アメリカボストンのある実業家のところへ救済事業の寄附を頼みに行った人があった。その時実業家は「ほんの僅かばかり使えばすむものを何故こんなに沢山使ったのだ」と叱っていた。何に使ったのかよく聞けば糊であった。糊位いのことであんなにけちけちしているのなら寄附などは思いもよらぬことと思ったけれども折角来たのだから話し出すと、即座に五百弗寄附した。事の意外に吃驚して尋ねると「私は平生少しの糊でも無駄にせぬように心掛けているからこうした寄附もできるわけです」と何と奥床しい心ではないか。一銭を笑う者は一銭に泣く、塵も積れば山となる、大海も一滴の集りではないか、物を粗末にする者は物に嫌わるるから不自由しなければならないのだ。自然のみ恵み、み仏の賜物は決して粗末にしてはならない。
(「教訓」p30)
(「教訓」p30)