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『わたしの脇役人生』

2012-11-20 08:19:30 | 日記
沢村貞子
『わたしの脇役人生』 を読んで


おまけで生きた七十年


「父さんはあんちゃん、母さんは徳ちゃん(弟)、あたしは ―おまけ・・・」

(中略)

ほっそりと色白の私の兄は数え七つで舞台に立たされ、父はただもう目を細めて見惚れていた。

末っ子の弟の初舞台は数え五つ ― 今度は母がその世話に夢中だった。

(中略)

性格や境遇、考え方も感じ方もそれぞれ違う人たちがひしめきあっている世の中である。

自分にとって少々ぐらい嫌なことは、黙って我慢しなければ、なかなか平和に暮らせない。、

ただこれだけは、どうしても嫌だと思うことは、しないようにしなければ・・・・・決して、しないように・・・・・

残りの人生をそんなふうに生きていくためには ― 目立ちががらず、褒められたがらず、歳にさからわず、無理をしないで、昨日のことは忘れ、明日のことは心配しないで ― 今日一日を丁寧に ― 肩の力を抜いて、気楽にのんきに暮らしてゆこう。

私の脇役人生はこんなところだと思うけれどーもし、呆けて調子が狂って、みなさまにご迷惑をかけたら―お許し下さい。



父母が男の兄弟に並々ならぬ愛と期待を抱いた様子は、八歳の彼女にとっては我慢できなかったのだろう。
歌舞伎役者という男社会は、女の子は ―おまけ― であった。

この幼少期の経験は、彼女のその後70年あまりの芸風や人格に大きくかかわっていると言える。


人は年齢を重ねるたびに、このように覚悟をもって生きていく必要があり、そのことで周りも幸せになる。
『家族同居の中の疎外は、独り住居の寂しさよりずっと辛い。』

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