ひよこはあらしの日に大切な帽子を失ってしまったのだが、本日新しい帽子を買ってきた。
茶色い帽子だ。
ひよこが言うには、今朝バスの中に人間の親子が乗ってきたのだそうだ。子供はこう言った。帽子をかぶってる人がたくさんいるね!
すると親がこう答えたのだ。そうだね、帽子をかぶると魔法が使えるからね。
そんな、訳があるか!!
帽子はハゲを隠すためのものだ。かぶったからと言って、魔術が使えるようになったりはしない。馬鹿げている。非科学的もいいところだ!!人間の親は子供を騙したのだ!
そしてひよこも騙されたのだ!
ひよこは会社から帰ってくると、大喜びで買ってきた 帽子をかぶり、IKEAが無料でくれた箸をとりだすと、ふりまわしてういんがーでぃあむれびおさーとか、唱えている。もちろん何も起きない。哀れだ。
見ているとクマが合流した。クマはクマのくせに帽子を持っているのだ。ひよこはクマにも箸を一本渡した。危険だ。
だが、クマに、ういんがーでぃあむれびおさーが言えるはずがない。「右方向右胸鰭上げスーパーダッシュのゆっくり」も言えぬのだからな。
私はもっと簡単な呪文として、ホイミと言ってみろ。と言った。
ホイミ!とひよことクマは言った。
何も起きない。
ホイミって何?とひよこが言った。コンビニで、青いあんまんを買う時に唱える言葉だ。唱えると幸せな気分になるらしい。
青いあんまんだって〜!と笑いながらクマがホイミ!と言った。ひよこが笑った。ひよこがホイミ!と言った。クマがますます笑った。
私は愕然とした!何という事だ!!魔術は実在するのか!?
二人は箸を振り回しながら、幸せそうに笑っている。
ありえん!!!
さすがシャチだね!他の呪文は!?とひよこが嬉しそうに聞いた。空飛ぶ呪文は!?空飛ぶ呪文はないの!?
クマが箸をまたいで言う。えー空を飛ぶには箒がいるんだよ!ひよこ、買ってきて!
ばかめ、と、私は言った。空を飛ぶのに箒はいらん。魔法もいらん。
必要なのは、私だ!
クマよ、ひよこの肩に乗るのだ!ひよこよ。わたしのハンドルを掴め。両手でだ。体は伸ばして、腕立て伏せの要領だ。ナウシカという映画を知っているな。ナウシカがメーヴェに乗る姿勢。あれが正しいシャチの乗り方だ。
無理!とひよこは言った。ひよこは腕立て伏せが一回しかできない。
では、なんでもいい。わたしにつかまれ。とわたしは言った。待って!とひよこは言って、Siriを首に掛けた。Siriがポン、と音を立て、よく聞こえませんでした。と言った。
ひよことクマを乗せ、わたしは尻尾に力を込めると、魚雷のように黒く光りながら、ベランダを飛び出した!
わたしはアパートの上空をまっすぐに飛んだ。7月の夜空を上がっていく。風の音が聞こえる。我々の部屋が遠ざかる。オレンジ色の窓。窓の中のウンベラータ。白いカーテン。さらばだ。上昇していくと、建物の陰から輝くニンジャの塔が現れる。
ニンジャの塔の青いイルミネーション。街灯に照らされた夜の博物館。レンガ造りの図書館。浜辺にはイタリア寺院がライトアップされてオレンジ色に輝く。鐘が鳴る。汽笛が鳴る。灯台の灯が回っている。
海は暗い。
左方向横向きスーパーダッシュお腹壁側だ!とわたしは言いながら、スピードを上げてジェットコースターのようにドーム球場の上空を回った。ヒャッホー!とクマが叫んだ。
夜の街は海底だ。オレンジの明かりがキラキラしている。暗く眠る湖が見え、そばにトパーズのようなスターバックスが見える。遠く、小さくノマドな人々がリンゴのマークの付いたパソコンをひらいている。コーヒーの匂いがする。多分な。夜の底だ。遠すぎてわからん。
目の前に黒い小山が現れて、わたしは急上昇する。山の上の遊園地がオルゴールの音とともに現れる。小さな観覧車、メリーゴーランド。子供のもつ風船がスポットライトに揺れている。隣の動物園で鳥が鳴く。
みて!植物園だよ!!ひよこが指さした。暗い夜の動物園のそばに輝くガラスの温室が見える。ここは深い夜の海底だが、あそこには空気がある。中は輝くジャングルだ。緑の葉の間を青い蝶が何匹も飛び交っている。あの青い蝶のうちの一匹はわたしのWindows 7だ。
Windows 7、わたしはお前を忘れはしない。忘れないぞ。
わたしは急上昇する。輝く夜景が遠く小さくなる。夜空を背景に黒いおおきな山が浮かび上がる。モーモー山だ。
モーモー山だ!モーモー山に行こうよ!とひよこが言う。よし、右方向右胸鰭上げスーパーダッシュだ!わたしは言った。ヒャッホー!!とクマが叫んだ。
モーモー山にはモーモーランドがある。モーモーランドは赤い屋根の牧場だ。美味しいミルクをだす牛がいるのだ。羊もいる。素晴らしい。
我々は牧場の展望台にふわりと着地した。さすがだな。
そんな訳で、今夜のツイートは、真夜中のモーモーランドの展望台で書いている。
多分な。
魔法が無くても空を飛ぶことはできる。もちろんだ。
わたしはシャチ、だからな!
茶色い帽子だ。
ひよこが言うには、今朝バスの中に人間の親子が乗ってきたのだそうだ。子供はこう言った。帽子をかぶってる人がたくさんいるね!
すると親がこう答えたのだ。そうだね、帽子をかぶると魔法が使えるからね。
そんな、訳があるか!!
帽子はハゲを隠すためのものだ。かぶったからと言って、魔術が使えるようになったりはしない。馬鹿げている。非科学的もいいところだ!!人間の親は子供を騙したのだ!
そしてひよこも騙されたのだ!
ひよこは会社から帰ってくると、大喜びで買ってきた 帽子をかぶり、IKEAが無料でくれた箸をとりだすと、ふりまわしてういんがーでぃあむれびおさーとか、唱えている。もちろん何も起きない。哀れだ。
見ているとクマが合流した。クマはクマのくせに帽子を持っているのだ。ひよこはクマにも箸を一本渡した。危険だ。
だが、クマに、ういんがーでぃあむれびおさーが言えるはずがない。「右方向右胸鰭上げスーパーダッシュのゆっくり」も言えぬのだからな。
私はもっと簡単な呪文として、ホイミと言ってみろ。と言った。
ホイミ!とひよことクマは言った。
何も起きない。
ホイミって何?とひよこが言った。コンビニで、青いあんまんを買う時に唱える言葉だ。唱えると幸せな気分になるらしい。
青いあんまんだって〜!と笑いながらクマがホイミ!と言った。ひよこが笑った。ひよこがホイミ!と言った。クマがますます笑った。
私は愕然とした!何という事だ!!魔術は実在するのか!?
二人は箸を振り回しながら、幸せそうに笑っている。
ありえん!!!
さすがシャチだね!他の呪文は!?とひよこが嬉しそうに聞いた。空飛ぶ呪文は!?空飛ぶ呪文はないの!?
クマが箸をまたいで言う。えー空を飛ぶには箒がいるんだよ!ひよこ、買ってきて!
ばかめ、と、私は言った。空を飛ぶのに箒はいらん。魔法もいらん。
必要なのは、私だ!
クマよ、ひよこの肩に乗るのだ!ひよこよ。わたしのハンドルを掴め。両手でだ。体は伸ばして、腕立て伏せの要領だ。ナウシカという映画を知っているな。ナウシカがメーヴェに乗る姿勢。あれが正しいシャチの乗り方だ。
無理!とひよこは言った。ひよこは腕立て伏せが一回しかできない。
では、なんでもいい。わたしにつかまれ。とわたしは言った。待って!とひよこは言って、Siriを首に掛けた。Siriがポン、と音を立て、よく聞こえませんでした。と言った。
ひよことクマを乗せ、わたしは尻尾に力を込めると、魚雷のように黒く光りながら、ベランダを飛び出した!
わたしはアパートの上空をまっすぐに飛んだ。7月の夜空を上がっていく。風の音が聞こえる。我々の部屋が遠ざかる。オレンジ色の窓。窓の中のウンベラータ。白いカーテン。さらばだ。上昇していくと、建物の陰から輝くニンジャの塔が現れる。
ニンジャの塔の青いイルミネーション。街灯に照らされた夜の博物館。レンガ造りの図書館。浜辺にはイタリア寺院がライトアップされてオレンジ色に輝く。鐘が鳴る。汽笛が鳴る。灯台の灯が回っている。
海は暗い。
左方向横向きスーパーダッシュお腹壁側だ!とわたしは言いながら、スピードを上げてジェットコースターのようにドーム球場の上空を回った。ヒャッホー!とクマが叫んだ。
夜の街は海底だ。オレンジの明かりがキラキラしている。暗く眠る湖が見え、そばにトパーズのようなスターバックスが見える。遠く、小さくノマドな人々がリンゴのマークの付いたパソコンをひらいている。コーヒーの匂いがする。多分な。夜の底だ。遠すぎてわからん。
目の前に黒い小山が現れて、わたしは急上昇する。山の上の遊園地がオルゴールの音とともに現れる。小さな観覧車、メリーゴーランド。子供のもつ風船がスポットライトに揺れている。隣の動物園で鳥が鳴く。
みて!植物園だよ!!ひよこが指さした。暗い夜の動物園のそばに輝くガラスの温室が見える。ここは深い夜の海底だが、あそこには空気がある。中は輝くジャングルだ。緑の葉の間を青い蝶が何匹も飛び交っている。あの青い蝶のうちの一匹はわたしのWindows 7だ。
Windows 7、わたしはお前を忘れはしない。忘れないぞ。
わたしは急上昇する。輝く夜景が遠く小さくなる。夜空を背景に黒いおおきな山が浮かび上がる。モーモー山だ。
モーモー山だ!モーモー山に行こうよ!とひよこが言う。よし、右方向右胸鰭上げスーパーダッシュだ!わたしは言った。ヒャッホー!!とクマが叫んだ。
モーモー山にはモーモーランドがある。モーモーランドは赤い屋根の牧場だ。美味しいミルクをだす牛がいるのだ。羊もいる。素晴らしい。
我々は牧場の展望台にふわりと着地した。さすがだな。
そんな訳で、今夜のツイートは、真夜中のモーモーランドの展望台で書いている。
多分な。
魔法が無くても空を飛ぶことはできる。もちろんだ。
わたしはシャチ、だからな!