大村大次郎ブログ

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個人事業者の福利厚生費についての回答

2013-10-30 11:47:04 | Weblog
長らくお待たせしております個人事業者の福利厚生費の件について、現在のところの状況をお話しします。
この問題について、まず私は国税の電話相談室に尋ねました。

私「一人でやっている個人事業者は福利厚生費を使えないのですか?」
M相談官「福利厚生費は従業員のためのものなので、一人でやっている個人事業者は使えません」
私「根拠となる条文を教えてください」
M相談官「根拠となる条文はありません」
私「条文がないのに、なぜダメだといえるのですか?
M相談官「福利厚生費というのは、従業員のためのものだからです」
私「所得税法上、福利厚生費の定義はあるんですか?」
M相談官「特に定義はありません」
私「定義がないのに、なぜ福利厚生費が従業員のためのものなどと言えるんですか?定義がないのなら、社会通念上で判断すべきですよね?社会通念上で考えるならば、企業や公務員は、上から下まで皆、福利厚生を受けられます。それは事業の経費として計上されています。経営者や幹部の分も含めて、すべての福利厚生費は、社会通念上、事業の経費として認められているものなのに、個人事業者だけが認められないのはおかしいですよね?」
M相談官「だから、福利厚生費というのは、従業員のためのものだから」
私「福利厚生費の定義はないって言われましたよね?」
M相談官「このまま続けてもどうしようもないので、後ほど詳しく回答します」
私「では、一人でやっている個人事業者に福利厚生費が認められないというのは、法的な根拠があるかどうかを調べて明確にお答えください。法的な根拠のあるものなのか、それとも社会通念を元にした国税の見解に過ぎないものなのか?」

で、M相談官からは、しばらく経って次のような回答がきました。

「個人事業者の福利厚生費は、家事消費であり、損金には計上できない。この解釈は東京国税局の審理部門に確認済みであり、東京国税局の見解である。これ以上、法的根拠など、詳しいことを知りたければ、国税庁に聞いて欲しい」
 
M相談官にこれ以上聞いても仕方がないので、私は国税庁に直接聞くことにし、電話で問い合わせました。
すると、「電話で直接、回答できないので、事前回答制度を利用してくれ」とのことでした。
しかし、事前回答制度というのをよくよく調べてみると、自分が実際に行なった取引じゃないと回答できないのです。
「私はこういう取引をして、こういう税務処理をしました。これで合っているでしょうか?」
とお伺いをたて、それに国税庁が答えるというわけです。
つまり、実際にやってみた後でその正否を教えてやる、というわけです。
「実際に公道を走ってみろ。その後で、制限速度を教えてやる」
というようなものです。普通は、事前に制限速度がわからなければ、公道は走れないでしょう?こんな理不尽なことはないわけです。
国税庁が、なぜ、 税法について事前に明確に答えないか、というと、税金の世界にはグレーゾーンがたくさんあって、国税側はそれを自分本位に解釈して、税金を多くせしめていることが多々あるのです。それをはっきりさせると、都合が悪いことがいろいろ出てくるので、なるべく曖昧にしているのです。
しかも、この事前相談制度を受けるには「税金を安くするつもりはありません」という誓約書まで出さなくてはならないのです。みんな税金を安くするために、国税庁に質問しているわけでしょう?
時代錯誤も甚だしいというか、現実離れしているというか。

で、仕方がないので、一旦、事前回答制度を利用するのは保留し、国税庁の広報に次のような二つの質問を文書にして送りました。

質問1
現在、税務署は、「個人事業者の福利厚生費はすべて家事消費に含める」という解釈をしている。しかし、一人でやっている個人事業者が、福利厚生費を損金計上できないという法的根拠はない。税務署の解釈「福利厚生費は家事消費になる」というのは、何の法律を根拠にしているのか?
 会社では経営者も含めすべての従業員の福利厚生費は事業の経費として認められている。また国税職員も含め公務員は充実した福利厚生を持ち、それは自分の給料ではなく官庁の経費から支出されている。
税金の支出というのは、一般の企業以上に厳しく必要性を検討されなければならないはず。公務員の福利厚生費は、どうしても業務の遂行上必要なものだから、税金の支出が認められているわけである、
にもかかわらず、では、なぜ個人事業者の福利厚生費が認められないのか?
個人事業者の福利厚生費が家事消費とされるならば、公務員の福利厚生費も家事消費ということになる。家事消費を税金で賄っているのか?

質問2
現在、国税庁は、税務署の方針に対する質問などに、正式に答える窓口がない。一応、「事前回答制度」があるが、実際の取引じゃないと回答せず、煩雑な書類をすべて提出しなければならない、妙な誓約をさせられるなど、非常にハードルの高い制度になっており、普通の市民が普通に利用できるものではない。
それは、税務行政を司る官庁としては、手落ちではないか?
税金というのは、法にのっとったもの以外は1銭たりとも取ってはならないはず。だから税法について、市民から疑問がでれば、国税庁は即座に明確に答えなければならないはずじゃないか?
それができないなら、税金の徴収はしてはならないのではないか?

この質問書に対して、国税の広報窓口からはまったく返答はありませんでした。「文書を受け取った」「返答は出来ません」という類の返答さえありませんでした。この広報窓口は、市民からの意見を聴取する窓口です。にもかかわらず、市民の質問に対して、「受け取った」という返答さえしないのです。
いかに国税が横暴か、ということです。

またこの質問書は、国税庁の次長である西村善嗣氏(現東京国税局長)にも送りました。西村氏からも、「文書を受け取った」という返答さえない、という状況です。

とりあえず、今のところは、こういう状況です。
最終的な結論を得るには、まだまだ相当な時間がかかりそうなのです。
ですが、この問題は国税の暗部を象徴しているものでもあるので、今後も、新聞社、雑誌社を通して国税庁に質問を送るなどして、すっきりするまで頑張りたいと思っています。

なので、個人事業者の福利厚生費については、今のところ計上しない方が無難です。
「税務署員だけのヒミツの節税術」の記述は不備、不十分だったということになります。
申し訳ありません。

それと個人事業者で福利厚生費を計上された方で、税務署の指導、修正を受けた方などいましたら、情報をお寄せください。
いろいろ情報を集めた上で、国税庁に質問しようと思っています。