくには、やはり外部からの意見・評価が欠かせないと思います。
その意味でもまずは旧版と改訂版とを比較して、どこがどう変わったのかその違いを見比べ、それぞれの項目をチェックしてみるのがよりベターであると私は考えます。
そして評価すべき所は評価し、足りない所はまた指摘し、そうして「Skeptic's Wiki」とはまた別の、学術研究機関たる大学ならではの切り口のサイトを作り上げてもらいたいと望むものです。

(旧版)→こちら
(改訂版)→こちら


(旧版について書かれた参考ブログ)
・Interdisciplinaryより「「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」について」
・shinzorの日記より「「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」で気になったこと」
・自ブログより「「評定サイト」に望む事」


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