将棋雑記

将棋に関する雑感を書き散らしています。

旧パラを検証する211

2024-06-30 19:49:12 | 旧パラ検証
旧パラを検証する211
大道棋疑問局集1
 前回まで17号(昭和26年10月号)の紹介だったので、次は18号(昭和26年11月号)のはずですが、実は昭和26年10月に臨時増刊號として「大道棋並大道五目疑問局集」が発行されていますのでそちらを解説いたします。その内容はまえがきに書かれて居ます。
 臨時増刊 大道棋並大道五目疑問局集 まえがき
☆茲に諸賢に「疑問局」と銘打って、大道詰將棋百二十局大通五目並べ十局を提供します。
★疑問局と銘打った所以は詰むや詰まざるや正解不明と考えられるからであります。
☆然しです。果してその全部が不詰であるかどうかは謎です。絶妙の手によって或は詰むかも知れません。
★諸賢の腕試しとして全題に懸賞を附する所以であります。
☆奮って絶妙手の発見に努めあっと云わせて下さい。
★諾賢の指摘が正しくて解決したものは、本誌究明室に於て発表します。
☆指摘(解答)は次によります。
1用紙はハガキに限り、一枚一題宛に限ります。十題なら十枚要るわけ。
2締切は設けません。
3正当なる振摘(詰手順の正しいもの)先着順に五名迄(各題毎に)に次の粗賞を呈します。
一番槍 入賞カード五枚
二 ”  ″       四枚
三 ″  ”    三枚
四   ″       "               二枚
五   ″       "               一枚
4自己の指摘が正しいか否か、何番槍であるか知りたい方は往復ハガキを用いて下さい。
5ハガキ以外の投稿は無効とします。
☆かくかくの手順でどうしても不詰であるとの答は求めて居りません。あく迄も妙手奇手による解明を求めるものであり、其處に腕試しの腕試したる所以があります。
★大道ものは変幻自在、特に玉方の受け方に絶妙の手があります。じっくり考えて下さい。
☆一部秘手五百番中から疑問と思われるものも本集に取入れました。
★さらば諸賢の名槍を待ちます。

☆宛名 紳棋会内疑問局集係


 まえがきにあるように、全部の作品の詰む詰まないを明らかにするのではなく、詰む作品を指摘するという体裁でした。そして19号(1951年12月号)大道棋疑問局集解決篇として連載が断続的にありました。
そして1976年2月号から大道棋研究室で疑問局の全作解明が始まり、疑問局を毎月出題して詰む詰まないをハッキリさせることになりました。この企画は1986年7月の結果発表まで続きました。
本稿ではこの詰パラの過去の記事、柿木将棋に解かせた結果、及び私の研究結果を交えて書いて行きたいと思います。
詰パラの引用は出題号ではなく、結果稿の号を記載します。

不詰作等を詰むように改作した図を掲載する場合がりますが、実戦用の詰む案を提示するだけなので、余詰等がある場合があります。


詰パラ1976年4月号        疑問局集1

☆疑問局集は昭和26年10月、旧バラの臨時増刑号として発行。大道棋百27局、大道五目10局を載せ、一般から解答を募った。(但し詰むと
言う確信のあるもののみ)旧バラに於て「疑問局集解決篇」として発表したものもある。今回はその全部に就き改めて〃洗濯″をし、詰、不詰を明確にしようと思って出題することとしたものである。引き続き出題してゆくので、しっかり取り組んで下さい。
☆本局は不詰。不詰順明示を正解とした。
◇72歩の筋は簡単にダメ
◇63桂の筋も81玉、85香、83銀合以下もダメ
◇一番有望な筋は83桂の筋
83桂、81玉、82歩、92玉、94香、93角、91桂成、同玉、93香、92角、(イ)同香成、同玉、74角、91玉、81歩成、同玉、72角、71玉、62金、同玉、63角行成、51玉、(ロ)61角成、同玉、53桂、71玉で不詰
(イ)81歩成は同玉、92香成、同玉、83角、93玉、82角、84玉、54飛、64香合にて不詰
(ロ)54飛、42玉、52飛成、33玉、34歩、24玉、26香、25桂合にて不詰
その他の筋も結局不詰。本局、若かりし頃夢中で研究した思い出の局。(主幹)
疑問局集2
☆前局と殆んど同様にして不詰と断定

 疑問局1の原図と思われるのが次図
秘手五百番の第212番です。
83桂生、81玉、82歩、92玉、95香、93角、91桂成、同玉、93香生、92角、同香、同玉、74角、91玉、81歩成、同玉、72角、71玉、62金、同玉、63角上成、51玉、61角成、イ同玉、53桂、51玉、41桂成、61玉、62歩、71玉、76飛、82玉、73飛成、91玉、71龍、92玉、81龍、93玉、94歩、同玉、85馬、93玉、84馬迄43手詰
66香が無いので76飛と廻ることが出来て詰む。
54が成香なのはイ42玉の時46飛に44歩合等で逃れる為です。
イ42玉は51馬、同玉、54飛、42玉、53飛成、31玉、32歩、同玉、44桂以下詰みます。この順が作意の類題もあります。
疑問局1番を詰むように改作してみました。 
疑問局1改作1
72歩、81玉、A84香、83金、B同香生、92玉、82香成、93玉、83桂成、94玉、54飛、64銀、同飛、同歩、95香、同玉、84銀、85玉、95金迄19手詰
A85香、84桂、同香以下作意順のキズあり
B71歩成、91玉、83桂不成、92玉、91桂成、93玉、83香成以下作意と同様のキズあり
 香合を売り切れにすることにより詰ますパターン。ABのキズ(詰将棋的には余詰)があるのでとりあえず詰むようにした改作。
疑問局1改作2
83桂生、81玉、82歩、92玉、96香、93角、91桂成、同玉、93香生、92角、A81歩成、同玉、92香成、同玉、83角、93玉、82角、84玉、54飛、95玉、94飛、85玉、74角成、94玉、93角成、同玉、83馬迄27手詰
A同香成、同玉、74角、91玉、81歩成、同玉、63角成、91玉、92歩、同玉、83角、93玉、94角成、同玉、54飛、84香、同飛、同玉、74馬、94玉、95香、同玉、96香迄33手詰の余詰あり
これも余詰ありなので、詰将棋的には不味いですが、歩を一枚ずらしただけで詰むという、大道棋特有な例です。
次に疑問局2を詰むようにしてみました。
疑問局2改作1
83桂生、81玉、82歩、92玉、95香、93角、91桂成、同玉、93香生、92角、81歩成、同玉、92香成、同玉、83角、93玉、82角、84玉、75銀、イ85玉、74角成、95玉、84馬迄23手詰
 イで疑問局2は同と取れるので詰まないという訳です。
 今回は出来るだけ原図を弄らない改作なので、余詰があったりして不満なので、少し配置を弄って改作してみました。
疑問局2改作2
72歩、81玉、85香、84桂、同香、83金、同香生、92玉、82香成、93玉、83桂成、94玉、54飛、85玉、84飛、96玉、86金、同金、同飛、同玉、78桂、76玉、77金、85玉、86金、94玉、95香迄27手詰
 この形では意表の初手72歩で詰むので、定跡手順を知って居る人程嵌るかと思います。

湯村光造作品集34

2024-06-23 01:42:00 | 湯村光造作品集
湯村光造作品集34
71飛、同玉、61飛、同玉、62桂成、同玉、63金、71玉、72金打迄9手詰
*初出は近代将棋1953年1月号の付録
 71飛と下段に落し、61飛として玉を61にしてから62桂成とすれば同玉と取るしかないという見事な手筋物で、好作です。
 元々の湯村光造作品集には本作は載っていませんが、森田正司氏が詰研ブックスにするにあたって、この作品を加えたとのことです。
 これで「湯村光造作品集」の紹介を終ります。湯村氏の初期の作品しか載っていないので、全作品から選んだ作品集が期待されるところです。
 付記:初手から63金、同金、同歩成、同玉、65飛、54玉、64飛打、43玉、
45飛、32玉、62飛成、23玉、43飛成、33銀、32龍寄、14玉、34龍、同銀、同龍、15玉、25金、16玉、36龍、17玉、26龍、18玉、29銀、19玉、28龍迄29手の余詰がありました。


湯村光造作品集33

2024-06-22 01:53:42 | 湯村光造作品集
湯村光造作品集33

18金、同龍、同飛、同玉、88飛、19玉、28銀、18玉、27銀、同玉、38金、36玉、28桂、46玉、55角、イ45玉、46歩、55玉、64銀、46玉、55銀、45玉、46歩、55玉、85飛、46玉、55角、57玉、48金寄、67玉、58金寄、56玉、57歩、45玉、64角、85歩、46歩、44玉、36桂、33玉、42銀生、32玉、43と、同玉、53角成、32玉、33歩、21玉、43馬、11玉、12歩成、同玉、24桂、11玉、21馬、同玉、32桂成、12玉、22成桂、同玉、24香、11玉、12歩、同玉、23銀成、21玉、22成銀迄67手詰
*T-BASEの図は95と無し32歩⇒33歩の図で不詰
 近代将棋図式精選から解説を引用します。(解説:森田正司氏)
 “短篇の湯村”といわれた作者の唯一の長篇。「図巧91番」に触発されたとか伺いました。「図巧91番」は18角と遠打ちし、27歩突きでその利きを遮って打歩詰を回避するという構想ですが、本局は<詰方駒の利筋遮断>を飛車の限定打ちでするところが新しい工夫です。
 それが5手目の88飛。その効果は10手後の途中図において現れます。もし飛打ちが88以外のところなら、99角の利きがあって、ここで打歩詰の状態になるのです!湯村氏は後に「歩詰手筋の諸形態」という論文(『王将』29年3・4月号)を発表されましたが、そうした理論的着想はこの頃から持っておられたのでしょう。
 ただ本局、55角をイ同玉と取る変化が64銀、45玉(同歩は85飛、46玉、55角以下。44玉は85飛、55歩合、同角、45玉、33角成以下。なお55歩合のところ77合なら、36桂、33玉、43と、同玉、45飛、32玉、33歩、21玉、41飛成以下、いずれも早い)、46歩、同玉・・・で本手順に戻る、いわゆる“中岐れ”となってしまったことです。その後、40数手も要しますが、大駒をすべて捌いての収束は快調。戦後の構想作品のはしりとなりました。

作品集「あさぎり」の自作解説を引用します。
 私にとってほとんど唯一の長編作である。一時期歩詰手筋に熱中し歩詰手筋を含まぬ詰棋は詰棋にあらず、といった心境になったことがあった。最近は歩詰手筋に関心をもつ作者も増し、新手筋が開発されつつあるのは誠に喜ばしい。
 本作は図巧などにみられる利筋遮断の歩詰回避手筋の一種で5手目88飛打が99角の利筋を消して17手目の46歩が歩詰となるのを回避している。
 棋力に乏しいので長篇は苦手なのだが、本作は構想を得ると3日間位で一気呵成に創りあげた記憶がある。

 詰将棋創作にとってインスピレーションが最も大切で一向にインスピレーションが湧かなくなった近頃は、当時がただ懐かしいのである。



 88飛という利筋遮断の歩詰回避手筋が珍しいころの構想作品で、面白いのですが、ちょっと長すぎるような気がします。また、イのキズは痛すぎると思います。
 元々の私家版ではこの作品で終りだったようですが、詰研ブックスで発行された際に、もう1作番外をを添付しています。本連載でも番外作を載せて終了としたいと思います。


旧パラを検証する210

2024-06-18 19:08:49 | 旧パラ検証
旧パラを検証する210
第十七号(昭和26年10月号)12
(C)山田修司氏作
正 解
74銀成、82玉、81と、同玉、71と、同玉、73香、61玉、72香成、51玉、62成香、41玉、52成香、31玉、42成香、同玉、43銀、31玉、32金、同金、同銀成、同玉、24桂、41玉、32桂成、51玉、42成桂、61玉、52成桂、71玉、62成桂、81玉、72成桂、同玉、73金、81玉、82金打、同金、同金、同玉、94桂、71玉、82桂成、61玉、72成桂、51玉、62成桂、41玉、52成桂、31玉、42成桂、21玉、32成桂、同玉、33銀、23玉、35桂、同歩、34金、12玉、24桂、11玉、22銀成、同玉、33と、11玉、12桂成、同玉、23金、21玉、22金迄(七十一手詰)

内山精一氏 成香と成桂で往きつ戻りつ王を這ふ趣向が実に気持ちよく出来ている、小駒だけの而も右辺と左辺にほんの一塊りづつの少い駒数で、之だけの手敷と手順とを盛り込んで美事に成功した作者の手腕には只々敬服め外ない、本年度傑作の一つである。
竹中敏雄氏 此の山田さんの作品は、小駒作品としては恐らく最高位のものではないだろうか、詰る事にはさほどの難しさは無いが其れは別問題だ、左から右に、右から左に一と振り二た振り大きく揺れて鐘が鳴る、左から右へと又三振り、心地よい鐘の余韻は遠く流
れて行く、夢の榛な長閑な美しい青色だ、胸の底から心にしみる平和な音だ、私はこの作品に「平和の鐘」の名を贈ろう。
選者 何んと云ふ美しい旋律に満ちた作であろう、小さな駒が奏でる悲しい迄に麗しい調べは魂を揺り、見る者をして恍惚と酔はさずには置かない。手順が面白い、最初の駒配りに無理がない、詰上り亦美しい、二回注復する玉の画く軌跡を夫々妙手に見たい、など言ふ事は駄足である、まして平易であるの妙手が無いのと論ずるに至っては烏滸の沙汰である。現在迄に発表された山田君の数ある作中でも突兀として聳ゆる最高峰である、長さに於ても純然たる小駒図式(合駒に大駒を使用しない)としては日本新記録であろう。が、より重視しなくてはならぬのは、この作が醸すアトモスフェアであり歌ふ詩である。予言者イザヤではないが、かつてこの事あるを予言した選者の言は適中した、山田君はまづそれを為した。小さな駒々が織りなす階調と色彩は永遠の栄光と生命を唱い尽る所を知らない。山田君が本作品に「小独楽」と題したのは、小駒作品である事と独り楽しむと言ふ点より名付けたものだが、楽しむ事は詰将棋の本質だ、然し本作は独り楽しむ境地を遙かに脱し、解く者総てに楽しみを与えずに置かない、その点不適当であると考え、図面に傍註しなかった。「死と乙女」これこそ題するとすれば最もふさはしくはないだろうか。選者はロマンチストではないが反射的にこの題が脳裡に閃めいた、と云ふより全身を以って感得したのである。「死と乙女」これはシューベルトのクワルテット(四重奏)であるが、セロは常に死の如く甘く、低く誘ひ、バイオリンは不協和音を以って、乙女の儚い抵抗をすすり泣く如く亦訴へるが如く救ひを求める、遂に死の勝利の円舞曲で終る。本図では香と桂が取れ取れと玉を誘惑する。取れば即ち死を意味する。右に左に救ひを願ふ玉の悲しい反抗も、勝利の円舞曲を表現する右側に於ける折衝で死の凱歌を以って終る。簡単な序曲より直ちに主題に入り軽快なワルツで幕となる本作品に陶酔したのは選者独りではあるまいと思ふ。近代詰将棋中のロマンスを代表する佳作である。某作家が本題に酔ひ軽い眩量を感じて、己が作品に思ひを致し、「止んぬる哉」の一言と共に駒を投じた、と言はれて居るが、選者は決してそれが誇張とは思へない。再び言ふ、この傑作を題して「死と乙女」
★有名な「死と乙女」です。手順は見事で傑作だと思います。解説も気合が入っていて以前は素晴らしいと思いましたが、今読み返すと「死と乙女」って何かピンと来ないかと、むしろ作者の「小独楽」の方がピッタリのような気がします。何より作者が「小独楽」と命名しているのに、図面に添付して居ないのは一寸不味い気がします。黒川氏の「やすり」は図面に添付しているのに、山田作は命名を載せていないのは何故なのでしょうか?ただ、この結果稿によりこの作品は山田氏初期の出世作と言われるようになったので、功の部分が圧倒的に大きいのでしょうけど、、、。尚本作には、酒井桂史氏作の前例がありました。山田氏は当然乍ら知らないで創作されたそうです。
酒井作は次の通り
41桂成、同玉、49香、51玉、42香成、61玉、52成香、71玉、62成香、81玉、72銀、91玉、81金、同金、同銀成、同玉、72成香、同玉、83歩成、61玉、72と、51玉、62と、41玉、52と、31玉、42と、21玉、32銀、11玉、21金、同金、同銀成、同玉、32と、同玉、23歩成、41玉、32と、51玉、42と、61玉、52と、71玉、62と、同玉、63金、51玉、52金打迄49手
 この作品も左右対照からの趣向詰で希望還元玉でもあり、傑作だと思います。
(D)工藤紀良氏作
22銀、24玉、35金、15玉、25金、同銀、16歩、同玉、17角成、15玉、16歩、同銀、55飛、同香、59角、同香成、95飛、55飛、同飛、同銀、45飛、25飛、26金、24玉、25飛、同銀、同金、同玉、35飛、24玉、13銀不成、33玉、22銀不成、44玉、56桂、同銀、55銀、53玉、45飛、44桂、同馬、同金、同銀、64玉、76桂、74玉、64金迄
(四十七手詰)
廬閑子氏 忠臣蔵の如き古典作上野介何とかもぐり込もうとするが、堀部安兵衛(飛)赤垣源三(角)のシシフンヂンの活躍に終に首をはねられたる図、四十七手(士)の面目躍如たり。かかる構図の場合は常に飛角の切捨が主眼であり、飛角を如何にさばかせるかがポイントである,本局に於ては二五金寄から一六歩がそれに當る
内山精一氏 力強い作品と云う可し、五九飛と九五角を棚いて九九飛の活用を図る順は直ちに想定出
来る處であるが其後が素晴しい。九五飛に五五飛と合はし銀を防禦に起用するあたり、亦四五飛に再び飛合を以て応ずる處など興味津々、以下も奇手好手の連続で、合駒制限の為の香歩の配置にも無理がなく、良作である。
選者 近代型の作品ばかりでは淋しい、と古代型愛好者より御注意あり且つ近古二題づつ選定してはどうかとの御言葉も誠に尤な注文であった。教授を任命された時二題宛選出が理想であったが、古典的作品には不完全作が多く、苦心繊討の末出題すれば選者の非力の為御篭の如く見落し績出で、現実は常に苛酷で理想通り参らない。
本題も実は最初簡軍な早詰があり一度は没として放置されたものであるが、適当な古典作に窮した為と、相術な力作てあり捨てるに忍びず作者に改作を請うは課題としたのである、次第に理想に近づきたいと常に努力は綾けて居る故古典的作品愛好者も宜しく御了解願度い。さて本作品は飛角の遠操作を主眼とした古典的力作である、飛香歩亨以外の斜めに効く駒がもう一枚あれば簡単に詰である。
それを狙って九九飛を世に出し合駒を稼ごうとし、玉方は再三に渡り巧妙な合駒により凌ごうとする攻防の妙を満喫されたい、初手二二銀は衆目の見る所,二四玉に一三銀は同玉なら三五角成以下詰だが同香三五金一五玉二五金寄同玉で不詰となる、五手目二五金は好手で同桂同玉いずれも簡箪,一七角成より一六歩でロケット爆揮ならぬ飛角の遠隔操縦となる。第一発五五飛に対し二五桂或は金合は五九角二四玉三五金で終り、五五同銀は同様に五九角で頓死故同香は不己得ず。第二発五九角より九五飛と猛烈な第三発が爆発、あわや骨破徴塵に飛散と見えた玉方五五飛合と強防する。五五桂合なら同飛同銀二六金二四玉三六桂以下詰である、されば直接二五飛合なら本手順三十五手目五六桂を同銀と取れず早詰となる、五五同銀を待って四五飛と猛爆を続行、これを三五飛と打つものなら二四玉と下られて不詰。それなら主方三五に中合すればどうか、同飛と呼び出し体を交したいが香歩の合が利かぬ様に出来て居る。例えば三五桂合なら同飛二五角二六金二四玉二五飛同桂三六桂以下三五飛合なら二六金二四王三五金一五王二五飛同銀同金同桂二六銀以下で名響の戦死となる、依って二五飛合となり二六金以下糖算して三五飛と打ち返す、一三銀不成が取れぬ様
では最后の審判も近ずいた、好手五六桂を先刻壮掛けて置いた時限爆弾五六同銀で一時凌ぎもつかの間五五銀打で廬閑子氏の上野介では無いが炭部墜に逼塞、四五飛に四四桂合と最后の足掻きも空しく同馬と切って落された、尚四四桂合の處四四飛合は同馬同金同銀六
四玉五四飛或は七五金で詰となる不動駒は多いとは云え華々しい大駒の打ち合いも面白い古典的佳品であった。
★解説にあるように、銀がもう一枚あれば簡単に詰む。銀を入手する為に55飛~59角~95飛として合駒請求し、55飛合後も再度45飛として25飛合として25で清算して収束に入ります。最後も39手目45飛に対して44桂と捨て合をするのが最後の抵抗。後年、詰将棋で絵を描く男と言われた、工藤氏の初期の作品で、普通作でも見事な作品で、好作だと思います。

全題解答者
岩谷良雄 内山精一 大野峻象 北原義治 佐々木誠一 高橋守 高木秀次 竹中敏雄 堤浩二 成田忠雄 廬閑子 井戸雅泰 宮本兼利 奥薗幸雄 下田哲也

★全題正解者も著名な人が多く興味深いです。


 これで第十七号(昭和26年10月号)が終りました。次は本来第十八号(昭和26年11月号)の順ですが、実は昭和26年10月に臨時増刊号の「大道棋並大道五目疑問局集」が発行されていますので、これを解説いたします。

旧パラを検証する209

2024-06-14 21:42:27 | 旧パラ検証
旧パラを検証する209
第十七号(昭和26年10月号)11
大学 担当 土屋 健
(A)奥薗幸雄氏作
作意(三十一手詰)
六五飛右、五四玉、五六香、四三玉、五三香成、三三玉、三二桂成、二三王、三二桂成、同玉、四二成香、二三玉、二四歩、一二玉、A七二飛成、ロ二二桂、同龍、同玉、四四角、二一玉、一三桂、一二玉、B二三歩成、同玉、三三角成、一三玉、一四歩、一二玉、六二飛成、二一玉、一三龍迄
 本作品は風鎚りな曲詰である、曲詰故最初の型が絶対であるのは論ずる余地はない、さりとて詰手順はどうでもよいと言ふのでは無いのだ、追手の連続で最后に駒が余らずに詰となれば詰将棋として存在する価値があると考へるのば誤りである、詰手順に確たる作者の狙ひがなくてはならぬ、本作品の作者の狙ひは現在迄の曲詰の理念を超へ非常に斬新であり、一種の芳香を持っている、詰将棋自身の価値の高低とは別問題であるが新世界を拓こうとする作者の若い情熱には敬意を表する次第である、発表直后某氏の注意により不完全であった事に気付いたが曲詰の為早詰防止の駒を置く事が出来なかった、六五飛左の手は全然見落して居た、地下で北村君が苦笑して居る事だろうが完全検討したつもりであった、不明を嘆ずるも笑止々々、申し訳けない次第である、六六香六五歩同飛左七三王三七角六四歩同角八三王八四歩九三玉九四歩同玉九五飛八四玉八五飛右七四玉七三角成同玉九三飛成七二玉八二龍迄二十一手詰の簡箪な早詰である、(以下略)
★初手66香の早詰以外にも、Aで62飛成でも良かったり、ロ22桂合で変長、B11角成、13玉、23歩成とする迂回手順もあり、明解な作意とは言い難いです。44桂の消去は上手いと思いますが、欠点も多く早詰が無くても厳しい内容だと思います。
(B)黒川一郎氏作
(命名やすり)
67と引、79玉、69馬、同玉、68金、79玉、78金、89玉、88金、99玉、98金、同玉、48龍、同金、97と引、99玉、98金、89玉、88金、79玉、78金、69玉、68金、59玉、58金、同金、同と、同玉、57と引、69玉、68金、59玉、58金、49玉、48金、同玉、38金、59玉、58と、同玉、48金、69玉、68と、同玉、58金、79玉、78と、同玉、68金、89玉、88と、同玉、78金、99玉、98と、同玉、88金、99玉、98金、89玉、88龍(61手詰)
竹中敏雄氏 未だ山田さん程の円熟味はないが、立派に趣向が生きて居る、然し鑢で削り取る感じと言うより、最初金で追いつ戻りつ空想の世界にさまよい、後一枚一枚と金を棄て乍ら28金で追って行くのは空想の世界から次第に現実に返る状態を表現して居る、と金が一つ一つ水の泡沫の様に消えるからだろうか、題して「空想の沫」とは如何に
選者 本題は就床時の選題の為、他の作と誤って出題して仕舞った気付いたのは九月も過ぎてからでパラダイス社の方え取り消しのウナ電を飛ばしたが間に合はず、不己得ず住所の判明している五十七名の解答者の方々を直接訂正の葉書きを出した、勿論19と脱落の為に生じた早詰手順を解答された方も正解と認めた、かかる間違いは病気の為とは申せ申し訳けの言葉に窮する次第である、平に御容赦下さい、さて本題は左方に言葉の如く雲集すると金の配置も面白く、詰手順に至ってはギコギコやすりの音を聞いて頂ければよいのである、作者は詰将棋ロマンチシズムの信仰者と言うより実践者である、毎回述べる如く近代詰将棋に於けるロマンは高く評価す可きであるがそれが詰将棋の総てでは無い、だがお立合い世にも稀なるロマンチストの夢物語り、急ぎの御用の無い方は耳を傾けられい、「詰将棋浪漫派として詰将棋の中にロマン味を盛り込んだ趣向に限り無き愛着と憧憬とを持つ詰将棋マニアが語る長話し、まあ一通りお聞き下されませ、一体小生は小説であれ音楽であれ絵画であれ、凡てこれ浪漫味溢れたるものが好きで何んでも手を出す悪い癖、これは最早病膏盲と申せましょうか、小説なら怪奇ロマン、ポー・ホフマン・スチブンソン・ゴーチェ・HGウエルス・ヴェルヌ・シャミッソー・ドイル等々、怪奇幻想恐怖空想の世界に限りなき魅力を感じ、音楽ではビゼー・サラサーテ・シューマン等魂の底をゆする哀愁味やリズミカルなのが好きで、詩では白秋の邪宗門の持つキリシタン味が魔法がかかって面白く、絵ではビアズレーの黒白の凄じさが厭倒的でこれ皆ロマンの世界、されば俟及の木乃伊の世界に得も云はれぬ執着を覚え、インカの廃墟の宝を夢に見ると云う此の痴れ者の八方趣味が、詰将棋創作と云う阿片を吸ったとたんに、全身しびれ耽溺する始末となりました、浅ましき成駒の虜となり果てた身は同じ詰将棋でも曲詰趣向詰の浪漫が骨の髄まで喜悦させ、ほとほとその幻影抒情に惚込むと云う有様、さあそれからと云うものは明けても暮れても新しい趣向手筋を考える事に没頭しました、趣向こそは詰将棋中の最大の魅力です、同一の運動を繰り返しつつ一つ一つ消えて行く、或は軌跡をたどり同一運動を繰り返す、個々の駒の全知全能を発揮したチームワークによって一つの美しい運動を作る、無限に続くかと思われる明追手の繰り返し、次第に駒が消え去る煙詰、馬や龍の追い廻し、鋸引等々絢爛たる駒の綾なす種々の趣向が方尺の盤上所狭しと乱舞する趣向詰それは一般の妙手説礼賛の創作図式と違い、その一局々々に盛られた趣向こそが只一の生命であり一連の妙手である、此の点を一番理解しないのが某氏である、実際先人未踏の新しい趣向を発見するのは生易しい事ではない、その一つ以上が盛られて居れば立派な趣向詰である、妙手そのものを云々するのは見当違いである、と云っても妙手が長篇になくてもよいと言うのではない、なければ長篇でないと言うのではない、なければ長篇でないと言うのは判るが、趣向に対して個々の妙手を云々するのが間違って居ると思います、その一連の妙手をなぜ妙手と考えられぬのか?不可解であると思います」(以下略、原文のまゝ)これは作者黒川氏より選者に宛てられた便りであるが、黒川氏の詰将棋に対する理念が浮彫りされて居る、この作品を鑑賞するに当たりまず本書簡を読んでから駒を進めて頂き度い、ロマンチシズムの立場より長篇詰将棋を論じて余さず、最後は選者宛の為稍々スポーツ論的にはなったが、ロマンの輪郭を掴んで頂き度い、尚詰将棋に於けるロマンチシズムに最も理解あるのが選者の様な印象を受けるが、実は九月号巻頭の「つるぎ生」その人こそ真のロマンチストである、詰手順二十五手目五八金の處五八とでも三十三手目五八金を五八とでも全然本手順同様の詰である、三十手目六九玉六八金の二手を落し五十九手詰とされた方が数氏あったが現在の規定では残念ながら誤解とせねばならぬ
★趣向に始まり趣向に終る。この作品に感動して、趣向詰に嵌りました。それまで、図巧の趣向詰も見ていたのですが、詰将棋を始めたばかりの私には、複雑な序や収束の付いた趣向詰より、趣向だけを抜き出しそれで完成している本作が輝いて見えました。詰将棋を広めるには本作のように趣向だけで完成している作品が必要だと思っています。歴史に残る傑作だと思います。