皇族の詠まれた唯一の将棋についての和歌でしょうか?
★以降が私の註釈
江連盛臣氏作 A
正 解
42歩成、同金、62歩成、同金、43桂打、同金、63桂打、同金、52歩成、同玉、43銀成、41玉、32金、51玉、52成銀、同玉、63銀成、61玉、72金、51玉、43桂生迄21手
形詰として一問題位は面白いと思い選定しました容易な問題解答者全部と云う位正解でした尚左右の形が同じである為初手四二歩成でも六二歩成でも又詰上り四三桂生でも六三桂生でも正解です。
☖読者評
伊藤藤三郎「形もきれいに詰上りもよい詰め乍ら楽しかった」
高梨堅「平凡にすらすら詰んで面白味なし」
★手順は殆ど一本道ですが、左右で同じような手順を繰り返すミニ趣向っぽくて面白いし、詰上がりも曲詰で、佳作だと思います。
野村幸一氏作 B
正 解
62銀、72玉、73歩、82玉、71銀生、73玉、72金、84玉、66馬、94玉、76馬、84玉、66馬、94玉、67馬、84玉、57馬、94玉、67馬、84玉、94馬、同歩、76桂、93玉、82銀生、92玉、93歩、同桂、81銀生迄29手
☖選者評
中学校向きとしては一寸難しいとの評もあったが実戦向として仲々面白みがある様に考えて出題しました。62銀72玉73歩82玉の手順及び馬を76に引いて鋸引きに57桂を入手以下寄せて出る処作者の苦心が伺える。解答者の内62銀63玉として以下31手にした方は左の手順で早詰駒余り不正解と致しました。その手順は62銀63玉53馬72玉73歩82玉71銀生73玉64金84玉74金同玉以下詰です。この手順で各自御研究下さい。
☖読者寸評
後藤侃千「三回に亘る銀生又57桂を入手して94馬とただくれる点は胸がスーとする今月のトップ作品」
金田弘「十三手目66馬に対し75歩合の手あれど手数多きのみにて意味なし57桂が余りに作意手順を示し過ぎておる」
★実戦型からの馬鋸は意外で、最後も実戦型っぽい収束になるのは面白いです。
高等学校 担当 大橋虚士
藁谷憲弘氏作 B
24龍、36玉、69角、58歩、同角、同龍、46金、同銀生、27龍、35玉、47桂、同銀成、24龍、36玉、34龍、26玉、37銀、同金、同馬、同成銀、17金、同玉、37龍、16玉、27龍、15玉、16歩、14玉、15銀、13玉、24龍、12玉、21龍、13玉、25桂、同桂、24銀、14玉、15歩迄39手詰
(説明)絶妙の好課題であった。11手目47桂、同龍として詰めた方が大分あった。ここは同銀成を見落としたのか、自分の落手を棚に上げて酷評を下す方があった。再度24龍、36玉、34龍は旨い。誠に二三筋の攻防は妙味あるものといえましょう。
☖諸氏の評
大井美好「69角で1歩を握り、打歩詰の局面をめぐって三四筋の攻防は妙味を満喫させる。尚37銀打の応手も同金でなければならない所、収束と共に芸の細かさを思わせる作品である。」
米津正晴「堂々たる構成、特に玉方33桂は旨い駒」
★打歩詰に誘致する為46銀生~47銀成と応じ、14手目36玉で手が途切れたように見えますが、俗手の34龍が好手で続きます。収束も無難ですが最終手は普通は23龍(T-BASEは最終手23龍)としてしまうところで、少し味が悪いです。
奥薗幸男氏作 C
31銀、12玉、13銀、同玉、22銀打、12玉、21銀生、13玉、25桂、24玉、33桂成、25桂、23成桂、同玉、25飛、24角、32銀生、13玉、22銀生、12玉、11銀成、同玉、13香、12桂、21銀成、同玉、24飛、同桂、32角、31玉、41歩成、22玉、23歩、13玉、25桂、12玉、22歩成、同玉、33桂成、11玉、21角成、同玉、32金、12玉、22金、13玉、23金迄47手詰
(説明)極く平易な詰手筋の応用を巧みに織込ませて終りまでよくまとめたものである。42歩も危く余詰を避けている完全局でもあった。即ち23手目13香打の処21銀成12玉22成銀13玉23成銀同玉24飛同玉33角13玉25桂12玉13香23玉にて不詰なのである。42歩がなければ42角打を生じ以下39手詰みあり。並製詰将棋の見本という評あり、51香54桂の配置重しとも云って来た。作者の参考に書添えて置く。感覚的に新味に乏しいためなのかもしれない。
☖諸氏の評
神原健「実戦型配置のうちに合駒限定三回を含み変化また微妙な綾を有して多岐、収束も引締っている傑作。但し19香47銀は28桂一個の配置(飛は26に移す)で足りるのではないか。」
福富昌美「構図に無理がなく且つ合駒の綾あり本図は実戦向きの好作として高く評価されるべきである。」
★角合~桂合が入り巧く纏まっています。21手目11銀成~13香で手と繋ぐのは巧妙です。目新しくはありませんが、実戦型作品として記憶すべき作品と思います。
大学 担当 土屋 健
脇田博史氏作 A
13金、11玉、33角成、22桂、同金、同金、12歩、同玉、34角、23金打、24桂、13玉、22馬、同金、14金、同玉、25銀、13玉、12桂成、同金、14歩、22玉、12角成、同玉、24桂、23玉、32銀不成、33玉、43金、22玉、21銀成、同玉、32金、11玉、23桂迄35手詰
佐々木誠一氏 紛れ及び変化多岐で直感に依る詰手順発見出来ず、最後の手段として虱潰し式検討の結果漸く詰手順を拾い出した、驚き入った名作です。
渡部正裕氏 この問題を解くのに二日かかった。初手が広く34角以下の変化を極め尽くした時は得意の絶頂だった、四問中最難関で実戦型ながら仲々詰まし難い味を持って居る、佳作。
選者 一見フライ級に見えるが、なかなかどうして内容はヴォリウムがあり且つヴァラエティに富み、検討に当り特に閉口したのは紛れが多く、それが常識的であり亦如何にも紙一重の処で詰がある様に見えるからだ。これは解答者にはより切実な問題であったと思ふ。初手34桂或は14桂が見えるが11玉で詰まず、さりとて32銀成は同玉42金23玉で駄目、42金の処44桂は43玉32角53玉42角成44玉で呑船の魚を大海に逸して仕舞ふ、好手13金を発見11玉に33角成が亦何んとなくいやな手で44角は22桂合で不詰故仕方がない、4手目22桂合を他の駒なら早い。例えば香合なら同馬同金23桂同金13香迄である。7手目12歩から34角がウマイ手順で一寸23桂12玉24桂13玉22馬へ行き度いが14玉で後援続かず、34角は打ち難い角だが23への合駒はそれ以上に難しい、前述の変化手順で金以外はいずれも早く詰む事を発見、ヤレヤレと云ふ処である。34角で26銀に紐が付けばどうやら峠は越した。あとは12桂成より14歩を打つ手に気付けばザッツO・Kである。駒配り、詰手順、詰上りe・t・cいずれも標準以上で中編作としては作者の実力を発揮した佳品と言へよう。
この作者の作品は7月号の課題の如く一見実戦型を得意とすると思へるが所謂実戦型とは内容が全く違ふ、狙ひが実に頭脳的で如何にも智識人の作らしい。実戦型にしたのは単に駒の配置を自然ならしめる為で内蔵する感覚は別に無理なき駒配りなら実戦型に拘泥する筈は無いと思ふ、いずれにせよ実戦型ならざる近代型詰将棋を見せて呉れるのも近いであらう。
★序の紛れと手順は面白いですが、中盤以降は淡々と進みます。纏まりは良く手が続きます。
真木一明氏作 B
12馬、同玉、14香、13角、24桂、11玉、13香生、同金、33角、22桂、31龍、21歩、22角成、同飛、同龍、同歩、23桂、同歩、33角、22桂、31飛、21角、同飛成、同玉、32桂成、同玉、54角、33玉、43角成、24玉、25馬、33玉、43と迄33手詰
竹中敏雄氏 十一枚の駒でよくもまあこれだけややっこしい作意が纏められたものだと感嘆した。実に詰将棋の深さ広さ面白さを今更ながら認識せられ嬉しく思った。但し初手が目に付き一四香が絶対で此の筋より外に無いとの仄きがすぐピンと来るだけAよりは易しい感じだが、こんな場面の狭い手の深い作が好きだ。
内山精一氏 Aの如き難解さもDの如き巧妙さもなく、初手が限定されている上に終始手順の追詰な作品であるが、五回に亘る合駒の綾と三三角、二二桂、三一飛と打ち返す手筋は面白い。
選者 この作品を計る物差しは普通のものでは上手く答が出ない。規制的概念で言ふ処の好手妙手は殆どないし、変化は多岐でも手が狭いので一本調子になり易く案外妙味に乏しいと多くの解答者は思われたことであらう、短編作では既に完成の境にある真木君が中篇作への胎動であるが快心の当りとは思へない。いずれ同君の事故カチンと一撃バックスクリーンへ打ち込むことであらうし亦それを信じてその面白さも少々常識外だ。大体現在迄妙手好手の質や量がその作品のバロメーターとなって居たが、この作品は違ふ、僅か十一枚の駒を駆使して打ち返し亦打ち返し五回に亘る合駒の綾、破綻少き駒配りと共に面白いのは手順前後すると合駒が変って詰が無い点だ。即ち九手目33角を先に31龍だと21香33角22歩同角同飛同龍同香31飛21歩合で不詰となる。同角の処21龍でも同玉32角11玉12香同金で駄目、12手目21歩合は21香合でも同じであるが、かかる場合は最も利きの少い駒を使用するのが常識だ。尤も決定して居るわけではないのでいずれも正解に違いない。処でこの21歩を同龍と取れば同玉32角同飛同桂成同玉以下42角成は21玉、42飛は33玉で不詰である。17手目23桂を先に31飛なら21桂合で詰がない。他の合駒なら詰だが、即ち21同飛成同玉32角成は33桂でも11玉で切れて仕舞ふ。19手目33角を先に31飛なら21銀合33角の時22香合で不詰、21手目31飛は絶対で例へば41飛と離して打つと変化(ヘ)で34桂の時33玉と逃られる、この面白さをよく噛み味って頂きたい。古典的な作品中に類似の図は全く無いし、この点新しい作風の一つと申されよう、芸術論者の其大家が『もし刑務所に長期間収容されるような場合、詰将棋一題搬入を許可された時には、私は勿論本作を選ぶ』と評したのは実に鮮やかに本題の本質を喝破したものと感じ入った次第である。
★狭い範囲内での3種5合は良く出来ています。
山田修司氏作 C
87馬、同飛成、56金、74玉、84と、同龍、同角成、同玉、83飛、75玉、65金、同玉、63飛成、55玉、45金、同玉、43龍、35玉、25金、同玉、23龍、35玉、33龍、45玉、43龍、55玉、53龍、65玉、64金、75玉、55龍、84玉、86飛、93玉、94歩、92玉、93歩成、同玉、95龍、94金、同龍、同玉、84金、95玉、85金迄45手詰
内山精一氏 山田君の作では何時も妙手が問題になる、本作にもそれがないが、龍と玉との横這ひ競争はよく出来て居ると思ふ。殊に中央の往復追撃には相当な置駒を必要とするが、本作は僅かな駒数で簡潔にまとめられて居り、又72香を除き不動駒のないのも大いに良い。ヨタヨタと横にしか動けぬ玉-名付けて曰く「蟹」-
下田哲也氏 難しさと云ふか、紛れのないのが遺憾、しかし玉が五段目を横ばいし、淀みなく詰むのは面白く又愉快、来月は学期末であり山田氏の新構想を期待する。
選者 本作品に対し言はんとする処は殆ど内山氏の評で尽して居る。但し妙手が無いとは反対である。金の打捨てに依り右翼に追ふ筋と、合駒が利かぬ様に左翼に追ひ返す手順を夫々一個の妙手と見たい。亦下田氏の紛れの無いのが残念と評されて居るが、本図では紛れの無いのは、むしろ長所と云へる。この様な趣向作品では難しさは問題無いのである。五筋を往復させる玉の運びの可否に総てが掛って居る。この問題のヨサは中段玉に関らず少数の駒を無理なく配置してある点、見事に五筋を玉横這ひさせた手順、不動駒は72香只一個にして鮮やかに画いた詰上りの型である。これは形而下の眼に見へる点だが、それ以外に面白く感じるのは竹中敏雄氏が評する様に「余りにも山田氏らしい作、調子揃って駒が歩く、これ丈け美しいリズミカルな作図に纏め上げる苦心は解く者が、とかく言へる筋のものではない」、玉と龍のワルツ、美しいメロディに乗り軽快なリズムを奏でる作者山田君の感覚の素晴しさ、その詩情である。これを選者は麗しい作者の遊びと言ふ。ヒラヒラと秋風に舞ふ落葉と見、或は小波にゆられる捨小舟と感じるのはロマンチシズムであり芸術論者である。横這ふ蟹と考へるのはリアリズムである。本題には妙手が無い。詰手順平板で物足りぬと考へるのはオーソドックスな古典派である。各人各様に受取るであらうが、選者が本作品を高く評価するのは前記の様な作者山田君の狙ひであり、遊びであり、美しい詩情であり、この様な見事な作品を創作した作者の近代的な智的な感覚である。
★初手の馬捨ては旨いし、以下も簡易な配置での1往復趣向は素晴らしい。最後も龍が消えての収束も見事。
故岡田秋葭氏作(選者改作)
62桂成、同金、27馬、36桂、33飛成、同歩、52角生、72玉、61角生、82玉、83金、71玉、63桂、81玉、73桂、同金、71桂成、同玉、26馬、81玉、36馬、同飛成、82歩、71玉、63桂、61玉、51と、62玉、52と、63玉、53と迄31手詰
成田忠雄氏 選者改作とありますから原図は不完全だったのでせうか、作意は素晴らしいが不完全なる為埋もれた作品を修正して発表する事は意義ある事と考へます。尚岡田氏について紹介して下さい。
渡部正裕氏 飛角四枚の成捨、不成等の妙手好手順は讃嘆に値ひするが故人の作を勝手に改作するのは止めて欲しい。原図を発表せよ。
選者 故有馬康晴氏を顧問として宮本弓彦氏の肝入りで図研会が発足したのは昭和十七年三月であった。故人となった岡田秋葭君、藤井朗君、現在詰棋会を離れた佐賀聖一君、活躍中の村山隆治君等は天才少年と言はれ当時十六才から十九才の前途洋々たる紅顔の少年であった。麻植長三郎君や小生等二十才台の者が数名、これがメンバーであったが、当時を思ひ懐旧の情に耐へぬ次第である。特に傑出して居たのは本題の作者岡田秋葭君であり、昭和の看寿と称され、天才の名を恣しま々にしたが、惜しむ可し生来蒲柳の質にして、満十八才、昭和十八年四月十六日午后九時五十五分、生家の下関市長崎八幡町に斃れた。昭和十六年初頭将棋世界に作品を発表してより約二ヶ年間に四十題の珠玉の作を遺したが、生涯の燃焼をその一刻に凝集した為、全篇全て佳品にして、特に裸玉や四桂詰は一世を風靡し、卓絶した感覚は近代詰将棋のホープとして将来を期待されて居たのである。本稿末尾に四桂詰を再掲する故、同君の鬼才ぶりを忍んで頂き度い。奇しくも図研会で鎬を削った藤井朗君も宿痾の為同月同日春秋に富む身を、折からの落花と共に逝かれたのであった。本作品は岡田君が最后の作で、図研会課題の予定であったが不完全であった為と作者が死去されて修正不可能となり発表出来なかったものだが、戦災を免れた書籍の間に挟まったまゝ偶然発見された。捨てるに忍びず且つは戦前の天才少年を紹介する意味で、僭越とは考へたが生前の関係から選者が修正するのが至当と思い手を加へ発表した次第である。選者改作と書いた為渡部氏に御叱りを受けたが、作意手順には全く触れず、単に早詰手順を消したのみである。改作とは穏当を欠く言葉であったが、もし万に一つ作品に不完全な点があれば其責任の所在を明かにせねばならぬので眼障りは承知で選者改作と入れたのである。現存の作者なら問題なく本人に修正させる可きであるのは論を俟たない。選者が勝手に修正する事は創作の本質上絶対に避けなければならぬ。遠駒の筋と角の再度の不成等妙手順に終始する作者の狙ひは鮮かに成功して、解く者に詰将棋の醍醐味を満喫させて呉れる。平易に流れず、難解に偏せず而して充分解答者に満足を与へる作者の手腕は、美的感覚と底流するインテリジェンスと共に岡田君独自の作風で永遠の生命を持って居るのである。(新四桂詰の紹介記事については略)
★作品は良いと思いますが、原図は明らかにすべきだと思います。本件を見て、花田長太郎の辞世の局を弟子の塚田正夫名人が修正したが、どこを修正したか明らかにしなかった事例を思い出しました。
自由学校(開校)・・・・詰棋校が一人一校制なので、他にも解答出来るコーナーを作ったとのこと、第一回は第三回一握り詰で選外佳作となった作品から選ばれたので、今一つの作品ばかりです。学校に投稿された作品の没作から選んだ方が良かったのではないかと思います。その中から宇佐見正氏の作品を紹介します。
21桂成、同金、12歩、同金、21金、同玉、31香成、11玉、21成香、同玉、32銀、11玉、12と、同玉、24桂、同銀、23金、11玉、21銀成、同玉、32香成、11玉、22成香迄23手
簡単ですが、よく捌ける作品です。