ZENON Inc.

私はフィリピンに関連する多種多様な分野においてのコンサルティングを行なう「ZENON Inc.」という会社に属している。

フィリピンにおけるMusic Loungeの立上げ

2006年04月11日 | 現地ビジネス
フィリピンミュージックラウンジマニラ以前に "日本のフィリピンクラブの業態変換とフィリピン現地での店舗展開" "フィリピンにおける店舗展開に係る立上げの実務" において店舗展開に際して留意しておくべき点と心構え、そしてその実務についてお話ししたが、今回は現在鋭意進めている案件を絡めて、マニラ首都圏における飲食店舗立上げとそれに伴う周辺環境の現状について少しご紹介してみることにしよう。

知人でもあるクライアント氏から「楽しみと実益を兼ねた投資対象として、フィリピンで何か商売をしてみようと思うのだが」との言葉を戴いた。氏曰く、「投資対象である以上は利益追求は当然であるが、開業当初からハイリターンを望むような考え方で臨むと得てして短命に終わるものであり、またハイリスクを伴うものだ。利益額を追求するよりも、安定した経営の中でコツコツと無理のない利益をあげていき、それを即報酬として得ようとしなくてもストックしてまとまってくれば、また次のステップや事業展開が望めるし、それもまた大きな楽しみのひとつである」との由、また「フィリピンでの事業となると素人であるし、当然現地につきっきりというのは不可能であるため、運営管理の実務については全てお任せすることになる」とのことであった。ハイリスク・ハイリターンの投機的事業なら別だが、堅実な運営を目指す事業において、オーナーやインベスターには氏のような考え方を持って戴かないと息の長い安定事業を継続していくことは難しく、我々としても一般的にクライアントの方々に対してまず行うのは、完全に理解し納得して戴くための入念なディスカッションであるのだが、氏の場合は現役の事業主だということもあり、そういった事業に対する考え方や取り組み方については我々がわざわざ失礼なレクチャーを行わずとも、周知の論理であった。

フィリピンアーティストシンガー事業の面白さ、投資規模、運営管理、ネットワークブレーン、経験値…など実質的な各種条件と併せて氏の興味がある分野でということも考慮し、我々は「Music Lounge」の立ち上げを提案した。大きく分類すると所謂「Club」ではあるが、コンセプトは「洗練されたアーティスト達による上質なパフォーマンスが行われる中、訪れる客人が心地よい雰囲気の中で寛いで歓談を楽しめるエグゼクティブ空間の提供」である。
事業計画書を携え氏のもとへ赴いて説明差し上げたところ、果たして本案は採用となり早速実行へ移すこととなった。

以前の記事でも触れたが、どんな仕事も「準備」が大切であり、仕事全体の3割方を占めるとも云われている通り、今回のような案件の場合は特に「事前調査作業」が肝要である。蓄積してきた知識やノウハウ・実績に甘んじることなく、情報収集を怠らない努力と地道な活動が後々の成否の鍵を握ることになるのである。「情報」というものは生物である。蓄積してきたデータというものは実績であり、先を推測するための根拠とはなり得るが、何よりも「現状を正しく知る」ことが必要となる。また、情報量やその入手ルートが限られていると一方的な見方となってしまい、全体像を認識することができないまま満足してしまうケースも多々あるため、とにかく情報量は多いにこしたことはない。そこで問われるのは無作為膨大に収集したデータを的確に分析する能力だけである。
情報収集にあたって押さえておくべき重要な点がもうひとつ。我々のようなコンサルを行う立場の者にとって最も大切なのは、「最終的には自らの目と耳で直接情報の確認を行う」という至極単純であり乍らもとかくおざなりにされがちな作業である。
フィリピンダンサークラブ情報収集には、現地法人の自社スタッフ・現地ブレーン・インターネットなど様々な手段があるが、限られた時間と人員を最大限に活かすためには取捨選択の眼をもった上で有効利用すべきである。但し、これは直属のスタッフであったとしてもあくまでも他力本願であることを踏まえ、集約された情報を自己の判断基準を以って分析し、最終的には自分の眼で見て肌で実感を得ないとプロジェクト担当の当事者として何事も明確に判断できないということを肝に銘じておかなければならない。

プロジェクト開始のGoが出されたので、我々は早速現在の最新の状況を把握すべく現地での情報収集にとりかかった。
まずはいくつかの候補エリアに絞り、物件情報の収集である。物件情報だけは特に生物であり、日々更新されるべきものである。これだけはいくらたった数日前の情報であっても何の役にも供さないため、必要とされる度に何度でも同じ調査を繰り返す努力を惜しんではいけない。
ターゲット客層という観点から見ると、Makatiエリア、Malate・Mabiniエリア、Pasayエリアという3つの地域を挙げて情報収集を行ったが、それぞれのメリット・デメリットを慎重に考慮の上、初期投資とランニングに対する予測売上との収支比率と償却率を最大の課題として検討を重ねた結果、最終的にMalate・Mabiniエリアにて絞り込んで候補物件を探索していくこととした。但し、このエリアを選択したからといって観光目的の短期滞在客のみをメインターゲットとする方向性を持たせた訳ではない。

フィリピンKTVカラオケAdriatico St.を中心としてMabini・Bocobo St.等の界隈は諸氏ご存知の通り繁華街としてのメインエリアであり、以前はかなりの繁栄を見せていたが、ここ最近はそういった状況に少し翳りが出ていることも否めない。従って「この時期にこのエリアで出店することに対しては慎重にならなければならない」とされる向きもあるが、我々は逆の見方をする。例えば日本における一昔前のバブル崩壊後の繁華街における飲食店の衰退には目も当てられないものがあったが、景気が後退して客足が遠退き、次々と閉店を余儀なくされる店舗が相次いでエリア全体が一時の勢いを失い急速に失速して寂れていく一方、そのような状況下でもなお人気が衰えず、それどころか逆に以前にも増して客層の幅が広がり売上を伸ばしている店舗も少なくないという事実があるのだ。これはそのままマニラでも云えることであり、実際にそういった店舗は勢いを持続している。使い古された言葉ではあるが、所謂「勝ち組」と「負け組」の構図がはっきりしてきているのである。
「勝ち組」として生き残るためのキーワードは "営業戦略" である。単に手を拱いて客人の来店を待つという受動的な姿勢でやっていける程甘い世界でないことは、今更口にするまでもなく明白である。元々立地的には申し分のないエリアであるため、如何に常に店の魅力を創造し、ネットワークを駆使して広報戦略を打ち立て実行に移して広く認知を図った上で、ターゲット客層に対し来店の動機づけを行うかが集客力という結果に直結するのである。

一見したところ一般的な考え方に逆行しているようであるが、そういった考え方に則り我々は躊躇することなくこのエリアでの物件選定へと動いた。
余談ではあるが、今回の物件情報収集にあたって様々なブレーンに声がけをしていた中には、例えば首都圏から少し離れたLagunaエリアでの物件についての情報提供があり、立地的にも内容的にもかなり面白く我々としては興味をそそられる物件だったのだが、管理面で難有、つまり日常的に店舗の運営管理を行うには我々がオフィスを構えるマニラからの距離を考えると多少の支障があると判断したため、決定したポリシーの下、今回のプロジェクトの候補対象の一つとはしなかった。とはいえ魅力的な物件であることに変わりはなく、別件での活用の可能性について模索しているところである。

フィリピンステージ音響閑話休題。今回物件情報の収集に動いている中で痛切に感じたことがある。ここ半年程の間に以前と大きく変わった動きとして「日本人による現地における店舗出店計画」が個人・法人の如何を問わず異様に活発化しているのだが、残念乍らそういった動きをしている方の中には綿密な事業計画以前の問題で、緻密な交渉能力を持たず素人感覚で乗り込んでおられる方も少なくないのである。
賃貸物件にせよ権利物件にせよ、日本人による盲滅法な物件探索の動きが我先にと活発化することにより需要と供給のバランスが崩れて、小バブル的な様相を呈してきている。需要が多いのは致し方ないことであり、好物件であればある程所謂早い者勝ちというのは当然のことなのだが、問題は個々の物件における契約条件に対するネゴシエーション能力を持たずに交渉に臨み、物件を押さえることにのみ気をとられてしまって、いつしか実勢に対する適正価格や初期投資との収支バランスについての検討を忘れて、いわれるがままの条件にて契約を急いでしまう方々が少なくなく、その結果全体的にRights(権利金)や家賃・Deposit(預け金/敷金)・Advance(前払金)など金額面での諸条件において一種異様とも云えるような、どう考えても物件価値をはるかに上回ると思われる高騰が起きていることにある。
こうなると物件オーナー側にも欲が出てくるし強気にもなるものである。ただでさえ相場が上がり気味であるところに加えて複数の借り手候補が出現すると、たちまち条件が高騰する。借り手が確保できる目処が立つや否や、当初の想定条件が大幅に改定されるのである。昨日と今日で条件が大きく変わってしまっていることなどザラなのである。例に出すと、Julio NakpilにあるHotelの1Fテナントなどは立地が良いことから多少の興味を持っていたが、他にも引合が入ってオーナー側が好感触を持つや否や、DepositやAdvanceが当初の提示額から一気に跳ね上げられる気配を見せたし、RemediosのAdriatico CercleをAdriatico St.沿いに少し南に下がったところのリースホールド物件に至っては、たった数日の間に実に当初の倍近い額のDeposit及びAdvanceが提示される始末。バブルゲームに踊らされる訳にはいかないということで、少し駆け引きを含んだ交渉をしてみたところ、今度は「いくらなら借りる?」ときたものだ。結局は近隣の実勢路線価など交渉材料を引合に出したりし乍ら適正価格帯へと導き、更にそこからネゴシエーターとしてのノウハウを駆使してこちらに有利な条件を引き出していった訳だが、我々のようにプロが交渉を行う場合は常にこういった折衝手腕が問われる。

フィリピン店舗内装そのような状況下、路面店舗であることや付帯設備・什器備品等の立地的・設備的な条件での好物件の選定は当然として、初期投資とランニングを如何にリーズナブルなラインに抑えるかが、コンサルを行う立場の我々としての最重要課題であり使命となる。今回の案件のように営業開始後の運営管理までタッチするにせよそうでないにせよ、良質な物件を少しでも良い条件で契約することが、今後の長きに亘り利益に直結する最も大切な要素となるからである。
交渉には様々なテクニックや駆け引きが必要であり、そういった見方をすると仕事として携わる上でのこの作業にはやり甲斐もあり、難度は決して低くはないが大変面白い。

既に絞り込んだ案件に対して既にアポイントメントもとってあるので、Holy Week明けには現地に赴いて具体的な交渉に入ることになっている。
当プロジェクトはまだ始まったばかりであるが、物件が決まれば内外装や各種パーミットの取得等と並行して人材の選定~教育・営業戦略の実行等、追って準備を進めていかなければならない作業が次々と待ち構えている。

プロジェクトの進捗に伴い、今後も折を見乍ら我々の行う作業を様々な角度から切り込んで実例として紹介していきたいと考えているので、楽しみにして戴きたい。
また、読者諸氏の中でフィリピンでの現地ビジネスを漠然とお考えになっている方、我々のこういったアクション内容にご興味をお持ちであれば是非ご相談戴きたい。タイムリーな情報提供を含め、コンセプトメイキングの段階からタッグを組んで進めていくことにより、その構想を "趣味" ではなく "事業" として構築していく良きお手伝いができることであろう。


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