夢
『こんな日が来ようとは。まさか自分達家族がこの船への最初の先発メンバーになれるだなんて……これで希望が持てる。一体どれだけをこの船で過ごさなくはいけないのかはわからないが、この船にはなんでもある。きっと不自由なんてのはないだろう』
生活
『あれから数週間。船は順調に航路を進んでする。窓の外を見ると、ずっと虹色の空間が続いていて、そこを見るのは既に飽きてしまった。厳重な持ち物検査をされて乗り込んで私たちに与えられた家は、以前の物とも見劣りしない立派なものだった。
最初の三日は本当にただの船の客室の様な所にいたが、住民登録が終わると移住スペースへと案内された。そこでもらった新たな家、そして元居た世界の様な土地と空が再現された場所に感動したものだ。
今ではここが船の中だという事を忘れてしまいそうになる。航路予定2361日 そこに新たな世界が私たちを待ってるはずだ。いや、なんならこのままこの船での暮らしだって何も問題なんてない』
軋み
『あれから何年たっただろうか? 既に到着予定だった2361日は当に過ぎてしまった。仕事で居住スペース外に出る私は虹色の航路を見る。最初の時と変わらないその光景。けど何年も何年もこうやってわたってる船にはガタが出始めている。
だからこそ、整備は大切だ。なにせまだ新たな世界へはたどり着けてない。以前はこのままこの船の中で一生を終えてもいいと思ってたが、その考えはもうない。
なにせ水も食料も、以前ほど豊富ではないからだ。毎日水も食料も配給でしかもらえなくなってた。昔は農業だってこの船の中で出来てて天候操作で雨を降らせたりもしてた。でも今やこの船の中の空はいつも曇ってる。土は栄養を失って何も育たなくなった。
僅かにとれる食料を中央の偉い人達が一回かき集めてそして配る……そんな風になってる。でも新たな……新たな世界にさえたどり着けば……こんな行き詰まりの生活とはおさらばできるんだ』
出会い
『船の中が久々ににぎわってる。それは一時的にだが、沢山の水や食料が手に入ったからだ。それに対して、何も知らない人たちは浮かれてる。けどこの水と食料がどこから来たのか知ってる者は素直に喜べない。
土も入れ替えることができて、これから何年かは安定した食料を育てることができるだろう。
結論からいおう、この増えた物資……それは同型艦から調達したものだ。航路上にそれはあった。ボロボロになって、漂流してた。コンタクトを取ったが応答はない。中は酷いものだったときく。
現状をわかってる上の連中は戦々恐々としてるだろう。これは未来の我々の姿だと』
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