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雨の国の王者

探偵小説好事家本人のためのノート

その63七つの顔を持つ男

2008-10-10 18:21:16 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 
 インターネット古書店で、深見杏子『朱い挑戦者』の書影を見かけて、そういえば、以前、これは、掘り出しものの探偵小説かもしれないと期待して読むも、読後、なんとも表現のしがたい奇妙な味の、記憶にものこらないような小説だったなと感じたことを、いまさらながら回顧する。それにしても、深見杏子は、いったい誰ぞや? わたくしは、聴かぬ名前だ。
 気になって、インターネットを検索してみたら、あったぞ、あった。(「カオスの本棚」http://homepage2.nifty.com/bookbox/)

 なんと、

 深見杏子=胡桃沢耕史

 だったのだ!
 ううむ。胡桃沢耕史と相性のわるいわたくしだから、深見杏子『朱い挑戦者』をつまらなく感じたのか。
 それにしても、胡桃沢耕史は、多羅尾伴内の顔負けの活躍ぶりだなあ。

 なお、『朱い挑戦者』未読の方に、老婆心ながら、「(略)・・・摘発の憂き目にあいました。・・・(略)」と、上記サイトの管理人氏の刺激てきなことばがあるけれども、くどいようだが、わたくしは、探偵小説として興味を覚えなかったと、繰りかえしておく。

 ※上記(略)は、引用者による。
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その62名探偵のかげに名事件あり

2008-08-31 08:56:44 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 名事件という言葉はきいたことがないが、ほかに言いあらわす語彙が思い浮かばないので許されよ。
 横溝正史『悪魔の設計図』角川書店(角川文庫)を読みながら、標記について、考えていた。
 横溝正史が創造した二大名探偵のうち、わたくしは、<金田一耕助>よりも<由利麟太郎(と三津木俊介)>の方に名探偵としての魅力を感じるのだが、世間一般では、そうでもないらしい。
 戦前の名探偵の代表が、<明智小五郎>ならば、戦後のそれは、<金田一耕助>という評判をよく聴く。わたくしの想いとのギャップをひしひしと感じるのだが、それは、つまり、名探偵としての魅力だけではなく、<金田一耕助>の活躍する探偵譚は、その事件そのものが複雑怪奇で謎に満ち溢れているからではないかと、いまさらながら、ようやく気づいたのだ。
 だから、<金田一耕助>の登場するような魅力ある事件を背景に、<由利麟太郎(と三津木俊介)>を置けば、<由利麟太郎(と三津木俊介)>は、大スタアになったのではないか。まあ、事件に翻弄される<金田一耕助>と、活劇むきの<由利麟太郎(と三津木俊介)>では、自ずと作品世界は変わってこようが・・・・・・。
 つくづく、<金田一耕助>と<由利麟太郎(と三津木俊介)>の共演が成立しなかったが惜しまれてならない。
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その61書鬼その3

2008-07-19 09:46:20 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 このたび、ひもといた宮田亜佐『火の樹液』(幻影城)の頁のなかほどに、栞がわりであろうか、チラシの切り取りが入っていた。

「ヤマザキ クック・サーティスリークイズ粗品進呈

 住所 藤原町大原×××
 氏名 ×××× 年令 ×× 職業 ×××××」
 (×は引用者が伏字にした)

 県名は記入していないが、「栃木県塩谷郡」であろうか。だとしたら、よくもはるばる何百キロメートルも離れたわが手もとに来たことよ。
 古書店で購入した書籍には、こういう付録が、ときどき紛れこんでいる。
 多いのは虫。とくに蚊の死骸。下品なものでいえば、髪の毛、鼻毛。もとの所有者らしき名前入りの栞もよくみる。なかには、会社の用件らしき重要なメモの類もあった。
 嬉しいところでは、いまはなき自宅から徒歩三分の古本屋で十年前ぐらいに手に入れた谷譲次『新岩窟王』(社会思想社)には、未使用の切手が相当枚数差しまれていたこともあった。
 こういうのが、新刊書にはない愉しみだ。もっとも、鼻毛などは御免被るが。
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その60好き嫌い

2008-06-29 21:10:26 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 自分でも嫌になるくらい繰りかえし発言していると思うのだが、わたくしが、今よりも若かりし(三十数年前)ころ、一読気に入った田中光二『わが赴くは蒼き大地』を、親しくしていた友人に薦めて、その友人からの返事が、「つまらなかった」との返事に愕然とした覚えがある。これは、わたくしにとって、軽いカルチャーショックで、自分の面白いと感じる本=誰もが愉しめる本という公式は充てはまることは必ずしもないのだと、はじめて気づいたのだ。
 だから、いまから、これも十数年前、泡坂妻夫の探偵小説を、これまた、つまらぬと、批判しているインターネット評をみて、探偵小説好きなら、泡坂妻夫作品のどこを否定するのだ、けれども、わたくしがここで、憤慨してもはじまらないか、と冷静になってみたものの、しばらくぶりに、

 『(略)・・・つまらなくはないんだけど、突抜けたものがないんだなあ。・・・(略)』

 と、泡坂妻夫の探偵小説(『亜愛一郎の転倒』)について、記述してある探偵小説趣味を掲げるブログを拝読(上記引用は、著作者の承諾なしの、引用者の勝手な判断により転載。)してみて、このひとは、ほんとうに探偵小説が大好きなのだろうかと、他人事ながら、心配してしまう。
 ひとそれぞれ好みはあろうが、自戒をこめて・・・綴る次第。
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その59明朗サラリーマン小説の行方

2008-06-25 14:22:43 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 何気なく、源氏鶏太『レモン色の月』(新潮文庫)を手にとって、「そうだ、源氏鶏太のホラー小説をリストアップしよう!」と、急に思い立って、悪戦苦闘すること数時間。どうやら、目処がたってきたころに、なぜか嫌な予感が、わたくしを襲う。おそるおそるインターネットを検索してみたところ、<源氏鶏太怪談の部屋(http://www.02.246.ne.jp/~pooh/kaiki/genji.htm)>というコラムを発見してしまう。なんてことだ。わたくしの書名を挙げるだけの卑小なリストなんぞを比較対象にするのが、恥ずかしいくらい、思いっきり充実しているではないか。カラー書影入りで、簡単なコメントのほか、収録している短篇の初出誌まで、詳細に記しているぞ。おまけに紹介の主は、あろうことか、わたくしが、今回読んでいる『レモン色の月』の実質てきな紹介者である<幻想文学館(http://www.02.246.ne.jp/~pooh/)>の館主(わたくしは面識はないが、左記館主のおかげで『レモン色の月』を知ったのだ)だ。(上記の<源氏鶏太怪談の部屋>は、<幻想文学館>の一部<怪奇小説の部屋>に掲載) 推測するに、この<源氏鶏太怪談の部屋>の初見が、わたくしの大脳皮質の一部に残り、書棚に並んでいた『レモン色の月』が、その記憶を惹きおこしたにちがいない。いや、それにまちがいない。そういうことにしておこう。それが、怪談つながりで、それらしいではないか。
 だから、次に列挙した書名は、幻想文学館主によるものをわたくしが、丸写ししたようなもので、自慢にならないばかりか、謗られるおそれの方が高いにちがいない。けれども、数時間に及ぶわたくしの努力に眼を瞑って、ここに掲載することを勝手ながら、お許しいただきたい。

<源氏鶏太ホラー小説リスト> 
1.『幽霊になった男』昭和45年8月(講談社)
2.『艶めいた遺産』昭和47年12月(集英社)
3.『暴力課長始末記』昭和48年11月(実業之日本社)
4.『東京の幽霊』昭和49年4月(文藝春秋)
5.『怨と艶』昭和50年8月(集英社)
6.『鏡の向う側』昭和51年5月(集英社)
7.『永遠の眠りに眠らしめよ』昭和52年8月(集英社)
8.『レモン色の月』昭和53年6月(新潮社)
9.『みだらな儀式(副題サラリーマン恐怖小説)』昭和54年5月(光文社)
10.『招かれざる仲間たち』昭和54年11月(新潮社)
11.『鬼』昭和55年10月(実業之日本社)
12.『振り向いた女』昭和57年8月(講談社)
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その58「ハードボイルドだど」

2008-04-23 18:16:18 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 <レイモンド・チャンドラーの世界(http://park22.wakwak.com/~phil/)>というサイトを見つけ、そのなかで、「あなたのハードボイル度を徹底チェック!!」という項があったので、ためしに挑戦してみる。
 
 診断書
 2008年 4月 13日 (日) 21時 00分 現在  
 あなたのハードボイル度は 45% です。
 アルバート・サムスン  タイプ
 あなたはごく一般的なハードボイルド者です。
 あなたの価値観は一般的なそれと差が無く、
 主張するところは周囲に受け入れられ易いでしょう。
 現実派でやや内省癖があるものの適度な社交性を備え
 人生を楽しむ術も心得ています。
 時おり顔を覗かせる冷徹ささえも
 周囲には美徳として映り
 一目置かれる存在かも知れません。
 また、好奇心旺盛で義侠心に富む貴方は
 思わぬトラブルに巻き込まれることも多いはず。
 よーく考えてから行動に移すよう心がけましょう。
 
 アルバート・サムスンの登場作品:「季節の終り」
 Out of Season 1984(マイクル・Z・リューイン著/早川書房刊)他
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その57加納一朗登場

2008-03-14 18:45:31 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 <加納一朗氏と氏の名作SF小説「是馬・荒馬シリーズ」を愛する人の為のサイト>と傍題にある『荒是』というサイトを発見する。
 加納一朗は、ジュニア向けの作品は、別として、また最初期の数作は別格として、どちらかというと、地味な作風なので、なんとも奇特なサイトだと、すっかり感心してしまう。だから、加納一朗ファンのわたくしは、調子にのって、以前<机上殺人現場>に書きこんでいた加納一朗『あまい死のにおい』についての感想を投稿させていただいて、果報にも掲載いただいた。
 こちらへいらっしゃるかたがたのなかにも、奇特なかたが必ずやいらっしゃると信じて、管理人氏に断わってはいないが、その『荒是』のURLを勝手に、記載してしまおう。
 http://www7a.biglobe.ne.jp/~puco/
 とても、丁寧なつくりで、管理人氏の、加納一朗と<是馬・荒馬>シリーズに対する愛がじゅうぶんに伝わってくる。

 懐かしくなって、昔、作成した加納一朗のジュヴナイルをのぞいた小説のリストを発表年代順に、いつもお世話になっている国立国会図書館のサイトにもご協力いただいて、以下、メンテナンスを試みた。とりあえず、昭和時代のみ、列記する。

 『歪んだ夜』(光風社)1962.11
 『シャット・アウト』(東都書房)1963.3
 『白い残像』(宝石社)1963.5→(徳間書店)1986.12
 『冷えた気流』(青樹社)1963.5
 『影の接点 』(青樹社)1964.2
 『背後の標的』(光風社)1964.4
 『無性集団』(双葉社)1973→『生殖センターの殺人』(角川書店)1983.4
 『背信の荒野』(青樹社)1973.3→(角川書店)1984.3
 『女王陛下の留置場』(弘済出版社)1974.1→(角川書店)1982.7
 『野獣の標的』(日本文華社)1976.8→(日本文華社)1984.6→(徳間書店)1985.4
 『殺しはパリで』(弘済出版社)1976.9→『パリの空の下死体は流れる』(角川書店)1982.9
 『死霊の王国』(インタナル出版部)1977.1→(角川書店)1982.10
 『北方領土殺人事件』(日本文華社)1977.8→『流氷殺人事件』(徳間書店)1985.12
 『パリ殺人事件』(徳間書店)1981.1→『蜘蛛たちの夜』(徳間書店)1989.2
 『殺人フィルムへの招待』(徳間書店)1981.10
 『裂けた旅路』(徳間書店)1982.6
 『暗殺回路』(角川書店)1983.4
 『血の色の冬』(徳間書店)1983.6
 『ホック氏の異郷の冒険』(角川書店)1983.8→(天山出版)1989.3→(双葉社)1998.11
 『黄海大脱走』(徳間書店)1984.4
 『白夜の狙撃者』(日本文華社)1984.9
 『にごりえ殺人事件』(双葉社)1984.12→(双葉社)1986.11
 『魔性の天使』(徳間書店)1986.3
 『特急“あじあ"殺人行』(双葉社)1986.12→(双葉社)1989.2
 『開化殺人帖』(青樹社)1987.9
 『ホック氏・紫禁城の対決』(双葉社)1988.1→(双葉社)1990
 『帝都誘拐団』(青樹社)1988.5
 『ホック氏・香港島の挑戦』(双葉社)1988.12
 『黄金幻想殺人事件』(大陸書房)1989.2
 『異人の首』(青樹社)1989.4

 年代順にいうと、『白夜の狙撃者』までは、『冷えた気流』および『背後の標的』をのぞくと、すべて読んでいるはずだ。『背後の標的』は、途中まで読みかけで、本は、行方不明になっちゃった。『冷えた気流』は、本自体見かけたことがない。ずうっと捜しているのだけれど、わたくしの努力が足りないせいか、まったく見かけない。心優しき何処のどなたか、わたくしにお譲りいただけないだろうか。
 それ以降については、ここに載せていない平成時代の作品も含め、<ホック氏>シリーズと幾冊程度ぐらいしか読了済ではない。
 あれれ、わたくしってば、ほんとうに加納一朗ファンなのか?
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その56釧路の方へ

2008-03-02 08:52:14 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 さて、高城高である。

 3月1日の<深夜の告白>に、書きこんだとおり、漸く『墓標なき墓場』を入手することができた。まあ、元版ではなく、復刊(文庫)版であるのが癪だが。
 かんじんの中身は、まだ読んでいない(何かの記念日に読もうとおもっている)のだが、やっぱり気になるところがあるので、云わないではすまない。
 解説者の起用についてだ。
 <新保博久>が、解説を務めているのだけれども、出版社は、起用を誤ったのではないかと感じる。
 新保氏の、そのよどみない平易な記述は、わたくしにとって、とても理解しやすいのだが、氏の日頃の文章からは、国産ハードボイルド探偵小説愛好家であるとは、思えない。今回の解説も、引用からの推測が多く、冷静に、慎重に筆をすすめ、いかにも解説解説している出来だ。
 本書は、何十年ぶりの復刊だ。国産ハードボイルド探偵小説(あるいは高城高の探偵小説)を心から愛するひとの、もっと熱い、叩きつけるような想いをぶつけてくる力のこもった、解説文を読みたかった。
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その55『百人一書』~戸田和光氏へ(補遺)

2008-02-16 07:36:22 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 ということで、わたくしの『百人一書』を紹介させてもらったが、つけくわえることが二三あるので、次に挙げる。

 1.<評判作のようだが、未読につき、選べなかった作品> 

 安部公房『石の眼』
 開高健『片隅の迷路』
 宗田理『未知海域』
 藤本明男『白い対角線』
 森田雄三『あたしが殺したのです』
 
 2.<わたくしの肌にあわない作風の作家>
 
 斎藤栄
 佐々木丸美
 草野唯雄
 高橋克彦
 戸川昌子
 
 3.<世間の評価とわたくしのそれがあまりにもかけ離れている作品>

 梶山季之『黒の試走車』
 邦光史郎『社外極秘』
 栗本薫『ぼくらの時代』
 佐野洋『轢き逃げ』
 清水一行『動脈列島』
 
 1.については、自らの不勉強ぶりを露呈しているのが明白だけれども、読んでいないのだからしょうがない。でも、ひょっとしたら、このうち半分ぐいは、読んでいるかもしれない。既読か未読かの区別もつかないくらい、印象の薄い作品ではないような気がするのだが。
 2.挙げている作家本人、ファンの方には、まことに申し訳なく思う。いっそのこと、作者名は伏せようといったんは考えたのだけれども、それでは、わたくしの本心が伝えられないと考え直し、列記させていただいた。
 概して、わたくしは、文体によって、好みが左右されるようだ。
 だから、数合わせで、選出はしたが、例えば、高木彬光、笹沢左保、海渡英祐の文章も、正直に云うと、好きではない。
 3.松本清張、有馬頼義、水上勉等の社会派探偵小説は、大好きなのに、会社派探偵小説(産業ミステリ)は嫌いだ。
 邦光史郎は、<神原東洋>を探偵役とする一連のシリーズの方が、はるかに興味深いのに、そちらの評価はあまり聴かないなあ。
 栗本薫の探偵小説は、残念ながら、あまり読んでいない。わたくしの少ない読書のうちでも、『絃の聖域』が、まあまあの出来栄えだったような記憶があるが、その程度。印象を悪くさせているのが、歴代江戸川乱歩賞受賞作のなかでも、もっとも劣ると(わたくしが勝手に思いこんでいる)『ぼくらの時代』のせいだ。ねらいが、あざとすぎるのだ。
 昭和三十年代と昭和五十年代の佐野洋作品は、ばつぐんに面白いのに、どうしてか、昭和四十年代のそれは、一向に面白くない。その代表例が、『轢き逃げ』だ。
 
 さいごに、いちばん大きななぞであろか、どうして百冊選ばずに、九十九冊にしたかと云うと、既読の中で、弩級の傑作を選びわすれているような、記憶のひっかかりで、あえて、空席を残しておいたと判断してくれたまえ。
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その54続続続『百人一書』~戸田和光氏へ

2008-02-14 12:55:31 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 (項前)
 41.旧題『あしながおじさん殺人事件』で上梓されるべきだったし、それ以前に<日本推理サスペンス大賞>を受賞すべき作品だったと、つくづく残念。
 42.悪意ある解決に向うとは。国産海洋探偵小説の雄による意外なる連作集。
 43.バカミスなのだが、同好の士の皆さま方。そんなに大枚払って購入する代物じゃあございませんぜ。酒の席のつまみ話にはなるかもしれぬぐらい。
 46.タイトルに化かされちゃいけないよ。
 47.男の子なら読め、女の子なら感じろ。  

 51.辻真先 宇宙戦艦富嶽殺人事件(徳間文庫)
 52.土屋隆夫 影の告発(角川文庫)
 53.角田喜久雄 高木家の惨劇(春陽文庫)
 54.都筑道夫 悪意銀行(角川文庫)
 55.天藤真 殺しへの招待(角川文庫)
 56.戸板康二 グリーン車の子供(講談社文庫)
 57.塔晶夫 虚無への供物(講談社文庫)
 58.東郷隆 定吉七は丁稚の番号(角川文庫)
 59.富島健夫 容疑者たち(徳間文庫)
 60.中薗英助 密航定期便(講談社文庫)

 ここいらあたりは、順当だろう。
 53.ジョルジュ・シムノンを、というより、ムッシュ・メグレを、フランスから日本へ、移殖したと思いたまえ。
 54.たぶん、最も、悩んだ選択だったのかな? 口やかましいかもしれないけれども、これほど、わたくしたちを、心底愉しませてくれる、現代を舞台にした、探偵小説は、どこを捜せば見あたるのであろうか。
 58.続篇は、ある大人の事情から、望めないらしい。残念。

 61.中町信 奥只見温泉殺人事件(徳間文庫)
 62.中村真一郎 黒い終点(角川書店)
 63.夏樹静子 天使が消えていく(講談社文庫)
 64.南條範夫 三百年のベール(文藝春秋社)
 65.仁木悦子 殺人配線図(角川文庫)
 66.仁科東子 針の館(光文社)
 67.西村京太郎 D機関情報(講談社文庫)
 68.西村寿行 滅びの笛(角川文庫)
 69.新田次郎 空を翔ける影(光文社)
 70.日影丈吉 内部の真実(教養文庫)
 
 67.西村京太郎の欠点(わたくしの嫌いなところ)は、初期作に顕著だが、その甘っちょろいヒューマニズムだ。その臭みを感じない『D機関情報』は、国産スパイスリラーの傑作。

 71.東野圭吾 放課後(講談社文庫)
 72.樋口有介 ぼくと、ぼくらの夏(文春文庫)
 73.平井呈一 真夜中の檻(創元推理文庫)
 74.平石貴樹 だれもがポオを愛していた(創元推理文庫)
 75.広瀬正 T型フォード殺人事件(集英社文庫)
 76.福島正実 異次元失踪(角川文庫)
 77.藤沢周平 秘太刀馬の骨(文春文庫)
 78.藤原審爾 夜だけの恋(角川文庫)
 79.藤村正太 脱サラリーマン殺人事件(廣済堂)
 80.藤本泉 地図にない谷(徳間文庫)

 75.76.とSFプロパーの作家を並べたが、その志の高さに唸るべし。
 78.根来刑事は、わたくしが、最も愛する探偵のひとり、と告白しておく。 

 81.船戸与一 夜のオデッセイア(徳間文庫)
 82.星新一 気まぐれ指数(新潮文庫)
 83.眉村卓 ぬばたまの・・・(講談社文庫)
 84.三好徹 風は故郷へ向う(中公文庫)
 85.宮脇俊三 殺意の風景(光文社文庫)
 86.水上勉 耳(角川文庫)
 87.松本清張 零の焦点(新潮文庫)
 88.もりたなるお 真贋の構図(文春文庫)
 89.森村誠一 異型の白昼(角川文庫)
 90.山下武 異象の夜に(審美社)

 82.本リスト中でのベストワン。
 84.『乾いた季節』と入れ替えも可。
 90.苦しまぎれ。それは50.と同じ。面白そうでいて、面白くない。なぜ選んだかというと、他に思いあたらなかったから。失礼。

 91.山田太一 飛ぶ夢をしばらく見ない(新潮文庫)
 92.山田風太郎 妖異金瓶梅(角川文庫)
 93.山田正紀 火神を盗め(文春文庫)
 94.山村美紗 花の棺(徳間文庫)
 95.山本周五郎 寝ぼけ署長(新潮文庫)
 96.結城昌治 白昼堂々(角川文庫)
 97.夢枕獏 飢狼伝(双葉文庫)
 98.横溝正史 本陣殺人事件(角川文庫)
 99.連城三紀彦 運命の八分休符(文春文庫)

 91.惜しむらくは、山田太一の長篇小説は、どこかしら一箇所、必ず破綻しているところがあるのだ。
 98.横溝正史の長篇探偵小説のベストは、いまになって思うと、『蝶々殺人事件』だと考える。けれども、習作のような『本陣殺人事件』に惹かれるわけは、その動機をはじめ、すべてが、わたくしにとっては、ことばの使い方をまちがっていると重重承知のうえ、美しいと信じているからだ。
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