反・公式的見解

夢の形は千差万別、儚くも燃ゆる我が命、私の軌跡は明日への奇跡

蛍雪の光

2005年06月08日 | Weblog

 やっぱり無理だった。ウイリアムテルに47口径拳銃の的にされ、名うての宗教家に小粋なユーモアを要求され、憔悴しきった仮面夫婦にワカメを頼りにバンジージャンプを強制され、怪訝そうな顔を振りまく知り合い枠の友人に人生相談を持ちかけられ、無限大の可能性に公転・自転を断続的に繰り返されても、やっぱり無理だった。ホタルの光で勉強することは出来なかった。

 とある苦労話。勤勉のお話。たとえ明かりがなくともホタルの光・雪の照り光を頼りに書物を読み、知識を蓄えたらしい。「あなた達は何ですか。今は街中に電力がみなぎっているというのに。理由をつけては学業ライフからの逃亡を図る。昔の人は蛍雪の光を利用してまでも勉強に自主性オンリーで励んだというのに。」

 人間は進化してきた。いかなる時も過去を従え未来を見据え先人達を超えてきた。精神的にも肉体的にも技術的にも。つまり先人達が蛍雪の光で学習したのと同じことをしてもそれは結局同じことをしたことにはならない。なぜなら学習において、先人達の時点での人間の限界が蛍雪の光での学習であった。その時よりも我々の肉体は進化している。だから我々は我々の学習限界に挑戦しなければ先人達と同等の地点には立てないのである。

 そこで私はまず北緯38度線に足を運んだ。もちろん真夜中である。しかし軍事境界線はさすが真夜中でも真っ暗というわけではなかった。しかし真っ暗でなければ意味がない。そこで手元にあったスイッチで明かりを消すと同時にホタルを大量に野に放ち、さらに豆まきテイストで手榴弾を左右にばら撒き、クラブミュージックを大音量でかけ、そして手提げ袋から急いで「防衛白書」を取り出して読み始めた。

 先人達を超えることは出来なかった。ホタルの明かりだけで読むはずが、手榴弾の爆発がことのほか明るくて、しっかり書物が読めてしまったのだ。ホタルの明かり以外を利用してしまった時点で私の負けだ。あまりにも明るくなってしまったので、書物の重要箇所に赤ペンでチェックまでいれてしまった。こんなことは要求されてないどころか完全ルール違反だ。

 こうして私の挑戦は終わった。軍事境界線で力なくうなだれる私の肩にそっと手を置き、なぜか反省文を提出してくれた金正日だけが唯一の救いだった。