就活に焦って、「資格ハンター」になるな!
資格は学業の一環で取得するべき
田宮 寛之 :就職四季報プラスワン編集長
2014年11月10日

就活するにあたって資格の有無を気にする学生は少なくない。
学業に精を出すわけでもなく、サークル活動や留学などもせず、
漫然と学生生活を過ごしてきた就活生は
自分にPRできるものがないことに気づき焦る。
そして、とりあえず資格を取ろうとする。
しかし、企業は学生が短期間で取得できる資格など評価しない。
それでは、学生は何をすればいいのだろうか。
今回は学生からの資格に関する質問に回答する。
大学は専門学校ではない

上の画像:「就職四季報2016年版」は11月17日発売
Q1:大学では就職関連のセミナーがたくさん開催されています。
3月から就活スタートと聞いていましたが、
実際はすでに始まっている感じで焦っています。
私は、サークルに入っていませんし、留学経験もありません。
バイトは短期のものをいくつかやったことはありますが、
長期間やったことはありませんので自己PRすることがありません。
親は何か資格を取ることを勧めてきます。
専門学校に行くおカネも出してくれると言います。
就活で役に立つ資格は何でしょうか。
(都内・私大文系・男子A)
在学中に資格を取る学生が増えています。
学生に資格取得を強く勧める大学も増えました。
しかし、学生が数カ月で取得できる程度の資格では、
就職にプラスになることはありません。
司法試験や公認会計士などの資格であれば有利になりますが、
今からこうした資格を取得するのは不可能でしょう。
企業は就活生が学生としてどのように活動をしてきたのか、
その結果、どの程度成長したのかを見ています。
専門学校生ではないので、資格を評価することはあまりありません。
学部に関連する資格ならばともかく、
学部とは無関係の資格ではかえってマイナスの評価をされる場合さえあります。
企業から「何をしたいのかわからない学生」
「就活のために無理して資格を取得した学生」
といった評価をされてしまいます。
最近の企業は、学生が在学時にいかにきちんと勉強したかを重視します。
本格的な就活開始までは少し時間があるので、
ゼミの勉強内容を深めてください。
面接ではゼミでの研究内容をわかりやすく伝えること、
そして、自分がいかにゼミで頑張ったのかを
述べられるようにしましょう。
また、最近は成績表を提出させて、
その成績表を見ながら面接をする企業が増えています。
ゼミ以外の勉強にどのように取り組んだのか、
どんな苦労をしたのかなどについても、
きちんと答えられるように準備してから面接に臨んでください。
リクルートキャリアが発表した「就職白書2014」によれば、
企業は学生の業界・企業研究が不足していることに
不満を感じていることがわかります。
資格がないことに不満を持っているという結果は出ていません。
自社について研究していない学生にエントリーされても、
採用担当者はいい気がしないでしょう。
また、研究不足の学生は入社してから
「こんな会社とは思わなかった」
などとすぐに辞めてしまう可能性があるので、
採用担当者は気が気ではありません。
以上のことから、特に自己PRに使えるような材料がなくても、
業界・企業研究をみっちり行えば内定に近づくと言えます。
学生時代に勉強もあまりせず、かといって
サークル活動なども特にしていなかった学生は、
とにかく業界・企業研究に力を入れてください。
専門学校に通って資格を取っている場合ではありません。
Q2:不動産会社に入るには宅地建物取引主任者(宅建)の資格が
有利だと聞いたことがあります。
宅建は簡単ではありませんが、
今から頑張れば何とかなると思います。
宅建取得は就職にプラスになりますか。
(関西・私大文系・男子B)
どうしても不動産会社に就職したい場合、
宅建を持っていることで熱意を示すことはできるでしょう。
しかし、宅建があるからそれで即内定ということはなりません。
私が以前、取材した不動産会社の採用担当者は、
「宅建は必要条件ではない。
不動産会社はストレスが多いので、
優秀で精神的に強い学生を採用したい。
宅建なんて入社後に勉強させればいいだけのこと」と言っていました。
勉強ができて学生時代に宅建を取得していても、
精神的に強くない学生は採用したくないそうです。
ちなみに、宅建の試験は年1回で、10月に行われます。
現3年生が今から就職のために受験する機会はありません。
勉強の一環で取得した、という説明がいい
Q3:商学部に通っており、
簿記やファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持っています。
せっかく取った資格なので就職に生かしたいのですが、
どうすればいいでしょうか。
(都内・私大文系・女子C)
簿記やFPの資格を持っているのは素晴らしいことです。
しかし、こうした資格を持っているからといって、
それが直接、内定につながるわけではありません。
面接などでは、資格を持っているので就職させてほしい、
とアピールするのではなく、
商学部で学生として会計の勉強をするときに、
何か目標があったほうが勉強しやすく効率的なので、
簿記やFPを目標としたと説明すれば印象がいいでしょう。
資格を取ること自体が目標なのではなく、
学部の勉強の一環として取得したという形が理想です。
資格自体が目標では、
専門学校の学生との区別がつきません。
金融以外の企業でも、入社後に
簿記研修や簿記の2級や3級の取得を課す企業があります。
入社前から会計に関する知識を持っていることはいいことです。
た だ、資格を持っていることを強調しすぎるのは
マイナスになります。エントリーシート(ES)に
簿記やFPの資格を記入しておいて、
質問が来たら取得の経緯 や学部の勉強との関連を話すようにしてください。
資格に関してはさりげなくアピールするのが有効です。
TOEICは600点がメド
Q4:先輩からTOEICのスコアが重要だと聞きました。
内定を取るには何点以上必要ですか。(中部・文系・女子D)
最近はTOEICのスコアを重視する企業が増えてきました。
経済のグローバル化が進むので、
企業は英語能力の高い学生を求めています。
武田薬品は新卒応募条件として730点以上、
楽天は800点以上という基準を設定しています。
こうした企業では条件を満たしていなければ、
ES段階で落とされてしまいます。ただ、
入社試験の段階で何点と明確に基準を決めている企業は
それほど多くありません。
それでは、何点ぐらいならばいいのでしょうか。
TOEICスコアは730点以上であれば英語で仕事をすることが可能とされているので、
730点以上あるのが理想ですが、
多くの学生にとってはかなり高いレベルです。
電気機器メーカーのパナソニックでは、
社員が主事・参事に昇格するときに求められる基準が550点です。
ソニーでは係長級への昇格要件が650点、
トヨタ自動車では600点です。代表的な企業の
こうした水準から推測すると、就活生が
エントリーするときに600点程度あればいいのではないでしょうか。
しかし、600点未満でも優良企業から内定を取ったケースは多数あります。
TOEICの点数が低いならば、ほかのことで
カバーするぐらいの気持ちで就活してください。
就活に関する悩み、質問は、こちらにお寄せください。(外部サイト)
https://form.toyokeizai.net/enquete/dm1409b/
http://toyokeizai.net/articles/-/52717より
資格は学業の一環で取得するべき
田宮 寛之 :就職四季報プラスワン編集長
2014年11月10日

就活するにあたって資格の有無を気にする学生は少なくない。
学業に精を出すわけでもなく、サークル活動や留学などもせず、
漫然と学生生活を過ごしてきた就活生は
自分にPRできるものがないことに気づき焦る。
そして、とりあえず資格を取ろうとする。
しかし、企業は学生が短期間で取得できる資格など評価しない。
それでは、学生は何をすればいいのだろうか。
今回は学生からの資格に関する質問に回答する。
大学は専門学校ではない

上の画像:「就職四季報2016年版」は11月17日発売
Q1:大学では就職関連のセミナーがたくさん開催されています。
3月から就活スタートと聞いていましたが、
実際はすでに始まっている感じで焦っています。
私は、サークルに入っていませんし、留学経験もありません。
バイトは短期のものをいくつかやったことはありますが、
長期間やったことはありませんので自己PRすることがありません。
親は何か資格を取ることを勧めてきます。
専門学校に行くおカネも出してくれると言います。
就活で役に立つ資格は何でしょうか。
(都内・私大文系・男子A)
在学中に資格を取る学生が増えています。
学生に資格取得を強く勧める大学も増えました。
しかし、学生が数カ月で取得できる程度の資格では、
就職にプラスになることはありません。
司法試験や公認会計士などの資格であれば有利になりますが、
今からこうした資格を取得するのは不可能でしょう。
企業は就活生が学生としてどのように活動をしてきたのか、
その結果、どの程度成長したのかを見ています。
専門学校生ではないので、資格を評価することはあまりありません。
学部に関連する資格ならばともかく、
学部とは無関係の資格ではかえってマイナスの評価をされる場合さえあります。
企業から「何をしたいのかわからない学生」
「就活のために無理して資格を取得した学生」
といった評価をされてしまいます。
最近の企業は、学生が在学時にいかにきちんと勉強したかを重視します。
本格的な就活開始までは少し時間があるので、
ゼミの勉強内容を深めてください。
面接ではゼミでの研究内容をわかりやすく伝えること、
そして、自分がいかにゼミで頑張ったのかを
述べられるようにしましょう。
また、最近は成績表を提出させて、
その成績表を見ながら面接をする企業が増えています。
ゼミ以外の勉強にどのように取り組んだのか、
どんな苦労をしたのかなどについても、
きちんと答えられるように準備してから面接に臨んでください。
リクルートキャリアが発表した「就職白書2014」によれば、
企業は学生の業界・企業研究が不足していることに
不満を感じていることがわかります。
資格がないことに不満を持っているという結果は出ていません。
自社について研究していない学生にエントリーされても、
採用担当者はいい気がしないでしょう。
また、研究不足の学生は入社してから
「こんな会社とは思わなかった」
などとすぐに辞めてしまう可能性があるので、
採用担当者は気が気ではありません。
以上のことから、特に自己PRに使えるような材料がなくても、
業界・企業研究をみっちり行えば内定に近づくと言えます。
学生時代に勉強もあまりせず、かといって
サークル活動なども特にしていなかった学生は、
とにかく業界・企業研究に力を入れてください。
専門学校に通って資格を取っている場合ではありません。
Q2:不動産会社に入るには宅地建物取引主任者(宅建)の資格が
有利だと聞いたことがあります。
宅建は簡単ではありませんが、
今から頑張れば何とかなると思います。
宅建取得は就職にプラスになりますか。
(関西・私大文系・男子B)
どうしても不動産会社に就職したい場合、
宅建を持っていることで熱意を示すことはできるでしょう。
しかし、宅建があるからそれで即内定ということはなりません。
私が以前、取材した不動産会社の採用担当者は、
「宅建は必要条件ではない。
不動産会社はストレスが多いので、
優秀で精神的に強い学生を採用したい。
宅建なんて入社後に勉強させればいいだけのこと」と言っていました。
勉強ができて学生時代に宅建を取得していても、
精神的に強くない学生は採用したくないそうです。
ちなみに、宅建の試験は年1回で、10月に行われます。
現3年生が今から就職のために受験する機会はありません。
勉強の一環で取得した、という説明がいい
Q3:商学部に通っており、
簿記やファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持っています。
せっかく取った資格なので就職に生かしたいのですが、
どうすればいいでしょうか。
(都内・私大文系・女子C)
簿記やFPの資格を持っているのは素晴らしいことです。
しかし、こうした資格を持っているからといって、
それが直接、内定につながるわけではありません。
面接などでは、資格を持っているので就職させてほしい、
とアピールするのではなく、
商学部で学生として会計の勉強をするときに、
何か目標があったほうが勉強しやすく効率的なので、
簿記やFPを目標としたと説明すれば印象がいいでしょう。
資格を取ること自体が目標なのではなく、
学部の勉強の一環として取得したという形が理想です。
資格自体が目標では、
専門学校の学生との区別がつきません。
金融以外の企業でも、入社後に
簿記研修や簿記の2級や3級の取得を課す企業があります。
入社前から会計に関する知識を持っていることはいいことです。
た だ、資格を持っていることを強調しすぎるのは
マイナスになります。エントリーシート(ES)に
簿記やFPの資格を記入しておいて、
質問が来たら取得の経緯 や学部の勉強との関連を話すようにしてください。
資格に関してはさりげなくアピールするのが有効です。
TOEICは600点がメド
Q4:先輩からTOEICのスコアが重要だと聞きました。
内定を取るには何点以上必要ですか。(中部・文系・女子D)
最近はTOEICのスコアを重視する企業が増えてきました。
経済のグローバル化が進むので、
企業は英語能力の高い学生を求めています。
武田薬品は新卒応募条件として730点以上、
楽天は800点以上という基準を設定しています。
こうした企業では条件を満たしていなければ、
ES段階で落とされてしまいます。ただ、
入社試験の段階で何点と明確に基準を決めている企業は
それほど多くありません。
それでは、何点ぐらいならばいいのでしょうか。
TOEICスコアは730点以上であれば英語で仕事をすることが可能とされているので、
730点以上あるのが理想ですが、
多くの学生にとってはかなり高いレベルです。
電気機器メーカーのパナソニックでは、
社員が主事・参事に昇格するときに求められる基準が550点です。
ソニーでは係長級への昇格要件が650点、
トヨタ自動車では600点です。代表的な企業の
こうした水準から推測すると、就活生が
エントリーするときに600点程度あればいいのではないでしょうか。
しかし、600点未満でも優良企業から内定を取ったケースは多数あります。
TOEICの点数が低いならば、ほかのことで
カバーするぐらいの気持ちで就活してください。
就活に関する悩み、質問は、こちらにお寄せください。(外部サイト)
https://form.toyokeizai.net/enquete/dm1409b/
http://toyokeizai.net/articles/-/52717より