辛口KOJIの 「キリリ」 といこう!!

HIV陽性者の家族と友人の会1st.geocities.yahoo.co.jp/gl/base_kobe

ドラマ感染爆発

2008年01月13日 | その他(エイズ以外)

昨夜は、母と久しぶりにゆっくりテレビを見ました。

一つは新地球ミステリー。1秒の世界第三弾仰天!世界を襲う脅威の変化・命の叫びSPというタイトル。

その中の一つに、中米のグアテマラ共和国と隣のコスタリカ共和国を比べたものがありました。両国をウィキペディで調べると


●グアテマラ共和国

CIAはグアテマラ社会の広い支援を得て、1954年、PBSUCCESS作戦と呼ばれる政府転覆を実行し独裁的な親米政権が生まれたが、これはグアテマラ国家に社会不安の時代をもたらした。1960年からグアテマラ内戦が始まり、36年間にわたるゲリラとグアテマラ政府の戦争は、1996年に平和条約の調印によって終わった。グアテマラの政治的暴力は1983年に終わり、それに続いて1985年以降は民主的な選挙が現在に至るまで行われ続けている。直近の国政選挙は2003年に行われた。グアテマラはいまもなお、法による統治、法の下の平等と基本的人権の尊重に基づき機能する民主主義を構築することを必要としている。内戦によって25万人が犠牲になったというグアテマラでは、一般の犯罪や暴力団による殺人で、2006年には6000人が死亡している。

●コスタリカ共和国

20世紀に入ってもコスタ・リカはバナナとコーヒーのモノカルチャー経済の下で発展が続いた。

1948年には内戦が起き、反乱軍を率いたホセ・フィゲーレスが勝利した。ニカラグアに亡命した旧政府軍は、アナスタシオ・ソモサ・デバイレに支援された傭兵軍と共にニカラグアからコスタ・リカに侵攻してきたが、これは打倒され、 1949年には新憲法が施行され、親米を基調とし、政治を混乱させる道具にしかならない軍隊は廃止され、それまで軍隊の担っていた役割は警察に移管された。

1955年1月、元コスタ・リカ大統領だったテオドロ・ピカド・ムチャイスキの息子、ピカド二世が再びソモサに支援された傭兵軍(その中には軍服を脱いだニカラグア国家警備隊員もいた)と共にニカラグアからコスタ・リカに侵攻してきた。陸空およそ1,000人程のピカド二世軍は幾つかの都市を攻略したものの、コスタリカ武装警察の反撃と、OASの仲介により同年2月に停戦し、武装解除した。

国家としては反共でありながらも、ソモサ王朝を嫌っていたコスタ・リカ人は、1978年にサンディニスタ民族解放戦線が全面蜂起するとこれを全面的に支援し、ニカラグア革命を支えた。

その後サンディニスタ内での路線対立によりFSLNの司令官だったエデン・パストラが亡命すると、コントラの一派民主革命同盟(ARDE)が組織され、対ニカラグアゲリラ作戦の基地となり、中立原則も一時揺らぐが、アリアス大統領によってARDEの基地は撤去され、その後は中米紛争の解決に尽力した。

その後は親米外交、人権擁護、民主主義を原則とした国として小国ながら存在感を見せている。


隣接する国でこんなに違うのかとびっくりしました。グアテマラは、長引く内戦で国民がが疲弊し、劣悪な環境の中で国民が路頭に迷う。しかし、コスタリカは、環境立国として、豊かな自然が世界のエコツーリズムの魁となり、両国の国民所得は5倍の格差が生じて違法入国者があとを絶たないという。国土も狭く人口も少ないコスタリカがグアテマラの人たちには天国に映る。

一番の違いは、コスタリカは、軍隊を放棄したこと。そのお金で教育、医療など民生に力を注いだこと。政治判断(良し悪し)がこんなに違う結果をもたらすことに改めて驚愕しました。

広がる格差の中で、餓えて死に逝く命が叫んでいる世界を見れば、有り余る投機資金の行き先一つで、高騰する資源価格。金は、最高値が続くという。

一部の金持ちの儲け(欲)の裏で、多くの生活者が原油高に悲鳴を上げる。経済弱者が更に追い遣られ、それが自由経済というものなら絶対に規制が必要だと思う。


さて、もう一つが今日の本題。21時からのNHKスペシャル。ドラマ感染爆発「一ヶ月で死者100万人-最強ウイルス日本上陸秒読みに入った恐怖のシナリオ-政府も病院も機能マヒ」

これを見て、2005年に神戸で開催された、第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議を思い出した。本来は、2003年に開催であったこの会議を延期に追い遣ったのは、SARS(重症急性呼吸器症候群) 。

「延期か?中止か?開催か?」を問われた組織委員会に、現在の厚労省疾病対策課長の梅田珠美さん(当時は神戸市保健福祉局参事)が、神戸で参加者の中にSARS発症者が出て、神戸市が麻痺し、各地に広がるというシュミレーションを行なった。

組織委員会は、それを受けて組織委員に開催の是非を問った結果、苦渋の延期を強いられました。簡単に2年間の延期というものの、アジア・太平洋地域に生きるHIV陽性者の仲間は、この会議のために準備もしたし、そして何より2年間生きられるかどうかも定かではない厳しい状況の人たちも大勢いる。

私も開催地の組織委員の一人として、本当に苦渋の選択で神戸市、兵庫県とともに延期の意思表示をした。実施に拘られた委員の皆さんの中には、NGOの同志も多く、改めて立場の違いを痛感しました。

実施に拘られた委員の多くが、エイズ対策の教訓を示せというものだっただけに開催に賛成できない開催地の委員のとしては、本当に苦渋の選択であったことが今でも忘れられません。

エイズ対策の基本は、ともに生きること。つまり、隔離を含めて当時解明されていた情報だけでもSARSに対して、コントロールできるという意思表示だった訳です。

さて、このNHKスペシャルは、今夜も続くのですが、私は、この番組がエイズの正確な理解には今後の啓発如何によっては、かなり邪魔になると考えています。

番組のサブタイトルにもなっている「最強のウイルス」という部分が問題なのです。私の講義では、話をしますが、医学的に最強と言えても、社会的にはそうでないことがあるのです。

医学的(疫学的)最強とは、空気感染、飛まつ感染をする強い感染力や高い致死率を言うのでしょうが、実はそうそう簡単ではない人間社会があるのです。

つまり、ウイルスの感染力が強ければ、あっという間に広がり、否が応でも知識が普及する。そして、致死率が高ければ高いほど、政府をはじめとする関係者が資金を拠出して治療薬を開発し、対策が一気に進むのでしょう。だから、ウイルスが強ければ強いほど、それに対する危機感から対策が強化され、結果として早い終息を迎えるのです。つまり封じ込めることができるということです。

エイズを引き起こすHIVは、まさにインフルエンザの対極にあるウイルスです。レトロウイルスと言われるHIVは、長い無自覚の潜伏期間があり、感染経路も限定的。つまり、弱いウイルスであるがゆえに、社会の関心をすり抜けて、現在までに2500万人以上の尊い命を奪い、どんどん広がっているのです。

HIVの拡大戦略は、まさにこの医学的に弱いウイルスということに起因している部分が大きいのでしょう。また、感染経路もコンドームを使用しない性行為、薬物、ゲイなど社会から非難の対象となっているような感染経路により感染が広がることが、ますますスティグマを帯びてHIV陽性者を精神的にも追いやっていくのです。

「HIVとともに生きる」ということは、ウイルスとともに生きるということです。ウイルスを避けたいという人間の持つ防衛思考の反対にあるエイズ対策を思うと、新型インフルエンザへの警鐘に、エイズ対策、特に社会に訴える啓発活動にとっては、後退につながることにならないかと地域でHIVに対する啓発をしている一人としては無関心ではいられないのです。

そして、正しい啓発がなされないと、ウイルスに脆弱な市民社会は、簡単にパニックに陥り、差別を怖れて肝心の患者さえ医療へのアクセスを封じ込められますます広がるということになってしまうのです。

ドラマでは、今日的な問題も提起していました。感染の覚えのある若者がインフルエンザの発症の際に、健康保険がないことを理由に初期治療を逸したこと。これは、本当に問題だと思います。

私がHIVとともに生きるに拘る根源は、苦渋の延期を強いられた神戸での国際会議で、エイズ対策の困難さを組織委員会を通じて学んだことです。

アジア・太平洋地域の仲間を迎え入れ開催したいと思うNGOとしての私と、開催地の委員であり、もし感染が拡大したら会議で死者を出し、神戸市民社会をパニックに陥れる可能性があるということを疫学的に提示された計り知れないリスクを知っていた私。

そんな経験が今の私の活動を支えているのです。

予防だけを叫んでも、リスクの発生しているところにいる人たちの予防にもつながらないし、HIVの拡大戦略の手助けにしかならないということを多くのNGOに関わる同志にも理解して欲しいと思います。

今夜も続くNHKスペシャル。何をどう啓発するのかじっくり検証したいと思っています。

最新の画像もっと見る